平成21年1月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 小林 亜久 平成17年(ワ)第9 2 4 8号 損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日 平成20年10月22日 判           決 神奈川県厚木市愛名○-○    原         告    山   崎  正   友   同訴訟代理人弁護士      松   井  繁   明 東京都新宿区信濃町○番地    被         告    創   価   学   会    同代表者代表役員       正   木   正   明 東京都新宿区信濃町○番地    被         告    池   田   大   作 東京都新宿区信濃町○番地   被         告    秋   谷   栄 之 助 東京都世田谷区玉川○丁目○番○-○号    被         告    野   崎   和   子 同 所    被         告    野   崎   和   美 同 所    被         告    野   崎   進    ̄ 上記6名訴訟代理人弁護士   宮   原   守   男 同              倉   科   直   文 同              福   島   啓   充 同              八   尋   頼   雄 同              若   旅   一   夫 同              桝   井   眞   二 同              吉   田   麻   臣 同              成   田   吉   道 同              岩   田   幸   一        主          文   1 原告の請求をいずれも棄却する。   2 訴訟費用は原告の負担とする。        事 実 及 ぴ 理 由 第1 請求  1 被告創価学会(以下「被告学会」という。),被告池田大作(以下「被告池   田」という。)及び被告秋谷栄之助「以下「被告秋谷」という。)は,原告に対   し,連帯して,1000万円及びこれに対する被告学会は平成17年7月1   日,被告池田及び被告秋谷は同月6日(いずれも訴状送達の日)から支払済み   まで年5分の割合による金員(ただし,300万円及びこれに対する被告学会   は同月1日から,被告池田及び被告秋谷は同月6日から,各支払済みまで同割   合による金員の限度で被告野崎和子(以下「被告和子」という。)と連帯し   て,150万円及びこれに対する被告学会は同月1日から,被告池田及び被告   秋谷は同月6日から,各支払済みまで同割合による金員の限度で被告野崎和美   (以下「被告和美」という。)と連帯して,150万円及びこれに対する被告   学会は同月1日から,被告池田及び被告秋谷は同月6日から,各支払済みまで   同割合による金員の限度で被告野崎進一(以下「被告進一」という。)と連帯   して)を支払え。  2 被告和子は,原告に対し,600万円及びこれに対する平成17年7月1日   (訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,300   万円及びこれに対する被告学会との関係では同日から,被告池田及び被告秋谷   との関係では同月6日から,各支払済みまで同割合による金員の限度で被告学   会,被告池田及び被告秋谷と連帯して)を支払え。  3 被告和美は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成17年7月1日   (訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし150   万円及びこれに対する被告学会との関係では同日から,被告池田及び被告秋谷   との関係では同月6日から,各支払済みまで同割合による金員の限度で被告学   会,被告池田及び被告秋谷と連帯して)を支払え。  4 被告進一は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成17年7月1日   (訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,150   万円及びこれに対する被告学会との関係では同日から,被告池田及び被告秋谷   との関係では同月6日から,各支払済みまで同割合による金員の限度で被告学   会,被告池田及び被告秋谷と連帯して)を支払え。  5 被告学会,被告池田及び被告秋谷は,本判決確定後1週間以内に,「創価新   報」12面紙上に,別紙謝罪文を掲載せよ。   第2 事案の概要  1 争いのない事実  (1) 当事者等     ア 原告       原告は,昭和34年4月に被告学会に入会し,昭和43年から副理事長      を,昭和45年から昭和55年3月まで顧問弁護士を務めたが,同年9月      に被告学会を除名され,その後,日蓮正宗(以下「宗門」ということがあ      る。)の信徒となり,執筆及び講演等により,被告学会の批判活動を続け      てきた者である。       原告は,昭和39年4月に弁護士登録をしたが,被告学会から恐喝罪で      告訴され,逮捕されたことを機に,昭和56年4月24日,東京弁護士会      を退会した。     イ 被告ら等     (ア)被告学会は,昭和27年9月8日に設立された宗教法人であり,「聖       教新聞」,「創価新報」等の機関紙を発行している。     (イ)被告池田は,被告学会において,昭和35年から昭和54年4月までの       間,会長(被告学会の会則上,会務を統括する地位にある。)を務め,その       後,名誉会長を務めている者である。     (ウ)被告秋谷は,被告学会において,昭和56年7月から平成18年9月ま       での間,会長を務めていた者である。     (エ)亡野崎勲(以下「亡野崎」という。)は,大学を卒業後,被告学会の本部       職員となり,男子部長及び青年部長等の役職を歴任し,副会長及び責任役       員を務めていた者である。        亡野崎は,平成16年3月14日に死亡した。亡野崎の相続人は,妻で       ある被告和子並びに子である被告和美及び被告進一である。  (2)本件書籍及び本件各記事     ア 亡野崎は,「こんな悪い奴はいない!山崎正友の「嘘」と「闇」」と題す      る連載記事(全16回,以下「本件連載(1)」という。)を執筆し,平成1      4年1月16日付け以降の,被告学会発行の「創価新報」に掲載された。     イ 亡野崎は,本件連載(1)のうち,第1回ないし第8回連載分を抜粋・加筆      し,「人間失格 こんな悪い奴はいない 裁かれた山崎正友の正体」と題す      る書籍(甲1。以下「本件書籍」という。)を執筆し,平成14年6月1      日,これが発行された(乙123)。     ウ 被告学会の文芸部青年会議は,「これが山崎正友のウソだ!断末魔にあ      えぐペテン師の虚構を暴く」と題する連載記事(全9回。以下「本件連載      (2)」という。)を執筆し,平成16年9月15日付以降の,被告学会発      行の「創価新報」に掲載された。  (3)本件書籍には,以下の記載がある。     ア 13頁13行目ないし14頁1行目(以下「本件記載@」という。)       「これが端的に出たのが,昭和四五年七月に起こした宮本邸盗聴事件で       ある。当時の学会首脳のだれも発想すらしなかった盗聴なる行為を,対共       産党の情報収集と称して,後輩の学生を使って独断で実行するにあたり,       弁護士としての,自身の特異な能力,才覚を会内に誇示し,存在感を見せ       つけようと意図した以外の何ものでもなかった。」     イ 64頁10行目ないし65頁6行目(以下「本件記載A」という。)       「日達法主の寿命縮めたクルーザー遊覧」(小見出し)       「そしてこれは重大問題だが,当時体調を著しく悪くしていた日達法主      を,何とこの男は無謀にも 自分がチャーターした遊び友達のクルーザー      に乗せて,葉山の墓園用地視察を兼ねて案内しているのだ。銀行関係者ま      で乗船させて―。しかしこのクルーザー遊覧は,強風で揺れ,日達法主      は,体調が悪くなり,途中で予定を変更し,急遽,入院という事態になっ      た。日達法主が逝去したのは,このあとーカ月も経たぬうちだった。       山崎の後先考えぬ阿漕な「金儲け」が,ついに「時の法主」の寿命さえ      縮めたのだ。これは宗門として,極めて一大事であり,山崎の,この時の      行動は当然,処分されてしかるべき問題であったが,この男にいいように      かき回された宗門では,当時,だれも問題にすらできなかった。」     ウ 18頁3行目ないし4行目(以下「本件記載B」という。)       「そしてこのマージャンで,現実に昭和六一年には,賭けマージャンの      現行犯として築地署に逮捕されている」     エ 47頁8行目ないし14行目(以下「本件記載C」という。)       「因みに,正信会からの支援金などを湯水の如く費消した賭けマージャ      ンで,現実に山崎は,昭和六一年三月,賭博容疑者として,警視庁築地署      によって逮捕されている。       山崎がよく通ったマージャン屋での賭博マージャンがばれたもので,警      察の調べでは,一晩で百万単位で動く賭博を,月二十数回やっていたとい      う。最早,プロのバクチ打ちだったというほかない。       結局,Wさんが悩みに悩んだ末,貸した一千万円は,こうしてギャンブ      ル狂の餌食にされただけだったのである。」  (4)本件連載(1), (2)には,以下の記載がある。    ア 本件連載(1)の平成14年3月6日付け「創価新報」12面(甲4の2)    (ア)見出し       「こんな悪い奴はいない!山崎正友の「嘘」と「闇」」(連載見出し)       「山崎は“女たらし”の卑しいペテン師」(大見出し)       「「不倫裁判」で暴かれた最低の“裏切り人生”」(大見出し)       「マージャンの賭け金欲しさに甘言でロ説き2千万円を騙し取る」      (大見出し)       「鬼畜の所業!“恩人”の正信会僧夫人とも“密通”」(大見出し)       「正信会をも欺いた山崎の獣欲」(小見出し)       「貢がせ,騙し,最後は“ポイ捨て”」(小見出し)       「“山友ものは危ない!”とマスコミ」(小見出し)    (イ)2段12行目ないし20行目(以下a),6段40行目ないし9段1      7行目(以下b)(以下,併せて「本件記載D」という。)      a 「それは,山崎と不倫関係にあった当の女性Wさんが,“親しい関       係”になった時,山崎に言葉巧みに2千万円以上もの大金を騙し取ら       れたことで,その“貸し金”返済を求めて提訴したのである。」 b 「山崎は,Wさんと関係を持っていた,ほぼ同時期,Wさんのよく       知る女性と密通していた。その女性とは,何と,Wさんが参詣する寺       院の住職・浜中和道の妻だった。        浜中和道といえば,山崎が宗門僧で最も世話になった人物。特に,       山崎が恐喝裁判でピンチに陥った時,「偽証」まで依頼し,それを引       き受け,現実に法廷で「偽証」してくれた人間である。いわば,山崎       にとっての命の恩人,同志の中の同志が浜中住職であった。その住職       の妻と,盟友の目を盗んで,“ダブル不倫”に及んでいたのである。        やれ道念だ,やれ正信だなどと,もっともらしくごたくを並べ,学会       を批判していた裏で,こんな鬼畜も同然の所行に及んでいたのが,山       崎という男の正体であった。        さらにこの男の卑しさは,山崎の住職夫人との不倫に,Wさんが感       づき,嫉妬していることを十分,計算した上で,1千万円の無心に悪       用していることである。        浜中夫人との関係を,Wさんから糾された時,山崎は「友達の奥さ       んとできることは,世間でもよくあることだ」と平然と居直り,何ら       の負い目も感じていなかった。逆に,Wさんに燃え上がる嫉妬の炎を       見越して,「1千万円貸さなかったら後釜を探す」と,いつでも“用       済み”にできることを,勝ち誇ったように通告しているのである。        何という汚い奴だ。二人の女性を天ビンにかけて,その女心を手玉       に取り,金をせしめ取る手ロ―ここに山崎という,卑しいペテン師の       “真骨頂”があらわれている。」    (ウ)8段30行目ないし10段71行目(以下「本件記載E」という。)       「Wさんの“貸し金”を巡る,山崎の仕打ちが,いかに非人間的なも      のか,呆れるばかりの経過だが,フィナーレは,もっとひどい結末とな      っていく。       出獄後の山崎は,再三にわたるWさんの返済要求にも,姿をくらま      し,逃げの一手。       その裏で浜中和道住職夫人との不倫は続け,浜中夫妻は,ついに離      婚。挙げ句,平成8年には,山崎と住職夫人が何と再婚。結局,かつて      Wさんの追及をかわそうと,「俺が友達の女房を寝取るような泥棒猫み      たいなことをすると思うか」と怒鳴ったタンカも白々しく,まさに「友      達の女房を寝取る」呆れた“泥棒猫”の年体をあらわしたのである。       事ここに至って,Wさんは,完全に山崎に騙されたことを知り,貸し      金返済訴訟となったわけである。       それにしても,山崎が,正義づらして学会を相手に戦う格好をしなが      ら,その裏でやってきた,この20年の,何と唾棄すべきことよ。       ただ女性を弄び,騙してせしめた金で,賭けマージャンに明け暮れ,      親友の妻を寝取って,正信会を食い尽くす寄生虫だったのだ。       その結果,この男は,人生にとって一番大切な友人,同志の信頼を,      自ら次々と裏切り,ますます表を歩けない,裏の“どぶネズミ”の闇生      活者に堕す事となってしまったのである。」    (エ)11段5行目ないし44行目(以下a), 5段42行目ないし6段4      4行目(以下b)(以下,併せて「本件記載F」という。)      a 「では,山崎が,かくまで強引に,せしめ取った1千万円は,何に       必要だったのか。また何に使ったのか―それが,山崎の“賭けマージ       ャン”の精算代金に消えていたのでは,というのだから,被害者なら       ずとも,怒り心頭に発してくる。        山崎の度はずれた“マージャン漬け人生”を目撃したWさんの上申       書は,告発する。        「山崎の生活のパターンは,1日の半分はマージャン屋で過ごし,       疲れると自宅に帰って眠り,目を醒ますと,コソコソとあちこちへ電       話をかけまくり,それが一段落つくとまたマージャン屋に向かうとい       う乱れきったものです」        「なにしろ完全な博打のマージャンなのです。私が必死に工面した       山崎への貸し金が,私の目の前で無造作に法律違反の賭けマージャン       のお金として使われていくのです」        「正信会の多くの信者が,山崎を,創価学会と戦う英雄と信じてカ       ンパした浄財が,すべて山崎の博打の賭け金として薄汚い人々の享楽       のお金として消えてしまったのです。それを思うと,今さらながら       に,私は山崎を絶対に許せないのです」」      b 「何というひどい話か。学会と戦う“英雄づら”して,それを信じ       る檀徒から,やれ裁判費用だ,やれ闘争資金だとカンパや個人の支援       金をむしり取っておきながら,その金を,自分の遊興,なかんずく,       マージャンの賭け金に使っていたとは―こんな悪い奴はいない。        これは,もう学会,反学会などということは関係ない。山崎正友な       る人間が,人間失格の最低の卑劣野郎だということである。」    イ 本件連載(1)の平成14年7月3日付け「創価新報」12面(甲7の3)    (ア)見出し       「こんな悪い奴はいない!山崎正友の「嘘」と「闇」」(連載見出し)       「内藤国夫が怒った山崎の「闇金」漁り」(大見出し)       「大量のデマビラで巨額の儲けを独り占め?」(大見出し)       「ビラ代金は直接,現金で山崎に」(大見出し)       「後からカラクリ知った名義だけの代表・内藤「山友とは,もうコリ      ゴリ」と決別」(大見出し)       「怪しげな「民主政治を考える会」」(小見出し)       「告発ファクスで悪事が露見」(小見出し)               「政治資金規正法違反の疑い」(小見出し)       「“疫病神”に踊らされた末路」(小見出し)    (イ)6段10行目ないし11段28行目(以下a), 4段47行目ないし      55行目(以下b)(以下,併せて「本件記載G」という。)      a 「平成8年暮,全国会議員,マスコミ関係者に「民主政治を考える       会」有志名で「絶縁宣言」なるファクスが,送付されたのだ。その中       に,この「民主政治を考える会」のビラ制作及び同会の運営,会計の       からくりが,余すところなく告発されていた。        それによれば,内藤国夫が代表世話人を務める「民主政治を考える       会」で,約1億枚にものぼるビラを配布してきたが,「どうにも我慢       のならないことが持ち上がりました,それは会を支えてきた私どもの       純粋な活動が,発足当初から会を実質的に運営してきた山崎正友の金       もうけに利用されてきたことです。私どもの会が発行してきたビラは       山崎にとっては個人の金もうけのタネにすぎなかったのです」と,       「民主政治を考える会」は,発足以来,山崎正友に実質,運営されて       きた,発行してきた約1億枚のビラは,その山崎の金儲けに利用され       てきたと,強い不満を表明しているのだ。        では,具体的に,山崎は,このビラ発行で,どういう金儲けをして       いたのか。        「疑惑の第一は,ビラの作成代金に関してです。これまでビラは各       宗教団体などには基本的に1枚3円で買っていただいてきました。と       ころが最近,出版・印刷関係に詳しい人間に聞いて分かったことなの       ですが,この主(ママ)の印刷物の場合,印刷代・紙代・折り代など       一切合切を含めても,原価はせいぜい1円50銭なのです。かりに原       価を1円50銭としましょう。売価が3円として,1円50銭の差益       が生まれます。1枚をとってみれば,たかが1円50銭ですが,ビラ       の発行部数は,たとえば第5号を例に取れば,1千万部にものぼるの       です。その全部が売れたとして,実に1千500万円もの差益が出る       わけです。しかし山崎はこの利益につき私どもに報告していません。       この利益は,いったいどこに消えたのでしょうか。私どもは,山崎が       何らかの細工をほどこしたに違いないと確信しています……ビラは号       によって部数に変動がありましたし売れ残った分もありますが,各号       とも1千万枚売れたとして,発行したのは,6号ですから,ビラの制       作費の差益だけで約1億円もの金を山崎が懐にしていたことになりま       す」        つまりビラの原価と購入価格の差益が,6回分で総計約1億円にの       ぼり,それがまず山崎に直に入ったと告発しているのである。        しかもこの告発は,これだけでは終わらない。「第二の疑惑はもっ       と深刻」として,驚くべきビラをめぐる金銭授受の流れを明かしてい       る。        「通常,会のロ座に振り込まれてくるビラの代金が,こと自民党の       場合に限っては,現在自治大臣をされている白川勝彦党総務局長から       山崎が直接,現金でもらってきていたことです。つまり山崎が白川代       議士から受け取った何億円にものぼる金の額が本当はいくらなのか,       山崎以外の誰も知らないし,そこから山崎がいくら抜こうが,誰にも       分からない仕組みになっていたのです……私どもは山崎が自民党より       ビラの制作費のみならず配布代もせしめていたのではと疑っていま       す」        合計6回,約1億枚にものぼるビラの制作費等の会計の流れが,自       民党の党本部から,「民主政治を考える会」への口座ではなく。当時       自民党で,この学会攻撃ビラの担当窓口だった白川勝彦総務局長か       ら,山崎正友個人に現金で支払われていたというのである。        全く山崎のやりたい放題の,信じられない治外法権の世界が「民主       政治を考える会」の実態であったようだ。       誰が見てもおかしな金の支払いの仕組みについて,当の山崎は,仕       事仲間には「自民党がどうしてもそうしてくれというのだから仕方が       ない。自分が好き好んで現金での支払いを指定しているのではない」       と,しゃあしゃあと厚顔にも自民党のせいにしているのである。        振り込みでなく,わざわざ現金授受という形にしたところに,山崎       の作為があったことは疑う余地がない。もとよりそれは代表世話人に       担ぎ上げられた内藤国夫など,最初からはずされて,知らない話であ       った。        内藤国夫は,代表世話人の自分も知らないところで,自民党と山崎       の間で,大量の現金の授受が行われたことを後で,知り激怒した。        「白川を一時期は追及したよ。『いくら渡したのか』と」。しかし,       そういうことを表にできないのが裏金だからと合点し「『もう勝手に       しろ』と,『バカヤロー』と,俺は白川にも大バカ呼ばわりした」       と,件の浜中との電話で,経過を明らかにしている。」      b 「俺はもう,山友とはもう,コリゴリなんだから。とにかく,その       チラシで何億円かの金を自民党からせしめて,その金を山分け,何人       かでして,そいでいま,ケンカしているんだ。その連中が」    ウ 本件連載(2)の平成17年2月2日付け「創価新報」9面(甲15の2)    (ア)見出し       「1974年〜75年 土地転がしで巨額の裏金を懐に」    (イ)2段3行目ないし3段15行目(以下「本件記載H」といい,本件記      載@ないしHを総称して,「本件各記載」という。)。       「ペテン男の悪事は,静岡県富士宮市での「土地転がし」から始ま      る。       大石寺に正本堂が完成しつつあった1972年(昭和47年)頃,妙      信講(現・顕正会)が国立戒壇を主張して騒いでいた。       当時,学会の顧問弁護士だった山崎は,この妙信講問題を担当。宗門      中枢に近づくなかで,富士宮近郊に大石寺が19万坪の遊休地を所有し      ている情報を得る。       すでにこの時,宗教を金儲けの手段としかとらえていなかった山崎      は,この土地を格安で払い下げさせようと暗躍し,内諾を得た。       そして74年末,地元の有力事業家で市議会議員でもあった人物H氏      と組み,ダミー会社を設立した後,まんまと19万坪の土地を買い受け      たのだ。       当初,山崎はそこにゴルフ場を建設しようと目論んだ。だが開発許可      が下りず,頓挫。すると,宙に浮いた土地を,今度は墓園用地にしよう      と画策。ダミー会社名義で購入した土地を転売して,5千万円ものマー      ジンを手にした。「土地転がし」である。       さらに山崎は,顧問弁護士という立場を悪用し,墓園の建設事業への      参入を取り計らうとH氏に約束して4億円とも5億円ともいわれる巨額      の金を手にしたのだ。」    2 本件事案    本件は,原告が,本件書籍及び本件連載(1),(2)により,名誉を毀損され,ま   た,プライバシーを侵害されたと主張して,被告らに対し,不法行為に基づ  き,以下の損害賠償(一部請求)及び謝罪文の掲載を求める事案である。  (1)損害賠償及び遅延損害金の支払     ア 本件書籍による名誉毀損及びプライバシー侵害について       被告和子に対し300万円,被告和美及び被告進一に対し各150万円      の損害賠償及び遅延損害金の支払     イ 本件連載(1)による名誉毀損及びプライバシー侵害について      (ア) 被告学会,被告池田及び被告秋谷に対し,連帯して60O万円の損害        賠償及び遅延損害金の支払(ただし,300万円及びこれに対する遅延        損害金の支払の限度で被告和子と連帯して,150万円及びこれに対す        る遅延損害金の支払の限度で被告和美と連帯して,150万円及びこれ        に対する遅延損害金の支払の限度で被告進一と連帯して)     (イ) 被告和子に対し300万円,被告和美及び被告進一に対し各150万        円の損害賠償及び遅延損害金の支払(それぞれ被告学会,被告池田及び        被告秋谷と連帯して)     ウ 本件連載(2)による名誉毀損について       被告学会,被告池田及び被告秋谷に対し,連帯して400万円の損害賠      償及び遅延損害金の支払   (2)被告学会,被告池田及び被告秋谷に対し,別紙謝罪文の掲戴  3 争点   (1)本件各記載が原告の名誉を毀損するか   (2)真実性又は相当性の法理に基づく違法性又は責任阻却の成否     ア 本件各記載が,公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的で      掲載されたか     イ 本件各記載が摘示する事実等が真実であり,又は真実と信ずるについて      相当の理由があるか等   (3)言論の応酬(対抗言論)の法理に基づく違法性阻却の成否   (4)本件記載C,Eが原告のプライバシーを侵害するか   (5)被告らの責任の有無   (6)原告の損害の有無及び額   (7)謝罪文掲載の必要性及び相当性 第3 争点に関する当事者の主張  1 争点(1)(本件各記載が原告の名誉を毀損するか)  [原告の主張]  (1)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載@は,「昭和45年の被告学会による宮本邸電話盗聴事件を,原     告が自己の能力及び才覚を学会内に誇示し,存在感を見せつけるために,独     断で行なった。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性      原告は,被告学会首脳の指示に基づき,資金を提供されて,被告学会の     学生部幹部を使って,組織的に電話盗聴を行ったものであるところ,かか     る犯罪行為を,原告が,自己の能力,才覚を会内に誇示し,存在感を見せ     つける目的で独断で行ったとする前記アの事実は,原告の社会的評価を低     下させるものである。  (2)本件記載A(クルーザ一遊覧に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載Aは,「原告は,日蓮正宗第66世法主である日達上人(以下     「日達」という。)を体調不良にもかかわらずクルーザーに乗せて,体調     を悪化させ,急遽入院という事態を招いた。原告の阿漕な金儲けのため     に,時の法主の寿命を縮めた。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性      前記アの事実は,原告の日蓮正宗における信徒としての評価及び社会的     評価を低下させるものである。  (3)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載)について  ア 摘示事実    (ア)本件記載Bは,「原告が,昭和61年に,麻雀賭博の現行犯として逮     捕された。」との事実を摘示するものである。    (イ)本件記載Cは,「原告が,月20回,一晩100万円単位の賭けマー     ジャンを行い,支持者からの浄財をほとんどつぎ込み,昭和61年3     月,麻雀賭博の被疑者として逮捕された。」との事実を摘示するもので     ある。    イ 名誉毀損性      前記アの逮捕は誤認逮捕であり,原告は,逮捕から24時間後に,無実     として釈放され,何ら処罰を受けていない。にもかかわらず,同逮捕から     15年以上経過した後に,前記アの各事実を摘示することは,一般の読者     をして,「原告が,麻雀賭博を行い,賭博罪で処罰された。」との印象を抱     かせるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。  (4)本件記載DないしF(不倫及び麻雀賭博に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載DないしFは,以下の事実を摘示するものである。    (ア)本件記載D      「原告が,大分県在住の女性Wと関係を結び,大金を騙し取った。同     時に,原告は,浜中和道(以下「浜中」という。)の妻とも不倫関係に     あった。」との事実    (イ)本件記載E       「原告が,出獄後,浜中の妻との不倫関係を続けたため,浜中夫妻は離      婚した。原告は,平成8年,浜中と離婚した妻と再婚し,友人の妻を寝取      り泥棒猫の本性を現した。原告は,20年間,ただ女性を弄び,騙してせ      しめた金で賭け麻雀に明け暮れ,親友の妻を寝取り,正信会を食い尽くし      た。原告は,同志や友人を裏切り,裏のドブネズミの闇生活者に堕した。」      との事実    (ウ)本件記載F       「原告は,Wからせしめ取った1000万円を,ほとんど麻雀賭博の精      算につぎ込んだ。正信会の信徒からむしり取ったカンパや支援金を麻雀の      賭け金に使い,うす汚い人々の享楽の金として使った。」との事実    イ 名誉毀損性      前記アの各事実は,前記第2の1(4)ア(ア)記載の見出しと相まって,原告     の社会的評価を低下させるものである。  (5)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて    ア 摘示事実      本件記載Gは,「内藤國夫(以下「内藤」という。)が名前を貸して代表     世話人となっている「民主政治を考える会」(以下「考える会」という。)     を実質的に運営していた原告が,ビラの発行で,数億円もの「闇金」を手     に入れた。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性      前記アの事実は,前記第2の1(4)イ(ア)記載の見出しと相まって,原告の     社会的評価を低下させるものである。  (6)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載Hは,「原告は,大石寺所有に係る富士宮市所在の遊休地で土地     転がしを行い,5000万円ものマージンを取得した。原告は,地元の有力     者に墓園工事参入を取り計らうと約束して,4億円とも5億円とも言われる     金を手にした。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性      前記アの事実は,前記第2の1(4)ウ(ア)記載の見出しと相まって,一般の     読者をして,原告が,被告学会の首脳又は顧問弁護士として関与した職務     の遂行過程で,不正に私腹を肥やしたとの印象を抱かせるものであるか     ら,原告の社会的評価を低下させるものである。 [被告らの主張]  (1)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について    ア 摘示事実について    (ア)原告の主張のうち,宮本邸電話盗聴事件が,「被告学会による」もので      あるとの部分は争う。    (イ)本件記載@の直前には,「功名心それ自体は,皆大なり小なりもって      おり,非難されるべきことではない。問題はそのあらわし方である。こ      の男は,それを正当の方法ではなく,人の裏をかいて,あっと驚かす奇      抜な思いつきや謀略に血道を上げることで示そうとした」(本件書籍1      3頁7行目ないし9行目)と記述されている。       かかる文脈を踏まえれば,一般の読者は,原告の「功名心」の「あら      わし方」が「正当の方法ではなく,人の裏をかいて,あっと驚かす奇抜      な思いつきや謀略に血道を上げることで示そうとした」例として,本件      記載@において,「当時の学会首脳の誰も発想すらしなかった宮本邸電      話盗聴を,原告が独自に発案して計画を立て,後輩の学生に指示して実      行させた。」との事実を摘示するものと理解するのが通常である。    イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。    (ア)宮本邸盗聴事件とは,昭和45年7月,当時共産党中央委員会委員長      の宮本顕治(以下「宮本」という。)の私邸の電話線に盗聴器が仕掛け      られていたことが発覚したという事件である。    (イ)原告は,昭和55年4月28日から同年5月17日にかけて,被告学      会に対し,宮本邸盗聴事件等に関し虚実を織り交ぜて公表する旨脅迫し      て3億円を喝取し,また,同月18日から「同年6月4日にかけて,原告      の要求に応じなければ,今後もマスコミに宮本邸盗聴事件等に関し虚実      を織り交ぜて公表する旨脅迫し,5億円を喝取しようとした。そこで,      被告学会は,同月5日,原告を恐喝罪で警視庁に告訴した。       これを知った原告は,マスコミを利用して被告学会を攻撃することで      告訴を取り下げさせ,また,告訴が原告のロ封じのための謀略であるか      のように世間にアピールし,捜査を牽制して逮捕を免れようと考え,宮      本邸盗聴事件は,原告が発案計画し,被告学会首脳が了承した上で犯行      に至ったものであると,虚実を織り交ぜて,週刊誌や自身の著書等を通      じて,自ら世間に公表した。       その後,原告は,昭和56年1月24日,恐喝の被疑事実で逮捕さ      れ,平成3年1月,懲役3年の実刑判決が確定し,同年2月に刑務所に      収容された。(以上を,以下「恐喝事件」ということがある。)    (ウ)原告は,平成5年4月に仮釈放された後,恐喝事件は被告学会が仕組      んだ冤罪であるとマスコミ等を通じて社会に公言するとともに,宮本邸      盗聴事件に関し,再び虚実を織り交ぜて,週刊誌や自身の著書等で自ら      積極的に取り上げて世間に喧伝し,これを被告学会に対する攻撃材料と      して,現在まで積極的に利用し続けている。    (エ)以上のように,宮本邸盗聴事件に関する原告の社会的評価は,原告自      身の昭和55年から現在までの言動によって低下していたものであり,      本件記載@によって,原告の社会的評価が改めて低下することはない。  (2)本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)について    ア 摘示事実について    (ア)原告の主張は,本件記載Aが,「原告が,体調不良の日達をクルーザ      一に乗せた結果,日達が体調を悪化させた。」との事実を摘示するもの      であるとの限りにおいて認める。    (イ)本件記載Aは,株式会社シーホース(以下「シーホース」という。)      の経営をめぐる原告の詐欺的商法の紹介に付随して,原告が墓園事業で      巨利を得た事実を紹介し,原告が,その後再び,墓園事業による金儲け      に執着していた一つのエピソードを紹介したものである。かかる文脈に      よれば,本件記載Aは。以下aないしdの事実を前提とした,「原告が      日達をクルーザーに乗せた行為が,自らの金儲けに執着する余りの思慮      を欠いた行動であった。」との意見ないし論評を表明するものである。      a 「原告が,昭和50年以降,被告学会の顧問弁護士として,同会の       墓園事業に中心的に関わる中で,その地位を悪用し,関係業者と癒着       して巨額の私利を計っていた。」との事実      b 「原告が,昭和54年6月,自らの金儲けのために始めたシーホー       スの資金繰り等のために,日蓮正宗の墓園計画に絡めて,日達を利用       しようとしてクルーザー遊覧を計画した。」との事実      c 「高齢で心臓病等を患っていた日達が,実際にクルーザーに乗船し       て体調を悪化させた。」との事実      d 「日達が,クルーザー遊覧の約1か月後に死去した。」との事実    イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。  (3)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載)について    ア 摘示事実について    (ア)本件記載Bは,本件書籍中,原告が人生を狂わせた金儲けに走った理      由が,派手な遊び志向にある,との記述に続く部分であって,「原告      が,賭け麻雀に耽り,昭和61年に,麻雀賭博の被疑事実で逮捕され      た。」との事実を摘示するものである。    (イ)本件記載Cは,「原告が,被告学会との闘争資金であるなどとして支      援金を募りながら,それらを自らの遊興,なかんずく賭け麻雀に使い,      麻雀賭博の被疑事実で逮捕までされた。」との事実を摘示するものであ      る。    イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。      原告は,本件記載B,Cが摘示する事実が,一般の読者をして,原告が     麻雀賭博を行い,賭博罪で処罰されたとの印象を抱かせる旨主張するが,     同記載は,原告が麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたとの事実を指摘したに     すぎず,原告が賭博罪で処罰されたとの印象を与えるものではない。   (4) 本件記載DないしF(不倫及び麻雀賭博に関する記載)について    ア 摘示事実について    (ア)本件記載Dについて      a 本件記載Dが,「原告が,大分県在住の女性Wと関係を結んだ。」と       の事実,「原告は,Wと不倫関係にあったほぼ同時期に,浜中の妻と       も不倫関係にあった。」との事実を摘示するものであることは認め       る。      b 本件記載Dが,「原告が大金を騙し取った。」との事実を摘示するも       のであることは争う。        これは,事実を摘示するものではなく,以下(a)ないし(c)の事実を前       提とした,意見ないし論評を表明するものである。      (a)「原告が,Wと男女関係にあった。」との事実       (b)「原告が,Wと男女関係になってから,その関係を利用して,W         に対し,甘言を弄したり,別れ話を持ち出すなどしながら,大金を         引き出した。」との事実       (c)「原告は,仮釈放後,Wとの交際を絶って,Wからの金員の返還         要求にもー切応じようとしなかった。」との事実    (イ)本件記載Eについて      a 本件記載Eは,「原告が,浜中の妻との不倫関係を続け,浜中夫妻       は離婚した。原告は,平成8年,浜中の別れた妻と再婚した。」との       事実を摘示するものである。      b 本件記載Eが,「友人の妻を寝取り泥棒猫の本性を現した。」との事       実を摘示するものであることは争う。                    これは,事実を摘示するものではなく,以下(a),(b)の事実を前提と       した,意見ないし論評を表明するものである。       (a)「原告が友人である浜中の妻と不倫関係に及んでいた当時,Wが        原告と浜中の妻との不倫に感付いて原告を追及した際に,原告が,        「俺が友達の女房を寝取るような泥棒猫みたいなことをすると思う        か。」と怒鳴った。」との事実       (b)「その後,浜中夫妻は離婚し,原告が浜中の妻と再婚した。」と        の事実       c また,原告が事実の摘示と主張するその他の部分(「原告は,20       年間,ただ女性を弄び,騙してせしめた金で賭け麻雀に明け暮れ,親       友の妻を寝取り,正信会を食い尽くした。原告は,同志や友人を裏切       り,裏のドブネズミの闇生活者に堕した。」との部分)は,本件記載        D,Eを含む本件連載(1)の平成14年3月6日付け「創価新報」12       面の結論の一部であり,「原告が正信会寺院の女性信徒Wと不倫関係       に及び,その不倫関係を利用してWに大金を出させていたばかりか,       ほぼ同時期に,友人である浜中の妻とも不倫関係を結び,さらには,       正信会やWなどからの支援金等を賭け麻雀に費消していた。」との事       実を前提とした,意見ないし論評を表明するものである。    (ウ)本件記載Fについて       本件記載Fは,「原告が,不倫関係にあったWや正信会の多くの信者      から,裁判費用や闘争資金等として受けた支援金等を,自らの賭け麻雀      に費やしていた。」との事実を摘示するものである。     イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。  (5)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて     ア 摘示事実について    (ア)本件記載Gが,「原告が,内藤が名前を貸して代表世話人となってい       る「考える会」を実質的に運営していた。」との事実を摘示するもので       あることは認める。    (イ)本件記載Gが,「原告が,ビラの発行で数億円もの「闇金」を手に入       れた。」との事実を摘示するものであることは争う。        これは,事実を摘示するものではなく,以下a,bの事実を前提とし      た,「原告が,「考える会」のビラ発行に絡んで,「闇金」を取得した疑      惑がある。」との意見ないし論評を表明するものである。      a 「原告が自民党と共闘して作成・大量配布した「考える会」のビラ       が,自民党の選挙対策として極めて大きな成果を上げた。」との事実      b 「原告が自民党から直接現金で受け取っていたビラ代金等の額が,       原告にしか分からないという極めて不明朗な仕組みになっており,ま       た,ビラの原価と売値の間に差益が生じる状況があった。」との事実    イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。  (6)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 摘示事実について      本件記載Hは,「原告が,学会の顧問弁護士でありながら,その立場を     悪用し,業者と癒着し,同会の墓園建設事業に絡んで,土地転がし等によ     り,多額の裏金を手にするといった,弁護士にあるまじき背信行為を行っ     た。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性について      原告の主張は争う。 2 争点(2)ア(本件各記載が,公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る  目的で掲載されたか) [被告らの主張]  (1)本件連載(1)及び本件書籍の執筆の経緯及び目的    ア 原告は,昭和52年ころから表面化した日蓮正宗と被告学会間の軋轢     (いわゆる宗門問題)に乗じて,日蓮正宗の宗教的権威を利用して被告学     会を支配しようとして,昭和53年春ころには,日達に深く取り入り,日     達あての謀略文書を作成して,日達の被告学会に対する猜疑心・不信感を     煽り,被告学会攻撃を扇動し,密かに両者の離間工作を画策した。      昭和54年4月,原告の離間工作が奏効し,被告池田が被告学会の会長     職及び日蓮正宗の信徒最高位である法華講総講頭を辞任するに至り,原告     は,同年5月,日達から総講頭に次ぐ法華講大講頭に任命された。      同年7月に日達が死去すると,原告は,日達の後任法主の阿部日顕(以     下「日顕」という。)に被告学会攻撃を進言したが,排斥された。そこ     で,原告は,当時の宗内最大勢力であった日達の弟子を中心とした活動家     僧侶を利用して,宗内行政の実権を握ろうと画策した。      他方,原告が昭和51年ころから経営を始めた冷凍食品会社であるシー     ホースは,当初から赤字続きで,原告は,シーホースが倒産した場合,活     動家僧侶の信頼を失うと考え,シーホースの延命のため,倒産の危機に瀕     していた昭和54年後半以降,なりふり構わぬ資金繰りをするようになっ     た。そして,原告は,活動家僧侶やマスコミによる被告学会攻撃を激化さ     せることで,被告学会をして,原告をなだめる必要があると思わせ,シー     ホースに対する資金援助をさせることが可能となると考え,同年9月下旬     以降,原告が被告学会の原島崇教学部長に指示して持ち出させた被告学会     の内部資料を活動家僧侶やマスコミに流し,被告学会の悪宣伝を激化させ     た。また,原告は,被告学会の脱会者を使って,被告学会に対して供養金     返還を求める集団訴訟(特財返還請求訴訟)の訴状原案や記者会見用の声     明文を起案するなどして,被告学会を追い詰めていった。      原告は,このような謀略を行いながら,被告学会に対して援助を要求     し,被告学会攻撃が激化している中で原告の要求を拒絶することの危険を     慮る被告学会をして,昭和54年11月から同55年2月までの間,原告     に対し,合計1億7300万円もの金員を支出させた。      原告は,同年3月,被告学会の顧問弁護士を解任された。      原告は,同年4月10日以降も,被告学会に対し,金員を要求したが,     結局,シーホースは,同月15日と16日に不渡手形を出して倒産した。      原告は,同年6月に被告学会が原告を恐喝罪で警視庁に告訴したことを     知り,逮捕を免れるため,被告学会に陥れられたなどとして頻繁にマスコ     ミに登場し,被告学会を攻撃した。また,原告は,昭和56年1月に恐喝     の被疑事実で逮捕され,同年2月に起訴された後も,恐喝事件裁判を牽制     するために一段とマスコミを利用し,自ら書籍を発行するなどして,平成     3年2月に刑務所に収容されるまで,被告学会攻撃を激しく扇動した。      原告は,平成5年4月に仮釈放された後も,何ら反省することなく,恐     喝事件は被告学会の集団偽証による冤罪であると主張し,被告学会の元顧     問弁護士・幹部という肩書を売り物にして,「正義の告発者」を装い,マ     スコミ界,政界及び宗教界等を巻き込みながら,被告学会に対する攻撃を     内容とする書籍を多数発行し続けた。    イ 亡野崎は,原告の大学の後輩で,原告の本性を最もよく知る人物であ     り,被告学会の諸活動を通じ,原告と深い関わりがあった。      そこで,亡野崎は,原告の被告学会攻撃への対抗言論として,昭和56     年1月,「謀略山崎弁護士の黒い手口」,と題する書籍(甲205)を発行     し,サンデー毎日に,昭和57年11月から昭和58年2月まで,「虚構     の崩壊」と題する連載記事(全16回)を寄稿し,これに加筆して,同年     3月,「創価学会の真実 崩壊した山崎,隈部らの策略」と題する書籍(乙     18)を発行してきた。      そして,亡野崎は,原告が,平成5年に仮釈放された後も,恐喝事件は     冤罪であると主張して,被告学会攻撃を広範かつ執拗に行っていることへ     の対抗言論として,原告の活動実態を明らかにする総集編として,平成1     4年に改めて筆を執り,「創価新報」紙上に本件連載(1)を執筆し,これを     抜粋・加筆して,本件書籍を発行したものである。    ウ 本件連載(1)及び本件書籍の目的は,マスコミ界,政界及び宗教界等が     これ以上原告の謀略に利用されないようにするために,原告の嘘と欺瞞を     指摘し,真実及び正義を明らかにする点にあり,また,社会が再び原告か      ら被害を被らないように警鐘を鳴らす点にある。  (2)本件連載(2)について    本件連載(2)の主題は,「これが山崎正友のウソだ!断末魔にあえぐペテン  師の虚構を暴く」とのタイトルから明らかなように,原告の嘘と虚構を指摘   して,読者に真実を訴えかけることにある。    また,本件連載(2)の目的は,原告が顧問先に対する恐喝という前代未聞の   犯罪を犯しながら,反省せずに逆恨みし,被告学会攻撃に血道を上げている   ことを指摘し,原告がかかる動機の下に寄せた虚偽のコメントを,一部マス   コミが無批判に掲載し,被告学会批判に利用していることへの対抗言論とし   て,一部マスコミの在り方について社会に問題提起をし,報道姿勢を改める   よう訴えるために,原告の犯した悪事の実態を正しく認識させる点にある。  (3)以上によれば,本件各記載は,公共の利害に関する事実に係り,専ら公益   を図る目的で掲載されたものである。 [原告の主張] (1)被告学会は,マスコミ等による批判を様々な手段で抑圧する一方,財力に任    せた一方的な宣伝をしており,自由と民主主義社会に有害かつ危険な存在であ    り,その活動は,指導者である被告池田の指揮等を反映して,時に反社会性を    帯び,国家及び社会に弊害を及ぼし,世論の批判を浴びてきた。     原告は,日蓮正宗の信徒団体であった被告学会の中枢幹部として,被告池田    の指示のまま,スキャンダルの隠蔽や,様々な反社会的行為に加担してきた    が,被告池田が,被告学会の私物化を進め,日蓮正宗の教義に違背して反逆す    る姿勢を示したことに反対し,日蓮正宗を守るために行動したことから,被告    池田から反逆者とみなされて追放され,様々な迫害を受けるに至った。原告    は,その後,被告学会に在籍した約10年間に体験見聞した,被告学会の反社    会的な体質や矛盾する実態等に関する批判活動を行ってきた。     これに対し,被告学会は,原告のロ封じのために,恐喝事件をでっち上げ,    原告に対する個人攻撃を繰り返し,原告が仮釈放された後も被告学会批判を続    けるのに対し,原告に対する卑劣な個人攻撃を展開した。  (2)本件書籍及び本件連載(1)(2)は,その一環であり,「こんな悪い奴はいない!    山崎正友の「嘘」と「闇」」とのタイトル等から明らかなとおり,原告を貶め,    中傷し,社会的に抹殺するためのキャンペーンであることが明らかである。     原告は,日蓮正宗と被告学会との抗争の際,自身の信仰及び「日蓮正宗の信    徒団体である」との被告学会の本来の目的に従い,日蓮正宗側に加担し,被告    学会の教義の誤りを正す行動に協力したために,被告学会から,「裏切り者」と    して追われるに至る経緯の中で,被告池田の人物像を社会に暴露し,これによ    って,被告池田の野望(日蓮正宗を乗っ取り,自らを本仏化し,宗教を利用し    て我が国の最高権力者になろうというもの)を挫折させたものであるが,本件    書籍及び本件連載(1),(2)は,原告が被告池田の野望を挫折させたことに対する    被告池田の憎悪と怨念に基づき,専ら被告学会及び被告池田による報復及び批    判の抑圧という,恣意的で反社会的な目的の下に行われたものである。  (3)以上によれば,本件各記載は,公共の利害に事実に関する事実に係るもので    はなく,また,専ら公益を図る目的でされたものでもない。 3 争点(2)イ(本件各記載が摘示する事実等が真実であり,又は真実と信ずるに   ついて相当の理由があるか等) [被告らの主張]          (1)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について    ア 前記1[被告らの主張](1)ア記載の,本件記載@が摘示する事実は,以     下イのとおり,真実であり,又は,執筆者である亡野崎が真実と信ずるに     ついて相当の理由がある。    イ 真実性及び相当性    (ア)宮本邸盗聴事件に関し,宮本が,原告,事件当時被告学会副会長の北      條浩並びに被告学会学生部幹部の廣野輝夫,竹岡誠二及び北林芳典(以       下,それぞれ「北條」,「廣野」,「竹岡」,「北林」という。)に対して損       害賠償を求めた民事訴訟(以下「盗聴事件訴訟」という。)の第1審判       決(甲22)は, (a)原告が電話盗聴を計画し,廣野及び竹岡が準備して      盗聴器を設置し盗聴したことにつき,争いがない事実とした上, (b)当時      の政治的,社会的情勢からして,被告学会の副会長の北條が,発覚した      ときは窮地に陥ることが明らかな電話盗聴を積極的に計画し,原告に指      示して実行させたものとは考えられない旨認定している。    (イ)また,盗聴事件訴訟の控訴審判決(甲23)は,北條の関与を認定し      たが,以下の事情からすれば,かかる認定は誤りであるし,亡野崎も,      北條の関与はないと確信していたものである。      a 昭和43年9月の日中国交正常化提言に象徴される被告学会の方針       や,昭和45年5月の共産党に対する基本方針発表という経緯に照ら       し,これと相反する宮本邸盗聴事件に,被告学会の副会長の北條が関       与し,容認することはあり得ない。      b 被告学会が原告を恐喝罪で告訴したのは昭和55年6月5日である       ところ,原告が宮本邸盗聴事件を公表したのも同年6月であり,その       動機は,自らの逮捕を免れるため,被告学会首脳の関与をでっちあげ       ることにより,被告学会を牽制しようとしたものと考えられる。      c 原告が,被告学会の組織的関与を示すために当初主張していた盗聴       機材及び資金に関する話は,不合理に変遷している。      d 原告は,公表後しばらくしてから,被告池田の関与を付け加えた       が,法廷で弾劾され,作り話であることが明らかになっている。      e 原告は,原告の悪事を暴く言論活動をしていた北林の口封じ目的       で,北林を宮本邸盗聴事件の実行犯の1人であると公表したが,盗聴       事件訴訟の第1審判決は,これを排斥している,      f 「浜中和道回想録」(乙31の2)には,原告が,浜中に対し,北       條には宮本邸盗聴を事後報告したと語ったこと等が具体的に記載され       ている。    ウ したがって,本件記載@が摘示する事実は真実であり,又は,亡野崎が     真実と信ずるについて相当の理由がある。  (2)本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)について    ア 前記1[被告らの主張](2)ア(イ)aないしd記載の,本件記載Aが表明す     る意見ないし論評の前提となる事実は,以下イ,ウのとおり,真実であ     り,又は,執筆者である亡野崎が真実と信ずるにつき相当の理由がある。    イ 真実性    (ア)「原告が,昭和50年以降,被告学会の顧問弁護士として,同会の墓      園事業に中心的に関わる中で,その地位を悪用し,関係業者と癒着して      巨額の私利を計っていた。」との事実について       原告は,昭和50年以降,被告学会の墓園事業(現富士桜自然墓地公      園。以下「富士桜墓園」という。)に,顧問弁護士として中心的に関与      した際,関係業者の日原博(以下「日原」という。)と癒着し,多額の      マージンを得るなどした。このことは,恐喝事件裁判の第1審判決(乙      1)でも,日原からシーホースに対し,総額12億7300万円もの資      金援助がされたことが認定されている。    (イ)「原告が,昭和54年6月,自らの金儲けのために始めたシーホース      の資金繰り等のために,日蓮正宗の墓園計画に絡めて,日達を利用しよ      うとしてクルーザー遊覧を計画した。」との事実について      a 原告が昭和51年11月ころから経営を始めたシーホースは,当初       から毎月多額の欠損が生じていた。なお,原告が,自らの金儲けのた       めにシーホースの経営を始めたことは,恐喝事件裁判の第1審判決で       も認定されている。      b 一方,原告は,昭和52年以降に生じた被告学会と日蓮正宗との軋       轢に乗じて,両者の離間工作を行い,日達の信任を得ることに成功       し,日蓮正宗の宗教的権威を利用して,被告学会の支配を企てた。        また,原告は,富士桜墓園事業に絡み,多額のマージンを得るなど       していたことから,墓園事業は金になると考え,昭和54年6月当       時,シーホースが多額の負債を抱えていたことから,再び,墓園事業       に絡んで巨利を得ることや,墓園事業を名目に金融機関から更なる融       資を得ることを考えていた。      c 原告は,昭和54年6月21日,弘信商事株式会社(富士桜墓園の       建設工事資金を日原に融資した金融会社。以下「弘信商事」とい       う。)の大谷敬典常務(以下「大谷常務」という。)と,日原の関係者       である峯岸博(以下「峯岸」という。)を連れて,日達を葉山の土地       に案内し,同土地が墓園用地に適している旨説明した。原告の狙い       は,原告と日達との親密な関係を見せつけ,弘信商事と日原をして,       原告が関与する日蓮正宗の墓園建設計画実現の際にも事業に関与させ       てもらえるよう,原告に便宜を図ることに損はないと思わせ,シーホ       ースに対する資金援助等を引き出すためであったと推測される。       d 実際,日原のシーホースに対する資金援助は昭和55年2月まで続        き,その総額は12億7300万円に及んだ。また,株式会社イチビ        ル(弘信商事の関係会社)の,株式会社東海総業(シーホースの金融        部門)に対する与信枠は,当初1億3000万円だったのが,クルー        ザー遊覧直後の昭和54年7月には,4億円に増額されており,この        ことは,恐喝事件裁判の第1審判決でも認定されている。         さらに,原告は,日達の本葬の際,行列の先頭を,先端に錫の付い        た金棒をシャンシャンと鳴らして,額の汗を拭きながら,いかにも辛        そうに歩いていたが,その翌日,浜中に対し,「なに,大したことじ        ゃないよ。銀行関係者を僕が葬式に呼んでおいたからね。あの連中の        前でシャン,シャン,シャン,シャンという行列に僕が池田さんと並        んで歩んでいるのを見たら,あいつらはいくらでも金を貸してくれる        んだよ。だからあのシャン,シャンという金棒の先から札が降ってく        ると思えば,どうってことないさ。あれぐらい歩くことなんか。」と        述べていたことからも,前記cの原告の狙いが窺われる。       e なお,原告は,日達がクルーザーに乗ってみたいと述べていたから        乗船させただけである旨主張するが,当時77歳という高齢で,心臓        疾患で治療中の日達が,信徒の原告に対し,クルーザー遊覧を依頼す    ること自体不自然である。         また,原告は,葉山の墓園用地視察は,日達が日蓮正宗総本山の大        石寺の墓園用地を探すように要請したことに端を発するものである旨   主張するが,かかる主張は,原告が太田健一郎にあてた昭和55年1    月31日付け書簡(乙220)において,葉山の墓園用地が被告学会    の墓園用地であるとされている点において矛盾している。さらに,日    達から墓園用地を探すように要請された旨の主張に係る委任状(乙2    21)は,委任者欄とそれ以外の部分において,「正」の字の活字及    び数字のポイントが異なっているなど,体裁自体不自然である。この    点につき,原告は,本人尋問において,委任者である日蓮正宗が白紙    委任状を交付したなどと,およそ不合理な弁解をしており,上記委任    状が,原告により偽造されたものであることは明らかである。    (ウ)「高齢で心臓病等を患っていた日達が,実際にクルーザーに乗船して      体調を悪化させた。」との事実について       日達は,当時77歳という高齢で,重い心臓病を患っており,また,      クルーザー遊覧当日(昭和54年6月21日)は,同月19日に北海道      長万部での葬儀等から戻ったばかりで疲労が蓄積しており,大変顔色が      悪かった。そして,日達は,葉山マリーナから乗船後間もなく,波風に      よる揺れから体調を悪化させ,熱海行きの予定を急遽変更して,江の島      で下船したものである。    (エ)「日達が,クルーザー遊覧の約1か月後に死去した。」との事実につ      いて       その後,日達は,−旦は体調を持ち直し,法主の職務を行ったが,ク      ルーザー遊覧から約1か月後の昭和54年7月22日に死亡した。       日達の死因は,心筋梗塞又は腹部解離性大動脈瘤とされているが,高      齢者や持病を抱える者が船酔いにかかった場合,脱水症状をはじめ,大      変な病気を引き起こす要因となる可能性が指摘されており,クルーザー      遊覧による体調悪化という急激な血圧変動が,高齢で脆くなった血管に      悪影響を与えた可能性は否定できない。    (オ)以上によれば,本件記載Aが表明する意見ないし論評の前提となる事      実は,真実である。    ウ 相当性    (ア)被告学会は,昭和54年6月下旬ころ,日達が同月21日のクルーザ      ー遊覧後,体調を悪化させて入院したとの情報を得た。そして,関係者      の事情聴取等から,同日に葉山の墓園用地視察が行われ,弘信商事の大      谷常務と,日原の関係者の峰岸が同行していたことが明らかになった。    (イ)クルーザー遊覧直後の同年7月15日付で,イチビルの東海通商に      対する与信枠が大幅に拡大していることが,恐喝事件裁判の第1審判決      でも認定されていた。    (ウ)日達の死因は,腹部剥離性大動脈瘤による心筋梗塞とされているが,      木村芳孝(以下「木村」という。)が医師に意見を聞いたところ,クル      ーザー遊覧による体調悪化という急激な血圧変動が,高齢で脆くなった      血管に悪影響を与え,日達の病気の悪化を促進した可能性は否定できな      いとのことであった。    (エ)平成12年に公表された「浜中和道回想録」(乙31の3の1・3)に      は,日達をクルーザー遊覧をロ実に連れ出すために,原告が浜中と日達      の秘書役の光久諦顕をクルーザーに招待し,光久に対し,「今度猊下を      招待しましょう。」と働き掛けたと思われた旨の記述や,前記イ(イ)dの      原告の発言が記述されており,これにより,亡野崎は,クルーザー遊覧が原      告の金儲けのために利用されたものと確信した。    (オ)以上によれば,亡野崎が,本件記載Aが表明する意見ないし論評の前      提となる事実が真実であると信ずるについて相当の理由がある。  (3)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載),DないしF(不倫及び麻雀賭    博に関する記載)について    ア 前記1[被告らの主張](3),(4)記載の,本件記載BないしFが摘示する     以下の事実等は,以下イ,ウのとおり,真実であり,又は,本件記載Bな     いしFの執筆者である亡野崎(なお,本件記載DないしFについては,聖     教新聞社新聞編集局次長として,本件連載(1)に関与し,いわば共同執筆者     ともいうべき立場にある木村(以下,亡野崎と併せて「亡野崎ら」とい     う。)を含む。)が真実と信ずるについて相当の理由がある。    イ 真実性    (ア)本件記載B,C,Fについて      a 原告が,被告学会との闘争資金に充てるなどとして募った支援金       を,自らの遊興,なかんずく賭け麻雀に使っていたこと        原告は,恐喝事件で逮捕され,昭和56年7月の保釈後,定職に就       かず,恐喝事件の裁判費用や生活費まで,正信会等からの支援に頼っ       ていたが,その実,麻雀店等に入り浸り,賭け麻雀に興じていた。        原告は,その著書「平成獄中見聞録」(乙210の1・2)におい       て,平成3年に拘置所に収容される以前の生活状況について,「雀ゴ       ロ生活をし,生活費とサウナ代が稼げればよし,負けてスッカラカン       になったら,バスの始発時間までコマ劇場前の花壇で寝た」などと記       述しており,支援金以外に収入がなかった以上,賭け麻雀の賭け金等       が,支援金の中から支出されていたことは明らかである。      b 原告が,麻雀賭博の被疑事実で,昭和61年に逮捕されたこと        原告は,賭け麻雀に明け暮れる生活を続けた結果,昭和61年3月       29日,麻雀賭博の被疑事実で逮捕された。        なお,原告は,本訴において,上記逮捕は誤認逮捕で冤罪である旨       主張しているが,原告も,逮捕当時,週刊誌(乙91ないし93)に       おいて,麻雀賭博の被疑事実を認めていたものである。    (イ)本件記載Dのうち,「原告が大金を騙し取った。」との意見ないし論評      部分について      a 原告が,W,すなわち和久田和恵(以下「和久田」という。)と男       女関係にあったこと        原告も,昭和58年ころから平成3年初めにかけて,原告が和久田       と男女関係にあったことを認めている。      b 原告は、和久田との男女関係を利用して,言葉巧みに和久田に多額       の資金を支出させたこと      (a)原告は,昭和58年夏ころ以降,正信会と不仲になったこと等か        ら,原告の生活は,正信会の一部の寺院や,親しい人達の個別の支        援に頼らざるを得なくなっていた。      (b)こうした中,原告は,昭和58年1月に知り合った和久田と,同        年6月に肉体関係を持ち,男女関係を利用して,言葉巧みに和久田        に多額の資金を支出させた。すなわち,和久田は,昭和58年から        昭和61年初めころまで,原告に対し,毎月約20万円から70万        円を支援したほか,昭和60年3月に原告が恐喝事件裁判の第1審        で実刑判決を受けた際,控訴審の保釈保証金に充てるために500        万円を用意したり,同年8月には原告のために1000万円を支出        するなど,合計約3000万円もの金銭支援をしたものであり,原        告自身,和久田の夫から和久田との不倫を原因とする損害賠償を求        められた訴訟(以下「不貞訴訟」という。)の控訴審(福岡高等裁        判所平成13年(ネ)第1113号)で提出した陳述書(乙69)にお        いて,和久田から,少なくとも約2000万円を受け取ったことを        認めている。      (c)そして,和久田が,そのような大金を自ら渡していたことは考え        られず,原告が,和久田との男女関係を利用して,言葉巧みに金員        を引き出したと考えるのが自然であり,このことは,和久田が,平        成8年に原告に対して提起した貸金返還請求訴訟(大分地方裁判所        平成8年(ワ)第751号等。以下「大分訴訟」という。)において,        原告が和久田と男女関係を持った後,言葉巧みに金を引き出してい        く様子を具体的かつ迫真的に記載した上申書(甲35)を提出して        いることからも明らかである。      c 原告は,仮釈放後,和久田との交際を絶って,和久田からの金の返       還要求にも一切応じようとしなかったこと        上記事実が真実であることは,原告も不貞訴訟における陳述書(乙       65)で自認しており,また,和久田が,平成8年に大分訴訟を提起       した事実からも明らかである。    (ウ)本件記載D,Eのうち,不倫に関する部分(原告が,和久田と不倫関      係にあったのとほぼ同時期に,浜中の妻とも不倫関係にあった事実)に      ついて      a 原告は,和久田との不倫関係を継続する一方,昭和52年6月から       昭和63年8月まで浜中の妻であった桂子とも,不倫関係にあったこ       とは,以下の事実から明らかである。       (a)原告の手帳に,昭和58年暮れころに,桂子との密会予定を示す        「ケイ子・熊本」等の記載があったこと       (b)昭和59年ころから,桂子が不自然な言い訳で伝法寺を留守にす        ることが多くなったこと       (c)昭和62年春ころ,桂子の免許証入れの中に,原告と桂子の部分        だけを切り抜いた写真が入っていたこと       (d)桂子が,昭和61年1月と昭和62年10月以降,浜中に無断で        伝法寺の会計から原告に送金していたこと       (e)原告が,平成5年4月に仮釈放された直後から桂子と同棲を始め        たこと      b また,原告は,以下のとおり,昭和59年暮れころには,和久田に       対して,桂子と不倫関係にあることを自ら認めていたものである。       (a)すなわち,昭和59年暮れころ,原告が不在であることから熊本        で桂子と密会していると直感した和久田が熊本空港に向かったとこ        ろ,そこに原告が現れた。和久田は,逃げる原告の後を追い,電車        で熊本駅から八代駅に行った。和久田が,駅前の喫茶店において,        原告に桂子との関係を追及したところ,原告は,「俺が友達の女房        を寝取るような泥棒猫みたいなことをすると思うか。」などと述べ        た。その後,和久田が,球磨川の土手で,原告と桂子の関係を浜中        に話す旨述べると,原告は,「友達の奥さんとできることは,世間        でもよくあることだ。」,「僕と君と奥さんの3人でよく話し合お        う。住職には絶対言うな。」と述べ,桂子と不倫関係にあることを        認めた上で,和久田のロを封じようとした。和久田が原告の頬を平        手で叩いたところ,原告は,逆上して和久田を平手で叩き返し,        「お前みたいな性悪には,借金をまとめて叩き返してやりたい。札        束ごとドブに捨ててやる。」と,捨て台詞を吐いた。       (b)この点,原告も,大分訴訟において,熊本空港で和久田と出会        い,桂子との関係を詰め寄られたこと。電車に乗れば諦めるだろう        と思い原告が電車に乗ると和久田もついて来たこと,2人で八代駅        前の喫茶店に入ったこと,その後,川の堤防を歩いているときに,        和久田が原告に殴りかかり,これを防ごうとした原告が和久田を押        しのけたところ,和久田がその場に倒れたこと等の外形的事実を認        めていたところである。       (c)一方,原告は,本訴において,八代に行った理由について,和久        田から逃げるためではなく,公明党の鹿児島県議会議員と会う約束        があったためであるなどと主張を変遷させたが,かかる議員は,当        時そもそも存在せず,原告の主張は言い逃れにすぎない。    (エ)以上によれば,本件記載BないしFが摘示する事実等は,真実であ      る。    ウ 相当性    (ア) 本件記載B,C,Fについて       a 亡野崎らは,原告が大分訴訟及び不貞訴訟で提出した陳述書(乙5        5, 66),原告が「山崎正友を支援する会」の会報(乙52)や正信会        の機関紙「継命」に寄せた手記(乙88)及び「浜中和道回想録」(乙3        1の4の2)等の資料から,恐喝事件で保釈中の原告が,正信会等から        募った支援金を,裁判費用や生活費に充てていたことは真実であると判        断した。       b また,亡野崎らは,大分訴訟における原告の主張よりも,和久田の上        中書(甲35)及び「浜中和道回想録」(乙31の4の2)の詳細な記述        の方が信用できると判断し,また,原告が,「平成獄中見聞録」(乙21        0の1・2)において,賭け麻雀で生活していたことを「雀ゴロ生        活」と称して得意気に記述していたことから,原告が,正信会等から        の支援を受けていた時期に,賭け麻雀に興じていたことは真実であると        判断した。       c そして,原告が,昭和61年3月29日に麻雀賭博の被疑事実で逮捕        されたことは,当時の新聞(乙89)や週刊誌(乙90,92,93)        で報道されていたし,原告自身,逮捕直後に,週刊誌(乙91,92)        の中で,被疑事実を認めていたものである。       d 以上によれば,亡野崎らが,本件記載B,C,Fが摘示する事実等が        真実であると信ずるについて相当の理由がある。    (イ)本件記載Dのうち,「原告が大金を騙し取った。」との意見ないし論評      の表明部分について      a 原告が和久田と男女関係にあった事実,原告が仮釈放後,和久田と       の交際を絶って,和久田からの金員の返還要求にも一切応じようとし       なかった事実,原告が和久田と男女関係になってから同人より大金を       受け取っていた事実は,原告も大分訴訟等で自認するところである。        また,原告が和久田と男女関係になってから,その関係を利用して       和久田に対して甘言を弄したり別れ話を持ち出すなどしながら大金を       引き出した事実は,和久田が実際に拠出した金額の大きさ等の当事者       間に争いのない事実から優に推認できるし,その状況を具体的かつ詳       細に述べる和久田の上申書(甲35)には十分な信用性がある。      b 以上によれば,本件記載Dのうち,「原告が大金を騙し取った。」と       の意見ないし論評の表明の前提となる事実について,亡野崎らが真実と       信ずるについて相当の理由がある。    (ウ)本件記載D,Eのうち,不倫に関する部分(原告が,和久田と不倫関      係にあったのとほぼ同時期に,浜中の妻とも不倫関係にあった事実)に      ついて      a 亡野崎らは,大分訴訟において提出された,原告と桂子の不倫関係       を示す多数の記載が具体的に述べられた和久田の上申書(甲35)       や,原告と桂子が不倫関係にあったことを示す事実が具体的に述べら       れた浜中の陳述書(甲133,乙57)から,上記事実が真実である       と信じたものである。        また,原告が,仮釈放直後の平成5年9月に,桂子とー緒に近所の       スーパーに買い物に出掛けている写真や,桂子宅の表札に桂子の当時       の名字(中垣)と原告の名字が列記されている写真(乙74,75,       98)や,「中外日報」(乙97)に掲載された,原告が仮釈放直後か       ら桂子宅に出入りしていたとの隣人の証言に照らし,原告が,仮釈放       直後から,桂子宅に出入りしていたことは確実であった。      b 以上によれば,亡野崎らが,本件記載D,Eのうち,不倫に関する       部分(原告と和久田が不倫関係にあったのとほぼ同時期に,桂子とも       不倫関係にあった事実)が真実であると信ずるについて相当の理由が       ある。  (4)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて    ア 前記1[被告らの主張](5)記載の,本件記載Gが摘示する事実等は,以     下イ,ウのとおり,真実であり,又は,亡野崎らが真実と信ずるについて     相当の理由がある。    イ 真実性    (ア)「原告が,内藤が名前を貸して代表世話人となっている「考える会」      を実質的に運営していた。」との事実について      a 原告は,ビラ活動のすべてに深く関与していた。       (a)原告は,以下の事実を自認している。        @ 原告が,佐貫修一(以下「佐貫」という。)に対し,「考える         会」の事務方を依頼し,その事務所を「創価学会による被害者の         会」(以下「被害者の会」という。)の事務所内に設置するように         依頼したこと        A 原告が,ビラの印刷業者をホクシンカンテックに選定したこと        B 原告が,ビラの最大の購入先である自民党との交渉窓ロとな         り,自ら自民党本部まで出向いて,ビラ代金を現金で受け取って         いたこと        C 原告が,ビラ配布の要となった妙観講や,「被害者の会」に対         し,ビラ配布を直接依頼したこと       (b)第1号ビラ(乙37)と,原告の署名記事(乙225)における        「新進党の皮をかぶった創価学会」等の表現の共通性等から,原告        がビラを作成したことが窺われるし,ホクシンカンテックの大越徹         夫社長(以下「大越社長」という。)は,内藤はビラの原稿を書い        ておらず,名前を貸しただけである旨述べている。      b 「考える会」に関与した者は,実質的運営者を原告と見ていた。       (a)原告は,内藤の訴訟代理人である加毛修弁護士から,内藤名義で        作成する準備書面(甲113)の内容の検討を依頼されていた。       (b)原告は,ビラの印刷業者であるホクシンカンテックから,300        万円のリベートを受け取っていた。      c 内藤は,ビラの経理に関与していなかった。       (a)原告は,「考える会」の代表世話人である内藤が,ビラの価格設        定に関与していなかったことを自認している。       (b)内藤は,原告と自民党との間の不透明な現金授受等を知り,自分        の名前が利用されたことに憤り,自民党の白川勝彦代議士(以下        「白川代議士」という。)に対し,「原告に幾ら渡したのか」と追及        している。      d 原告は,日顕あて書簡(乙34ないし36)において,自民党等を   巻き込んだ全国民的な被告学会攻撃の手法を企画立案したことを誇示    しているが,その手法は,「考える会」のビラ活動と一致する。       原告は,本訴において,日顕あて書簡を作成したことを否定する        が,日顕あて書簡の筆跡は,紛れもなく原告のものである。      e 以上によれば,「原告が,内藤が名前を貸して代表世話人となって       いる「考える会」を実質的に運営していた。」との事実は,真実であ       る。    (イ)「原告が自民党と共闘して作成・大量配布した「考える会」のビラ      が,自民党の選挙対策として極めて大きな成果を上げた。」との事実に      ついて                                     `      a 自民党は,平成5年7月の衆議院議員選挙で獲得議席数が過半数を       割って野党となり,その後与党に復帰したが,平成7年7月の参議院       議員選挙では,比例代表区の得票数が新進党を下回り,野党転落の危       機感を強めていた。        原告は,かかる政治状況を背景に自民党に接近し,反被告学会の共       闘関係を結んだ。このことは,原告が,同年末に自民党の講演会に4       度招かれ,また,日顕あて書簡(乙35)の中で,「自民党は,党と       して,党の会計から費用を出して,我々を支援するといっています。       今回は,学会を倒すか武装解除まで,攻撃をゆるめないということ       で,固い約束をとりつけながら進めています」,「学会攻撃の弾丸は,       私達以外に供給できません」と記述していること等から,明らかであ       る。      b 自民党は,新進党政権誕生を阻止するため,平成7年10月から,       「新進党は日本を独裁国家にすることを狙った被告学会によって支配       されている。」との印象を国民に与える本件ビラ約6000万部を,       約1年間にわたり配布し,その結果,平成8年10月の衆議院議員選       挙において,新進党の獲得議席数は,大きく減少した。      c 以上によれば,「原告が自民党と共闘して作成・大量配布した「考       える会」のビラが,自民党の選挙対策として極めて大きな成果を上げ       た。」との事実は,真実である。    (ウ)「原告が自民党から直接現金で受け取っていたビラ代金等の額が,原      告にしか分からないという極めて不明朗な仕組みになっており,また,      ビラの原価と売値の問に差益が生じる状況があった。」との事実につい      て      a 平成8年暮れから平成9年初めころにかけて,国会議員及びマスコ       ミあてに,「民主政治を考える会有志一同」名で,「絶縁宣言」と題す       る文書(乙49)が配布された。        「絶縁宣言」には, (a)「考える会」のビラの作成原価は1枚せいぜ       い1円50銭であり,1枚3円の売値との多額の差額が行方不明であ       り,原告が懐にしたのではないかという疑惑と, (b)自民党からのビラ       代金は原告が直接現金で受領し,その額を知る者がおらず,原告が       幾ら抜こうが誰にも分からない仕組みになっており,かつ,原告が他       の者には一切詮索させないという不明朗な金銭授受を行う中で,金儲       けをしていたのではないかという疑惑が指摘されていた。        「絶縁宣言」の内容の真実性は,平成11年11月にマスコミ関係       者に送付された,内藤と浜中の平成9年2月22日の電話での会話の       録音テープ(乙50の1・2)により裏付けられている。すなわち,       内藤は,「考える会」に名義を貸しただけであることや,白川代議士       に対し原告に幾ら渡したのかを追及したが答えがなかったこと,原告       が自民党から受領した現金を何人かで山分けしたこと,などを述べて       いる。        また,「考える会」のビラは,実際に1枚1円50銭程度で作成可       能であり,「絶縁宣言」の内容の正確性が裏付けられている。      b 原告は,「考える会」の入出金は銀行口座で記録されていたという       にもかかわらず,白川代議士から,ビラ代金を現金で受領していたこ       とを自認しているが,体調不良の原告が,厚木の自宅から自民党本部       まで出向いて多額の代金を受領するというのは,支払方法として不合       理である一方,その合理的説明はされておらず,また,原告は,自民       党に対し,領収証も交付していないのであって,原告が,受領した現       金から金を抜いていたことが強く窺われる。      c 原告は,「考える会」の収支は,売上諸経費明細書(甲116)の       とおりである旨主張するが,同明細書は,実態を反映していない。       すなわち,原告は,ビラの売値は1枚2円50銭から3円で,自民       党には700万部売却した旨主張しながら,本人尋問において,自民       党から総額1億円を受領した旨供述した。        しかし,ビラの売値を1枚3円と計算すると,仮に自民党の購入部       数が700万部だとしても,又は,6000万部の半分だとしても,       その合計は1億円に及ばず,簿外収入が生じることになる。        さらに,自民党のビラの購入希望部数の申込受付担当者であった党       本部職員の阿部信吾は,ビラの売値は1枚10円で間違いないと供述       しており(乙228),仮に自民党の購入部数が6000万部の半分       だとしても,上記明細書上の売上約1億5000万円を,大幅に上回       る簿外収入が生じることになるのである。      d 原告は,上記簿外収入の発生を本人尋問において追及されると,ビ       ラ1枚の売値は3円50銭であったなどと供述を変遷させており,原       告が,自民党から,受領した金額の一部を利得したことが強く窺われ       る。      e 原告は,受領したビラ代金は,必ず佐貫に渡っていた旨主張する一       方,少なくとも2,3回,自民党から受領した現金の中から,ホクシ       ンカンテックの大越社長に支払分を取り分けて渡したことがあった旨       主張し,佐貫に渡っていない現金があることを自認している。        しかし,大越社長は,その受取を拒否したものであり,これを原告       が懐に入れたと考えるしかない。      f 原告は,大越社長から300万円を受領したことを自認している       が,これはリベートであり,原告が,本件ビラに絡み,個人的な利益       を受け取っていたことを示す事実である。      g 以上によれば,「原告が自民党から直接現金で受け取っていたビラ       代金等の額が,原告にしか分からないという極めて不明朗な仕組みに       なっており,また,ビラの原価と売値の間に差益が生じる状況があっ       た。」との事実は,真実である。    (エ)以上によれば,本件記載Gが摘示する事実等は,真実である。    ウ 相当性    (ア)亡野崎らは,「絶縁宣言」(乙49)を平成9年初めころにに入手し,      平成11年11月に浜中が公開した内藤との会話テープ(乙50の1・      2)も,そのころ入手した。亡野崎は,会話テープの具体的内容から,      その信用性が非常に高いと判断し,「絶縁宣言」の内容の真実性を裏付      けるものであると考えた。    (イ)亡野崎らの調査の結果,「考える会」の事務所所在地及びファックス      番号は,「被害者の会」と同一であった。       「被害者の会」の構成員は,被告学会を敵視する日蓮正宗信徒らであ      る一方,内藤は,日蓮正宗と対立する正信会を擁護する立場にあった者      である。そこで,亡野崎らは,「被害者の会」と「考える会」をつなぐ      パイプ役が不可欠であり,それは原告しかいないと判断した。    (ウ)また,調査の結果,ビラの文体は,毎日新聞の記者を長年務めた内藤      の文体とおよそ異なっており,原告が過去の国政選挙において,被告学      会批判のビラ(乙111)を,自らの名前を隠して作成し配布させた前      例があることから,本件ビラも,原告が作成したものと考えた。    (エ)そして,亡野崎らは,目顕あて書簡(乙35)を平成7年初頭に入手      し,その内容が仮釈放後の原告の体験であり,原告作成に係る他の乱雑      な文書と比較しても,原告なりに清書した文書であると考えられたこと      から,日顕あて書簡は原告が作成したものと考えた。そして,日顕あて      書簡の中に誇示されていた,自民党等を巻き込んでの全国民的な学会攻      撃の手法が実行に移されたのが本件ビラ活動であり,原告が被告学会攻      撃の弾丸として自民党に供給したのが,まさに本件ビラであると考えた      ものである。    (オ)また,亡野崎らは,自民党は全国に各戸配布する組織を有していない      一方,原告と深いつながりがある妙観講が400万部ものビラを配布し      ていた事実等から,「絶縁宣言」が指摘するように,原告が自民党から      配布代名目で現金を受領し,妙観講には宗教活動としてビラを無償で配      布させ,配布代名目の金員を懐に収めたことも十分に考えられると判断      した。    (カ)また,「絶縁宣言」に記載された内容は,原告が自民党の白川代議士      からビラ代金などを直接現金で受領していた事実など,「考える会」の      内情をよく知る者にしか書き得ないものであった。    (キ)さらに,調査の結果,本件ビラは,1枚1円50銭程度の原価で作成      することは十分可能であった。    (ク)以上のような様々な裏付調査を行った結果,亡野崎らは,「絶縁宣      言」と会話テープの信憑性に一層確信を強め,そこに指摘された原告の      「闇金」取得疑惑は極めて濃厚であると判断したものである。       したがって,亡野崎らが,本件記載Gが摘示する事実等が真実である      と信ずるについて相当の理由がある。  (5)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 前記1[被告らの主張](6)記載の,本件記載Hが摘示する事実は,以下     イ,ウのとおり,真実であり,又は「創価新報」担当者の木村が真実と信     ずるについて相当の理由がある。    イ 真実性      恐喝事件裁判の第1審判決(乙1)が認定するとおり,本件記載Hが摘     示する事実は,以下のとおり真実である。    (ア)原告は,昭和49年3月,被告学会の顧問弁護活動を通じて,H氏,      すなわち,富士宮市議会議員で地元有力者の日原と知り合い,同人とゴ      ルフ場開発による金儲けを企み,昭和50年3月14日,原告のダミー      会社として山下商事株式会社(以下「山下商事」という。)を設立し,      同年6月16日,大石寺の所有地であった富士宮市上井出字ボサシタ2      736所在の土地(以下「ボサシタの土地」という。)を,1億600      0万円で購入した。しかし,同年8月,静岡県知事が静岡県東部地域の      開発凍結を宣言したことにより,ゴルフ場開発計画は頓挫した。    (イ)そこで,原告は,ボサシタの土地を利用して被告学会に墓園建設事業      を行わせ,その建設工事を日原が経営する会社に請け負わせ,日原を通      じて多額の裏金を取得することを目論み,原告の目論見を知らない被告      学会に墓園建設を強く働きかけ,これを決定させた。       そして,原告は,昭和50年12月12日,ボサシタの土地を,日原      が経営する株式会社日原観光開発(以下「日原観光」という。)に2億      1000万円で転売し,同土地の取得からわずか半年で,5000万円      もの利益を手にした。このことは,マージン一覧(乙23)の記載等か      らも明らかである。    (ウ)また,原告は,日原が経営する日原造園株式会社(以下「日原造園」      という。)が,昭和50年12月に三和銀行から墓園工事準備資金とし      て20億円の融資を受けた際,日原から,融資斡旋手数料名目で,1億      円を受領した。さらに,原告は,千代田区永田町のホテルニュージャパ      ン内の原告事務所の内装費等約1000万円を日原に負担させたほか,      日原から弁護士報酬名目で数千万円を受領するなど,様々な名目で多額      の裏金を受け取った。そのほか,原告は,日原から高級外車や貴金属等      を受け取り,原告が個人的に経営するシーホースに対する援助資金名目      で,日原に多額の裏金を出させるなどしていた。そして,日原のシーホ      ースに対する資金援助は,昭和52年4月から同55年2月まで続き,      その総額は12億7300万円に及んだ。       そして,その中には,原告が,日原から,富士桜墓園建設工事受注の      リベートとして受領した4億5000万円が含まれている。このこと      は,マージン一覧(乙23)及び「山崎先生に対する手数料明細」と題      する書面(乙112の1)の記載等からも明らかである。    (エ)以上のとおり,原告は,被告学会の顧問弁護士として,被告学会の墓      園建設工事等に関し大きな影響力を有することを利用して,建設工事の      受注業者である日原側と癒着し,多額の裏金を出させるなど,およそ弁      護士にあるまじき背信行為(弁護士法26条,76条,56条1項参      照)を行っていたものである。       したがって,本件記載Hが摘示する事実は,真実である。    ウ 相当性    (ア)聖教新聞社の新聞編集局次長であった木村は,被告学会の文芸部青年      会議が企画した本件連載(2)に関し,「創価新報」側の担当者として,記      事内容の検討や資料収集等に全面的に協力した。    (イ)木村は,亡野崎から,「昭和55年当時,北條会長らは,日原が,墓      園事業に関連して,原告の請求により,手数料及び謝礼名目,で5億円を      支払ったことを,日原から聞いていた事実」や,「原告が日原と知り合      った後の昭和50年ころから,高級外車を乗り回したり,身なりが派手      になっていった事実」等の話を聞いていた。       また,木村は,恐喝事件裁判の第1審判決(乙1),マージン一覧      (乙23)及び「山崎先生に対する手数料明細」と題する書面(乙11      2の1)及び等の資料を確認していた。    (ウ)したがって,木村が,本件記載Hが摘示する事実等が真実であると信      ずるについて相当の理由がある, [原告の主張]         (1)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について     被告らの主張は争う。     盗聴事件訴訟の控訴審判決(甲23)は,宮本邸盗聴事件当時,原告は,被    告学会内において将来を嘱望される地位にあり,あえて被告学会首脳の了解を    得ずに独断で電話盗聴を指示し,実行させる必要性があったとは解し難いこと    等から,原告が,独断で電話盗聴を指示した可能性は認められず,原告が,被    告学会首脳のいずれかに諮った上で,電話盗聴を実行させたことは明らかであ    る旨判断している。  (2)本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)について     被告らの主張は争う。    ア 原告が富士桜墓園事業に関与していたことは認めるが,原告がこれによ     って不当な利益を得たことはない。    イ 原告は,光久から,「日達がクルーザーに乗ってみたいと述べている。」     旨の話があったので,日達をクルーザーに乗船させただけである。      また,葉山の墓園用地視察は,昭和54年5月ころに,日達から,大石     寺の墓園用地を探すように要請されたことに端を発したものである。    ウ クルーザー遊覧が,日達の寿命を縮めたとは,およそ考えられない。      日達が,乗船後,「初めてなので船酔いしたらしい。気分が悪い。」と述べ     たので,直ちにクルージングが中止されたところ,日達は,下船後間もなく     船酔いから回復し,翌日から,通常どおり法務に従事していたし,昭和54     年7月初旬の定期診察においても,何ら異常が認められなかったものであ     る。  (3)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載),本件記載DないしF(不倫及    び麻雀賭博に関する記載)について     被告らの主張は争う。    ア 麻雀賭博に関する記載について    (ア)原告が,昭和61年3月に麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたことは認      める。       しかし,同逮捕は被告学会の差し金とみられる誣告による誤認逮捕で      あって冤罪であり,原告は,1日で釈放され,処罰もされていないばか      りか,警視庁築地署の担当刑事から謝罪を受けたものである。    (イ)原告が,支援金を賭け麻雀に使ったとの事実は否認する。       原告は,恐喝事件で逮捕された後,定職に就かず,闘争費及び生活費      を,専ら他からの支援に頼っていたが,体調が優れず,裁判活動や執筆      活動に追われており,昭和56年からは麻雀の誘いを断っていた。原告      が麻雀を再開したのは,昭和58年以降である。なお,原告は,麻雀も      さることながら,宿泊と食事を目当てに,麻雀店に出入りしていたもの      である。    (ウ)原告は,和久田から1000万円を借り入れていない。このことは,      大分訴訟の控訴審判決(甲42)でも認められている。    イ 不倫に関する記載について    (ア)原告と和久田が,昭和58年ころから平成3年初めにかけて,男女関      係にあったことは認める。       しかし,和久田は,原告に対し,「夫との関係は既に破綻している。」旨      述べて関係を求めたものであり,原告には,不倫との認識はなかった。    (イ)原告が,昭和58年8月以降,2年8か月にわたり,和久田から,合      計2000万円の支援を受けたことは認めるが,和久田との男女関係を      利用して,言葉巧みに多額の資金を支出させたことは否認する。       和久田の上申書や陳述は,信用性に欠けるものであり,このことは,      大分訴訟の控訴審判決においても指摘されている。    (ウ)原告が,桂子と不倫関係にあったことは否認する。そのような証拠は      ない。       原告が桂子と関係を持ったのは,仮釈放後である。  (4)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて     被告らの主張は争う。    ア 「考える会」は,内藤が発案し,内藤が名実共に運営者であった。    イ 原告は,自民党と共闘関係にはなかった。また,原告は,日顕に対し,     被告らが主張する書簡を送っていない。    ウ 原告が「考える会」のビラ作成に関与したことは認めるが,これは,内     藤が発案したものであった。      「考える会」のビラが,約6000万部(うち,自民党に配布されたビ     ラは,700万部程度)発行され,国政選挙に影響を及ぼしたとみられる     ことは認める。    エ ビラ代金は,購入者の負担を軽くし,なるべくたくさん配布してもらう     ため,1枚3円以上の価格は設定できなかった。自民党に対する販売価格     は,初めの2回が1枚2円50銭で,3回目以降が1枚3円であった。    オ ビラ代金は,納品書及び請求書等の記載に従って支払われていた。すな     わち,佐貫は,業者が作成する具体的数字が記載された納品書等に基づき     請求書を発行し,その金額が自民党等から支払われていたもので,ビラの     原価と売値の間に差益が生じる状況にはなかったし,佐貫は,毎月の収支     を内藤に報告していた。その収支は,売上諸経費明細書(甲116。売上     1億4873万4502円,仕入1億3945万8204円等)のとおり     であり,1億円もの金員が原告に渡ることはあり得ない。      また,原告は,「考える会」の活動を,ボランティアで手伝ったにすぎ     ず,交通費等の実費以外に,報酬を受け取っていない。    カ 「絶縁宣言」(乙49)及び内藤の会話テープ(乙50の1・2)は,     原告を中傷する目的で作成されたもので,その内容は虚偽である。  (5)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について     被告らの主張は争う。    ア 山下商事が,ボサシタの土地を,1億6000万円で買い受け,これを     日原観光開発に対し,2億1000万円で転売したことは認めるが,原告     はその差額を取得したことはない。差額の5000万円については,うち      2000万円が大石寺に寄付され,うち2500万円が設計会社に支払わ     れ,うち500万円が平井工業に支払われたものである。    イ 日原造園が,シーホースに対し,12億7300万円の資金援助をした     ことは認めるが,それ以外に,原告が,日原から,富士桜墓園建設工事受     注のリベートとして,4億5000万円を受領したことはない。    ウ 原告が,日原から,融資斡旋手数料名目の1億円や,高級車等の贈り物     や,弁護士報酬名目での数千万円の裏金等を受領したことはない。 4 争点(3) (言論の応酬(対抗言論)の法理に基づく違法性阻却の成否) [被告らの主張]  (1)言論の応酬(対抗言論)の法理等    ア 原告と被告学会との間においては,今日まで約30年もの間,幾多のテ     −マについて激しい言論の応酬がされてきたが,これは,昭和50年代初     めに,専ら原告による,マスコミ,日達及び活動家僧侶等を利用した,被     告学会に対する先行的かつ一方的な攻撃的言論に端を発するものであり,     被告学会が反論の言論を行うようになったのは,昭和55年6月に原告を     恐喝罪で告訴した後のことである。      原告は,告訴を知るや,元被告学会顧問弁護士・幹部の立場を売り物に     して,恐喝事件が,「正義の内部告発者」である原告を陥れるための被告     学会の謀略であるなどと,被害者である被告学会が加害者であるかの悪印     象を国民に植え付けるべく,週刊誌や自らの著書等を利用して,被告学会     に対する虚偽の誹謗中傷を,世間に吹聴し続けた。      本件書籍及び本件連載(1),(2)は,原告の長期間にわたる被告学会に対す     る誹謗中傷への対抗言論であるという特殊性を踏まえる必要がある。    イ 言論の自由(憲法21条1項)の中核にある批判は,その性質上,他人     の名誉を毀損する傾向を持ち,他人の主張に対する批判の矛先が,当該主     張を行う適格性としての人格にまで及ぶことが往々にしてあることから,     言論の自由と名誉の保護の調整が必要となる。      一方,言論による侵害には言論で対抗することが言論の自由の基本原則     であり,言論の応酬,とりわけ,本件のように,論争の当事者間におい     て,長期間にわたり,様々なテーマについて激烈・熾烈な表現による言論     の応酬が繰り広げられている場合には,双方の言論は最大限に保障する必     要があるし,批判が予想される場に自ら進み言論を行う者は,自己の言論     が相手方からの批判に晒されることを甘受しなければならない。    ウ したがって,相手方による名誉毀損的事実の摘示又は論評に対抗する言     論については,表現の自由を一層保障する観点から,憲法21条1項,民     法720条1項,刑法230条の2第1項の法意により,当該表現に至っ     た背景や経緯,前後の文脈及び両者の言論の応酬の期間等,言論の応酬の     実態に照らして,違法性が阻却される表現の幅が認められるべきである。      すなわち,摘示された事実が真実でなかったとしても,当該事実が真実     であると信ずるに足る相当の理由の有無は,緩やかに解すべきである。      また,意見ないし論評の表明についても,互いに「売り言葉に買い言     葉」で,激越・辛辣な表現を用いて言論の応酬がされている場合には,     「公正な論評」として,免責される領域が拡張されるというべきである。 (2)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について    ア 宮本邸盗聴事件に関する原告の言動等      原告は,昭和55年4月に倒産したシーホースの後処理のために,被告     学会に対する恐喝に及び,未遂に終わった5億円の恐喝のための材料とし     て,同年5月,当時毎日新聞記者であった内藤に宮本邸盗聴事件に関する     情報を提供し,同年6月,被告学会による刑事告訴を知るや,赤旗の記者     に接触して,宮本邸盗聴事件に関する虚偽の事実を公表した。原告は,そ     の後も,恐喝事件の捜査牽制のために,「正義の内部告発者」を装って,     週刊誌等のマスコミに登場したり,自ら書籍を発行するなどして,虚実を     織り交ぜて,被告学会攻撃を激しく繰り返した。      原告は,平成3年2月下旬,恐喝事件で懲役3年の実刑判決が確定して     刑務所に収容され,平成5年4月27日の仮釈放後も,恐喝事件は被告学     会の集団偽証による冤罪であるとして,被害者である被告学会を加害者呼     ばわりし,自民党の下野等の政治状況等を利用して,政界,宗教界及びマ     スコミ界を巻き込みながら,マスコミヘの登場や書籍の発行だけでなく,     自民党と連携して,「考える会」名義で被告学会を誹謗中傷するビラを全     国に配布するなど,広範かつ大規模な被告学会攻撃を行った。      原告は,その後も,宮本邸盗聴事件について,盗聴事件訴訟の判決が認     定していない事実や,排斥された事実を付加した話を積極的に喧伝したほ     か,多種多様な形で,被告学会に対する誹誇中傷の言論を行っている。    イ 以上の原告の攻撃的言論は,確定した判決等を無視した身勝手極まりな     いものであって,かかる宮本邸盗聴事件に関する原告の長年にわたる執拗     かつ膨大な攻撃的言論と対比すれば,宮本邸盗聴事件の背景事情をよく知     る亡野崎が,原告と被告学会の言論の応酬の中で,被告学会の立場から,     196頁に及ぶ本件書籍の中でわずか4行を用いて,評価的内容にすぎな     い本件記載@程度の対抗言論を行うことは,何ら違法ではない。  (3)本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)について    ア クルーザー遊覧に関する原告の言論等    (ア)原告は,被告学会から恐喝で告訴された後,週刊誌において実名で被      告学会に対する激しい誹謗中傷を行い,週刊文春昭和55年10月23      日号(乙138)では,日達が,クルーザー遊覧を大いに楽しみ,健康      も相当回復していることが証明されたなどと虚偽の記述をし,さらに,      あたかも被告池田ら被告学会首脳が,日達の健康状態を悪化させる画策      をしていたかの記述をした。    (イ)また,原告は,恐喝事件裁判において,宗門問題に関して被告学会と      日蓮正宗の離間工作をした事実を徹底的に争い,仮釈放後も,金儲け目      的で始めたシーホースの倒産処理のために被告学会を恐喝したとの実態      をごまかし,恐喝事件は冤罪であるとし,宗門問題に関する反被告学会      の行動も,日蓮正宗信徒としての「信仰心,日達に対する忠誠心」から      のものであったなどと強弁した。    イ 原告による,恐喝事件は冤罪であるとの主張を前提とする被告学会に対     する幾多の誹謗中傷に対抗するためには,その大前提である原告の「信仰     心,日達への忠誠心」なるものが,全くのまやかしであることを明らかに     することが,有効かつ適切な反論方法である。      そこで,亡野崎は,本件書籍において,恐喝事件裁判により明らかとな     った事実に基づき,対抗言論として,原告が,信仰も日達も金儲けの道具     とし,高齢で重篤の心臓疾患を抱えていた日達を利用していたことを示す     事実として,クルーザー遊覧について記述したのである。  (4)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載),DないしF(不倫及び麻雀賭    博に関する記載)について    ア 麻雀賭博及び不倫に関する原告の言論等    (ア)原告は,和久田が原告に対し大分訴訟を提起したことについて,平成      9年7月16日付け「慧妙」(乙179)において,同訴訟は被告学会      の謀略であるかの悪宣伝をし,また,同訴訟の控訴審で和久田が逆転敗      訴した直後の平成11年12月16日付け「慧妙」(乙180)におい      ても,同訴訟が被告学会の謀略であるとして,被告学会を誹謗中傷し      た。    (イ)また,原告は,麻雀賭博の被疑事実による逮捕についても,逮捕直後      に発行された週刊新潮昭和61年4月10日号(乙92)等においては      麻雀賭博を自認したが,平成13年4月発行の著書「「月刊ペン」事件      埋もれていた真実」(甲105)においては,麻雀賭博による逮捕が,      被告学会の謀略による事件であるなどと悪宣伝をした。    イ 亡野崎らは,以上の状況を踏まえて,原告が被告学会の謀略であると喧     伝する諸事実について真相を糾明することが,原告の喧伝に対抗するため     に必要であると考え,また,同諸事実に見られる原告の行動特性及び人格     特性を明らかにすることが,恐喝事件が冤罪であるとの主張を前提に「正     義の内部告発者」を装い,幾多のテーマを広げて被告学会に対する攻撃的     言論を繰り返す原告の実態や,内部告発者としての不適格性を明らかに     するために有効かつ適切であるとの観点から,対抗言論として,本件記     載BないしFを記述したものである,  (5)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて    ア 「考える会」のビラに関する原告の言論等    (ア)「考える会」のビラは,平成7年10月から平成8年9月にかけて,      日本全国で,6種類,合計約6000万部も配布された。       これらは,いずれも自民党と対峙する新進党に対する批判を装いなが      ら,その実は,被告学会に対する悪しきイメージを社会に撒き散らそう      とする,事実無根の悪質極まりない中傷ビラであった。    (イ)「考える会」のビラに関して,平成8年暮れから平成9年初めに,      「民主政治を考える会有志一同」名義で,「絶縁宣言」と題する文書      (乙49)が,マスコミ等に送付された。同文書には,「考える会」の      実質的運営者は原告で,代表世話人の内藤は名ばかりであること,原告      が,ビラの原価と売値の差額を懐に入れたこと,印刷業者からのバック      マージンや,ビラの配布代金名目等で,金儲けをしていたとの疑惑が指      摘されていた。    (ウ)原告は,「絶縁宣言」で暴かれた実態をごまかすため,平成9年7月      16日付け「慧妙」(乙179)や,平成10年2月発行の著書「池田      大作日本経済乗っ取りの野望(一)」(甲96の1)において,「絶縁宣言」      が被告学会による謀略であるなどと書き立てた。    イ 本件記載Gは,原告による「考える会」のビラによる誹謗中傷及びこれ     をめぐる原告の言論への対抗言論として,原告が,「考える会」を実質的     に運営し,ビラ発行に絡み闇金を取得した疑惑があるとの意見ないし論評     を表明したものである。また,「考える会」のビラ活動の実態を明らかに     することが,ビラそのもの及び原告の悪宣伝に対する有効かつ適切な反駁     になるとの観点から,「絶縁宣言」の内容を紹介し,これが内藤の会話テ     ープ(乙50の1・2)によって裏付けられている事実を明らかにしたも     のである。  (6)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 墓園事業に絡む裏金取得に関する原告の言動等      原告は,恐喝事件裁判において,シーホースの実質的経営者は被告学会     であり,原告は被告学会から管理を委託されたにすぎない旨主張し,日原     造園からのシーホースに対する多額の資金援助についても,「被告学会の     要請に基づくもの」と主張して,日原から多額の裏金を得た事実を否認し     た。      また,原告は,後に被告学会の富士桜墓園の用地となったボサシタの土     地を大石寺から山下商事名義で払い下げを受け,これを転売して多額の差     益を得た件について,入出獄前後も,自らの著作において,それが被告学     会による「デマ宣伝」であるなどと世間に吹聴している。      原告は,現在もなお,日原と癒着して被告学会の墓園事業に絡み巨額の     裏金を手にした事実を否定し,原告がボサシタの土地の取得転売に関与し     たのは,被告学会の日蓮正宗封じ込め作戦のためであるという虚偽の作り     話をして,被告学会に対する誹謗中傷の材料としている。    イ 本件記載Hは,恐喝事件裁判当時から現在もなお続く,原告の被告学会     に対する虚偽の誹謗中傷への対抗言論として記述されたものである。  (7)したがって,言論の応酬(対抗言論)の法理により,本件各記載の違法性    は阻却される。  [原告の主張]  (1)原告が,被告学会を批判をするに至った原因は,被告学会と日蓮正宗の対立    (宗門問題)に端を発するものであり,原告が,先行的かつ一方的に批判を始    めたものではない。     すなわち,被告学会は,昭和47年以降,日蓮正宗の教義から公然と逸脱    し,日蓮正宗を支配下に置こうとして,様々な画策をし,昭和52年初頭か    ら,日蓮正宗に対する全面攻撃を展開した。日蓮正宗は,同年7月から反撃に    転じ,昭和54年4月,被告池田が被告学会の会長職及び日蓮正宗の法華講総    講頭を辞職することで和解となった。しかし,被告池田は,日達が同年7月に    急逝すると,日顕に取り入り,自身と被告学会の復権工作を成功させ,日達に    協力した原告を,社会的に抹殺しようとした。そのため,原告は,被告学会に    対する内部告発による抵抗を試みるしか生き延びる方法がなくなり,意を決し    て,内部告発に及んだものである,     なお,原告が,昭和52,3年当時に,週刊誌やマスコミを使って被告学会    攻撃をしたことはない。このころ,原告は,被告池田と日達の双方から依頼さ    れ,被告学会と活動家僧侶達の和解を水面下で斡旋していた最中であり,自ら    これを妨げる行動に出るはずがない。  (2)原告の被告学会に対する批判は,「宮本邸電話盗聴事件」及び「月刊ペン誌編    集長隈辺大蔵氏に対する名誉毀損事件」等,大別して17点に及ぶところ,こ    れらの批判は,被告学会が,宗教団体にあるまじき反社会的行為を繰り返し,    その責任のすべてを原告に転嫁したこと等に関するものであって,公共の利害    に関する事実に係り,専ら公益を図る目的でされたものである。そして,その    いずれの事実も,裁判により真実と認められ,被告学会の造反者が真実である    ことを認めていること等から,真実である。  (3)一方,被告学会の原告に対する攻撃は,専ら卑劣な人身攻撃を中心とするも    のであり,「言論の応酬」と呼ぶに値しない。     また,被告学会に対する批判のほとんどは,雑誌編集者,ジャーナリスト    及び数多くの脱会者によるもので,原告が関与したのは全体の100分の1    程度にすぎず,原告と被告学会との間において,今日まで約30年もの間,    激しい言論の応酬がされてきたものではない。     さらに,被告学会は,いくら指摘されても,その反社会的体質を改めず,批    判者に対する言論抑圧を繰り返しており,そのため,原告は被告学会に対する    批判を続けざるを得ないのであって,被告学会に対する批判が続く責任は,原    告ではなく,被告学会にある。  (4)したがって,本件各記載の違法性は,対抗言論の法理により阻却されるも    のではない。 5 争点(4)(本件記載C,Eが原告のプライバシーを侵害するか) [原告の主張]  (1)本件記載Cは,原告の15年以上前の逮捕歴を公表するものであり,原告    のプライバシーを侵害するものである。  (2)また,本件記載Eは,原告と桂子の婚姻及び婚姻前の関係という原告の私生    活を公表し,これに関して,汚らしい表現で虚偽を書き立て,淫らで反道徳的    であるかの如き記述をしており,原告のプライバシーを侵害するものである。 [被告らの主張]  (1)プライバシー侵害による不法行為は,その事実を公表されない法的利益と    これを公表する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合に成立する    (最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48    巻2号149頁)。そして,上記比較衡量に際しては,当該人物の社会的影    響力はもとより,当該事実を公表する意義及び必要性(公益性)と,当該事    実を公表されない利益(私益性)など,諸般の事情を考慮すべきである。  (2)本件書籍等で上記各事実を取り上げた意義及び必要性     前記2[被告らの主張]のとおり,亡野崎らは,数々の虚偽の謀略によっ    て社会を欺いてきた原告の実態や,その根底にある行動特性を明らかにし,    これ以上原告に欺かれないよう社会に警鐘を鳴らすために,本件書籍等を執    筆したものである。そして,本件記載C,Eは,原告の実態及び行動特性を    端的に示すものであり,これらの事実を公表する必要性は極めて高い。  (3)本件記載C,Eを指摘することで原告に特段不利益が生じないこと    ア 原告は,麻雀賭博の被疑事実で逮捕された昭和61年当時,マスコミに     積極的に登場して自ら麻雀賭博の被疑事実を認めるコメントを掲載したほ     か(乙91ないし93),平成13年4月発行の著書「「月刊ペン」事件     埋もれていた真実」(甲105)においても,麻雀賭博の被疑事実で逮捕     されたことを自ら公表していた。      したがって,本件記載Cが公表されたからといって,原告が特段不利益     を被ることはない。    イ 本件記載Eについても,原告は,平成11年12月16日付け「慧妙」     (乙180)に,自ら「元創価学会顧問弁護士」の肩書を付した署名記事     を寄稿し,その中で和久田との大分訴訟についても触れ,「浜中夫妻が昭     和62年に離婚した」事実と,「平成8年4月,原告が浜中住職と別れた     妻桂子と再婚した」事実を,自ら公表している(ただし,実際の浜中夫妻     の離婚時期は「昭和63年8月」,原告の再婚時期は「平成8年2月」で     ある。)。さらに,原告は,和久田の言い分を紹介する形ではあるが,「原     告が浜中の妻と不倫を働き,その妻と再婚した。」と指摘されていること     も自ら明らかにしている。しかも,原告は,上記「「月刊ペン」事件 埋も     れていた真実」において,昭和5 2,3年ころ(当時,原告には妻がお     り,原告と離婚したのは昭和55年である。)の出来事として,当時の自     身の女性関係について「遊んでいる間に,何となくひいきの女性もでき     る。深い仲になった女性も,2人や3人ではない」などと自慢げに記述     し,複数の女性と不倫関係にあったことを自ら公表していた。また,原告     は,不貞訴訟においても,女性関係に不自由していなかったとして,和久     田と不倫関係にあった当時に,「20代のモデルの女性」と「短大生」と     も男女関係にあった旨供述している(乙67)。      このように,原告は,桂子との再婚の経緯や,同時期に複数の女性と不     倫を含む関係を有していたことについて積極的に述べており,本件記載E     が公表されたからといって,原告が特段不利益を被ることはない。  (4)以上の諸般の事情を考慮し,本件記載C,Eが摘示する事実を公表する必    要性(公益性)と,これを公表されない利益(私益性)とを比較衝量したと    き,前者が後者に優越することは明らかである。     したがって,上記各事実を本件書籍等に記述したからといって,原告のプ    ライバシーが侵害されることはない。                     6 争点(5) (被告らの責任) [原告の主張]  (1)本件書籍について(被告和子,被告和美及び被告進一の責任)    亡野崎は,本件書籍の執筆者であり,原告に対し,不法行為に基づく損害   賠償義務を負うところ,被告和子,被告和美及び被告進一は,亡野崎の相続   人である。        (2)本件連載(1),(2)について   ア 被告学会について     被告学会は,本件連載(1), (2)の発行者である。     よって,被告学会は,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償義務を負    う。           イ 被告池田について     被告池田は,被告学会の名誉会長であり,会則上,被告学会の信仰の中心    者,会員の師匠,拠り所であると定められており,会務全般を支配してい    る。また,被告池田は,特に機関紙の記載内容には強い関心と支配力を持っ    ており,その指示又は承認なくして,本件連載(1),(2)の掲載はあり得ない。     被告池田は,常々包括的な表現で,批判者に対する中傷攻撃を認め,奨励    しており,「創価新報」等による原告に対する誹謗中傷記事は,被告池田の指    示,示唆又は少なくとも許容の下に行われている。     また,被告池田は,被告学会全体の統率者又は指導者として,名誉毀損等    の違法行為を容認及び看過してはならない義務を負う。     よって,被告池田は,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償義務を負    う。   ウ 被告秋谷について     被告秋谷は,昭和56年7月から平成18年9月までの間,被告学会の会    長職にあり,規則及び会則上,会員を教化育成し,会を総理・運営する最高    責任者の地位にあり,「創価新報」の発行及び記事の掲載並びにその内容に関    する最高責任者であった。     よって,被告秋谷は,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償義務を負    う。   エ 被告和子,被告和美及び被告進一について     亡野崎は,本件連載(1)の執筆者であり,原告に対し,不法行為に基づく    損害賠償義務を負うところ,被告和子,被告和美及び被告進一は,亡野崎    の相続人である。       [被告らの主張]   原告の主張は争う。 7 争点(6) (原告の損害の有無及び額) [原告の主張]  (1) 本件連載(1),(2)が掲載された「創価新報」は,発行部数が150万部を超    え,盲信的な読者に強い影響力を持ち,原告に対する卑劣で悪質な中傷が連日    のように繰り返され,さらに本件連載(1)の一部が本件書籍にされ,一般紙等で    大々的に広告され,大量に頒布されるという悪質極まりない行為によって,原    告は,名誉及びプライバシーを侵害され,親族,友人及び知人との人間関係を    破壊され,社会生活及び家庭生活上著しい支障を来たされ,生存そのものすら    圧迫されている。     かかる人権蹂躙行為が,多くの特権を認められ,社会的に強大な力を有し,    人を救済し道を説くべき宗教団体である被告学会により行なわれているという    ことの異常性及び重大性が社会に及ぼす悪影響は計り知れない。  (2) 諸般の事情からすれば,原告が被告らによる名誉毀損及びプライバシー侵害    により被った被害額と精神的苦痛を慰謝するために必要な額は,本件書籍(本    件記載@ないしC)については3000万円(うち,プライバシー侵害につい    ては450万円),本件連載(1) (本件記載DないしG)については3300万円    (うち,プライバシー侵害については600万円),本件連載(2)(本件記載H)    については1700万円を下らない。  (3) 原告は,本訴において,一部請求として,本件書籍について600万円,本    件連載(1)について600万円,本件連載(2)について400万円の各損害賠償    を求める。  (4) 各被告らに対する請求額    ア 被告学会,被告池田及び被告秋谷は,原告に対し,本件連載(1), (2)につ     いて,不法行為に基づき,連帯して,以下の合計1000万円の損害賠償     義務を負う。     (ア)本件連載(1)について,600万円    (イ)本件連載(2)について,400万円    イ 亡野崎関係      被告和子,被告和美及び被告信一は,原告に対し,本件書籍及び本件連     載(1)について,不法行為に基づき,法定相続割合に応じて,以下の合計,     被告和子は600万円,被告和美及び被告進一は各300万円の損害賠償     義務を負う。     (ア)本件書籍について,被告和子は300万円,被告和美及び被告進一は       各150万円     (イ)本件連載(1)について,被告和子は300万円,被告和美及び被告進一       は各150万円(各自,共同不法行為に基づき,上記限度で,被告学       会,被告池田及び被告秋谷と連帯して) [被告らの主張]  原告の主張は争う。 8 争点(8)(謝罪文掲載の必要性及び相当性) [原告の主張]   本件書籍及び本件各記事により毀損された原告の名誉を回復するのに適当な処  分として,「創価新報」紙上に,別紙謝罪文を掲載することが,必要かつ相当であ  る。 [被告らの主張]   原告の主張は争う。 第4 争点に対する判断  1 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。  (1)原告と被告学会の関係等    ア 宗門問題及びこれに関する原告の関与の概略等について    (ア)被告学会は,昭和5年に創立され,昭和27年9月8日に設立登記が      され,現在多数の信徒を擁する我が国有数の宗教法人であり,当初は,      日蓮正宗の信徒団体であった。       原告は,昭和34年に被告学会に入会し,昭和39年4月に弁護士登      録をし,昭和43年から被告学会の副理事長を務め,昭和45年,被告      学会の顧問弁護士に就任した。(以上,争いがない。)    (イ)昭和48年ころ,宗門から,被告学会に対する教義をめぐる批判が起      き,両者に軋轢が生じ(いわゆる宗門問題),昭和52年1月の「仏教      史観を語る」と題する被告池田の講演(甲65の2)をきっかけに,両      者の対立が激化した。両者の対立は,被告池田が,日蓮正宗の法主であ      る日達に謝罪するなどしたことで,昭和53年1月には,収束したかに      見えた。       しかし,原告が,同月19日,日達に対し,被告学会の謝罪は上辺だ      けで,宗門に再び報復と弾圧を加えようとしていることや,宗門が被告      学会と戦いをする場合の戦略等を記載した,「ある信者からの手紙」と      題する書面(乙99)を送り,これが反被告学会の活動家僧侶の面前で      朗読されたことにより,宗門内の反被告学会気運が再び高まった。そし      て,原告は,同年3月下旬ころ,「今後の作戦」と題する書面(乙1 0      0)を基に,日達に対し,宗門の戦略として,各寺院で,日蓮正宗信者      を被告学会から奪回し,寺院の「檀徒」として組織すること(檀徒作      り)等を進言するなど,宗門側に立った活動をするようになった。       その後,宗門の各寺院において,活動家僧侶を中心に,檀徒作りが活      発化し,激しい被告学会批判が行われていった。(以上,乙1及び弁論      の全趣旨)          (ウ)被告学会の北條理事長は,宗門との関係修復に焦慮し,原告の申し出      に応じ,原告に,被告学会と宗門の調停役を依頼した。      原告は,調停に当たる一方,昭和53年5月ころ,心臓疾患等に悩む      日達に,聖路加病院内科部長の日野原重明医師(以下(「日野原医師」と      いう。)を紹介するなどして接近した。そして,原告は,同年9月末こ      ろ,日達に対し,「現下の情勢について」と題する書面(乙101)を      基に,檀徒作りが被告学会に大きな痛手を与えていること等を述べた      上,被告学会は同年11月に事態収拾策を決定する方針であるが,宗門      の今後の作戦としては,同月中は檀徒作りを徹底的に行い,被告学会が      然るべき姿勢を示したときは,一応和平に応じざるを得ないが,その後      も檀徒作りは続けること等を進言した。       また。原告は,並行して,マスコミに対して被告学会関連の情報を提      供し,これにより,週刊誌等に,被告学会の内部資料や被告池田を題材      とする,被告学会に批判的な記事が掲載された。なお,原告のマスコミ      に対する被告学会関連の情報提供は,昭和52年7月ころに始まってい      た。       その後,被告学会と宗門の折衝が進み,昭和53年11月7日,静岡      県富士宮市所在の日蓮正宗総本山大石寺への「お詫び登山」という形      で,和解が成立した。(以上,甲70,110,乙1,31の5の1・      3,178及び弁論の全趣旨)    (エ)しかし,活動家僧侶は,その後も被告学会批判や檀徒作りを止めず,      宗門内の被告学会批判も一層強まり,昭和54年3月31日,日蓮正宗      法華講が,被告池田の講頭辞任勧告を決議するに至った。そして,同年      4月22日,被告池田は,日蓮正宗の信徒最高位である総講頭及び被告      学会会長を辞任して名誉会長に就任し,北條が会長に就任した。       その後,日達は,被告学会と話合いをする方針を示したが,活動家僧      侶の被告学会批判は収まらず,同年4月28日創刊の檀徒の機関紙「継      命」誌上で,被告学会批判が展開されるなどした。       そのような中,原告は,同年5月14日,北條会長らと共に,日達か      ら,総講頭に次ぐ大講頭の辞令を受けた。(以上,甲71の1,乙1及      び弁論の全趣旨)    (オ)昭和54年7月22日,日達が死亡し,日顕が後任の法主に就任し      た。       原告は,その後数回,日顕に献言したことがあったが,同年9月25      日ころ,日顕から,信用できないとして斥けられた。       宗門は,同年10月8日,院達を発し,僧侶に対し,被告学会批判及      び檀徒作りの静止を求め,被告学会に対し,お詫び登山の趣旨を同会会      員らに周知徹底するように求めた。(以上,甲76,乙1及び弁論の全      趣旨)    (カ)以上の状況の中で,原告は,昭和54年9月ころ,被告学会の原島嵩      教学部長から,同人が聖教新聞社内でコピーした,被告学会の大量の機      密資料の引渡しを受け,同年10月ころ,その一部の写しを,毎日新聞      記者の内藤や,活動家僧侶の中心人物らに交付した。また,原告は,同      年9月ころ,被告学会に対して供養金返還を求める集団訴訟(特財返還      請求訴訟)の訴状原案や記者会見用の声明文等を作成するなどした。       他方,同年12月,被告学会の機密文書が週刊誌に取り上げられたの      に続き,昭和55年に入ってからも,被告学会の機密資料を元にした記      事が週刊誌等に掲載され,活動家僧侶による檀徒作りや,「継命」等に      よる被告学会批判が,活発に行われた。(以上,甲110,乙1, 3 1      の5の6, 104ないし108,178及び弁論の全趣旨)    (キ)原告は,週刊文春昭和55年11月20日号(甲120の1ないし      3)に,日顕は日達から血脈相承を受けたとは考えられない旨の手記を      公表するなどして,宗門とも対立するようになった。そして,血脈相承      に疑義を唱え,被告学会批判をしていた宗門内の活動家僧侶らは,同年      7月,正信会を結成していたが,原告は,正信会と,同盟関係にあった      (なお,宗門は,昭和57年,同会に属する僧侶の約200名近くを擯      斥処分とした。)。(以上,甲146, 乙181, 証人浜中)    (ク)なお,被告学会は,平成3年11月,日蓮正宗から破門されるに至っ      た(甲72)。    イ 原告の被告学会に対する恐喝等について    (ア)一方,原告は,昭和51年11月から,冷凍食品事業に乗り出し,休      眠会社のシーホースを復活させ,自らその経営に当たったが,シーホー      スグループ(関連会社を含む。)の累積欠損は,昭和53年3月には約      10億円に,昭和55年初めには約28億円に及ぶなど,赤字経営に陥      った。そこで,原告は,遅くとも昭和53年11月以降,被告学会に対      し,シーホースヘの資金援助を求めるようになった。       被告学会は,原告が,活動家僧侶やマスコミを利用して被告学会攻撃      をしているものと考えたが,原告を処分すれば,原告を一層反被告学会      側に追いやり,事態を悪化させると考え,昭和55年1月21日まで      に,シーホースヘの資金援助として,原告及びシーホースグループに対      し,合計9300万円を供与した。さらに,原告は,同月24日,被告      学会に対し,1億円の資金援助を求めた。被告学会は,上記考えから,      富士桜墓園の報酬名目で,同年2月29日までに,原告に対し,合計1      億1000万円を供与し,これをもって最後の資金援助とする旨を告      げ,同年3月末日限りで,原告を顧問弁護士から解任する決定をした。      (以上,乙1及び弁論の全趣旨)     (イ)昭和55年4月には,シーホースグループの累積欠損は,約43億円      に及んでいた。       原告は,同月10日,被告学会の北條会長に電話をし,シーホースの      整理に必要な資金援助を求めた。北條は,同月13日,原告に対し,こ      れ以上の資金援助はできないこと,原告を顧問弁護士から解任したこと      を告げた。これに対し,原告は,シーホースの整理に必要な金員とし      て,3億円の退職金を要求し,北條がこれを断ると,「そうですか。じ      ゃ僕一人で勝手にやれということですか。どうなっても知りません      よ。」などと述べた,また,原告は,同月16日,被告学会の山崎尚見      副会長に対し,被告学会の対応如何によっては,再び反被告学会勢力と      結んで被告学会攻撃をすることをほのめかし,早急な資金援助を求め      た。       被告学会は同月17日午後,原告の暴発を防ぐため,最大1億円程      度の支出もやむなしとして,その場合の条件等の検討を行った。       この間,シーホースは,同月15日,16日に不渡手形を出し,事実      上倒産した。(以上,乙1及び弁論の全趣旨)    (ウ)原告は,以上の経緯で,被告学会に対して資金援助を求めたが,これ      を断られたため,被告学会から金員を喝取しようと企て,昭和55年4      月17日,被告学会の溝口隆三男子部長に対し,シーホースの倒産整理      に要する費用として5億円の支援を要求し,その後も,溝口に対し,      「報酬が非常に安かった,その不足分をまとめて,報酬請求訴訟を学会      に対して起こそうとしている。その訴訟の中で学会の過去の事件を一つ      一つ明らかにすれば,学会にとって困った内容がどんどん出てくる      ぞ。」などと述べて,同旨要求を重ねた。また,原告は,同月21日,      被告学会の福島啓充顧問弁護士に対し,「自分は戦いを始めた。ミサイ      ルを2,3発ぶち込む。2,3か月学会と全面戦争する。」,「恐喝だっ      て何だっていいんだ。刑務所に入ったっていい。」などと述べ,さら      に,同月22日に溝口に対し,金銭支援の決断を強要した。       原告は,以上のように,原告の要求に応じなければ,被告学会に不利      益な事実を公表する旨被告学会を脅迫し,同月28日から同年5月17      日までに,被告学会をして3億円を交付させ,これを喝取した。(以      上,乙1及び弁論の全趣旨)’    (エ)他方,原告は,昭和55年5月18日,内藤から,同人が執筆中の月      刊現代7月号(同年6月5日発売)掲載予定の記事の第1稿を渡され      た。その内容は,原告がリークした情報に基づく宮本邸盗聴事件や,月      刊ペン裁判等の隠された事情等を取り合わせたというものであった。       原告は,溝口に対し,同年5月24日,上記内藤記事のゲラ刷りを渡      し,同月28日には,元聖教新聞社編集局次長の篠塚八州に対し,「私      も文春で5回書く。」などと述べ,シーホースの整理に必要な金額のー      覧メモ(負債合計34億4000万円,3か月以内の要決済金額4億4      500万円,2年以内の同金額5億4000万円)を渡し,被告学会に      届けるように依頼し,原告のメモと言動が,北條らに伝わった。       一方,そのころ,被告学会に対し,週刊誌の記者が上記内藤記事に関      するコメントを求めたり,同記事のゲラ刷りが送付されるなどした。      (以上,乙1及び弁論の全趣旨)    (オ)原告は,以上の状況を利用し,被告学会の妨害によりシーホースの整      理が順調に進まず,さらに5億円ないし10億円程度の金員が必要にな      ったと主張して,被告学会から金員を喝取しようと企て,昭和55年6      月2日から同月4日までの間,被告学会に対し,シーホースの整理に必      要な資金名下に5億円程度の交付を要求し,これに応じなければ,今後      も,宗門問題及び宮本邸盗聴事件等の被告学会に不利益な情報をマスコ      ミに提供し,又は,自らその記事を週刊誌に寄稿し,活動家僧侶や被告      学会内の反対勢力と協力して被告学会攻撃をしかねない旨示して脅迫し      た。       これに対し,被告学会は,同月5日,原告の要求に従わず,原告を恐      喝罪で警視庁に告訴し(同年10月25日受理),同年9月6日,原告      を除名処分とした。(以上,乙1及び弁論の全趣旨)    (カ)原告は,昭和56年1月25日,被告学会に対する恐喝の被疑事実で      逮捕され,同年2月14日,恐喝及び恐喝未遂で起訴されると,同年4      月24日,自ら弁護士登録抹消請求をし,これが受理された(乙123      及び弁論の全趣旨)。    (キ)東京地方裁判所は,昭和60年3月26日,原告を恐喝及び恐喝未遂      の罪で,懲役3年に処する旨の判決(乙1)を言い渡した。また,東京      高等裁判所は,昭和63年12月20日,原告の控訴を棄却し,最高裁      判所は,平成3年1月21 日,原告の上告を棄却した。       そして,原告は,同年2月25日,東京拘置所に収容され,平成5年      4月27日,仮釈放された。(以上,甲53,乙123)  (2)宮本邸盗聴事件等について    ア 昭和44年11月発行の藤原弘達著「創価学会を切る」等の出版に当た     り,被告学会が妨害行為をしたとされる,いわゆる言論出版妨害問題が共     産党によって問題提起され,これをめぐり,被告学会において,昭和45     年2月,共産党による盗聴がされたとして,その対抗手段が必要であると     の意見が出るようになった。      原告は,当時共産党中央委員会委員長の宮本の私邸の電話盗聴を計画     し,被告学会学生部幹部の廣野及び竹岡に指示し,同年5月ころから同年     7月9日ころまでの間,宮本邸の電話線に盗聴器を設置し,電話を盗聴し     た。(以上,甲22,23及び弁論の全趣旨)    イ 昭和55年6月5日発売の月刊現代同年7月号において,宮本邸盗聴事     件の犯人が被告学会であったとする,内藤の記事が掲載されたが,これ     は,原告が内藤にリークした情報に基づくものであった(乙1及び弁論の     全趣旨)。      また,原告は,被告学会が同年6月5日に原告を恐喝罪で告訴したこと     を知ると,同月12日ころ,共産党の機関紙「赤旗」の記者からの接触を     受け,宮本邸盗聴事件は北條の指示によるものであった等,宮本邸盗聴事     件に関する情報をリークし,これを基にした記事が「赤旗」昭和55年6     月19日号に掲載された(甲110,乙1ないし3,31 の2の2及び弁     論の全趣旨)。           そして,原告は,週刊文春同年8月14日号(乙175)に,「創価学     会最高幹部7人の内部告発 いまこそ明かす宮本顕治邸盗聴事件の真相」     と題する匿名記事を寄稿し,宮本邸盗聴事件の犯行グループの指揮者が原     告であったことを公表し,以後,被告池田が宮本邸盗聴事件に関与してい     た旨の主張を始め,その後も,本件書籍が発行された平成14年6月1日     までの間,以下のとおり,宮本邸盗聴事件に関する記事を週刊誌に寄稿し     たり,書籍を発行するなどした(乙123,178及び弁論の全趣旨)。    (ア)昭和56年1月24日に恐喝の被疑事実で逮捕されるまで       週刊ポスト昭和55年9月12日号,週刊新潮同年10月2日号,週      刊ポスト同月3日号,月刊宝石同年11月号,同年10月5日付け東京      スポーツ,同年12月1日発行の著書「盗聴教団―元創価学会顧問弁護      士の証言」(甲107の1ないし5)    (イ)昭和56年2月14日に恐喝及び恐喝未遂で起訴された後       週刊文春昭和56年2月19日号,週刊宝石同年10月17日号,月      刊諸君同年12月号・昭和57年2月号,週刊新潮同年4月8日号,週      刊文春同年6月3日号・同月10日号・同月17日号・同月24日号,      昭和56年12月15日発行の著書「闇の帝王,池田大作をあばく」    (ウ)平成5年4月27日の仮釈放後       週刊新潮平成5年10月21日号,週刊ポスト同月29日号,週刊実      話同月28日号,週刊現代同月30日号,文芸春秋平成6年2月号,同      年3月15日発行の著書「懺悔の告発」,「被害者の会」の機関紙「自由      の砦」に平成12年9月10日から平成14年5月10日までの間に掲      載された「今明かす創価学会「宮本邸盗聴事件のすべて」」と題する1      9回の連載記事       原告は,上記記事等の中で,被告池田が宮本邸盗聴事件に関与してい      たという,証拠(乙10,11,13,ないし16,183,184)に      照らして容易に真実とは認め難い主張をする一方,上記文芸春秋平成6      年2月号では,「私は,学生部幹部をつかって日本共産党宮本顕治氏の      電話に,盗聴器を仕掛けた。」旨著述し,また,上記著書「懺悔の告      発」では,「私が総指揮を執り,実行責任者は広野輝夫氏と竹岡誠治氏      だった。」旨著述していた。(略)  (3)富士桜墓園事業等について    ア 原告は,昭和48年ころ,大石寺の正本堂建設等をめぐり,静岡県富士     宮市の政治関係者と折衝を重ねるうち,同市議会議員で地元有力者の日原     と知り合った。そして,原告は,被告学会の同市関係の政治工作等担当者     として,日原と密接な関係を持ち,日原に対し,同人が経営する日原造園     に被告学会の造園工事を請け負わせるなど,種々の恩恵を与えた(乙1及     び弁論の全趣旨)。    イ 原告は,被告学会の顧問活動を通じ,富士宮市内に,大石寺所有の遊休     地であるボサシタの土地を知り,日原と共に,同土地を利用したゴルフ場     の経営計画を立て,山下商事を設立し,山下商事が,昭和50年6月16     日,大石寺から,ボサシタの土地を,1億6000万円で買い受けた。      ところが,同年8月18日,静岡県知事が,富士宮市を含む県東部地区     でのゴルフ場開発に関する審査を数年間行わないことを発表し,これによ     り,ボサシタの土地のゴルフ場開発は,凍結された。そこで,原告は,ボ     サシタの土地を利用した墓園事業で利益を上げることを計画し,被告学会     に対し,富士桜墓園計画を進言した。(以上,乙1,19,20,22,     115, 132,133,208及び弁論の全趣旨)    ウ 富士桜墓園計画は,原告を中心として立案推進され,昭和50年11月     15日,富士宮市への開発事前協議申請手続が執られた。      原告は,富士桜墓園の建設準備段階で,墓園用地の取得及び地元対策等     に関連し,日原と密接な交渉を持ち,全面的な協力を得た。     日原が経営する日原観光は,同年12月12日,山下商事等から,墓園     予定地として,ボサシタの土地及びその周辺土地を買い受けた(代金合計     7億3000万円,うちボサシタの土地代金は2億1000万円)。(以     上,甲85の1・2,86,乙1,19,21,23及び弁論の全趣旨)    エ 一方,原告は,休眠会社であるシーホースを復活させ,同社による冷凍     食品事業数社(ユアーズグループ)の管理を構想し,昭和51年11月上     旬ころ,日原に対しユアーズグループヘの資金援助を依頼し,日原造園     から,同月15日から昭和52年4月2日までの間,13回にわたり,合     計1億5450万円の融資を受けた。      また,原告は,同月上旬ころ,日原に対し,シーホースへの資金援助を     依頼し,日原から,同月11日から昭和55年2月21日までの間,現金     貸付,債務保証及び融通手形振出等の方法により,38回にわたり,合計     12億7300万円の資金援助を受けた。      日原が上記資金援助等をした時期は,富士桜墓園計画が着々と進行し,     被告学会による用地買収及び工事発注等が問題となる時期であった。その     ため,日原は,かねて同計画に関し原告に全面的に協力し,現に墓園予定     地を所有しているという経緯もあり,総工費が200億円近くに達すると     予想された墓園工事を,日原造園が有利な条件で請け負いたいと考え,同     計画の中心的人物であると思われた原告と一層親密な関係を持つことで,     原告が好意ある取計いをしてくれることを期待し,上記資金援助等をし     た。(以上,甲78の1ないし3,乙1,25の1ないし3及び弁論の全     趣旨)    オ 被告学会は,昭和52年7月27日,日原観光から,上記墓園予定地     を,代金合計13億3900万円で買い受けた。      そして,原告の取計いにより,日原造園が,墓園本体工事の下請(代金     約46億8800万円),造園工事(代金約68億円)及び墓所工事(代     金約58億7900万円)を請け負うこととなり,また,被告学会と日原     の間で,植木売買及び管理契約(代金7億9600万円)も締結された。      その後,上記エのとおり,日原から,シーホースに対する資金援助が続     けられたものであるが,上記12億7300万円の資金援助の中には,     「山崎先生に対する手数料」(乙112の1),すなわち,富士桜墓園建設     工事受注のリベートである5億4000万円が含まれており,原告は,そ     のうち4億5000万円を受領した。      上記工事は,昭和55年10月4日に完成した。(以上,甲58の5,     78の1ないし3,乙1,19,23,24の1・2,25の1ないし     3,112の1,113及び弁論の全趣旨)  (4)クルーザー遊覧等について    ア 原告は,昭和54年6月当時シーホースが巨額の負債を抱えていた一     方,富士桜墓園に絡むリベート等で利益を得ていたことから,再度,葉山     の土地を利用した墓園事業を計画した。      そして,原告は,葉山の墓園事業でも,富士桜墓園の建設工事資金を日     原に融資した弘信商事と日原から資金援助を得るべく,原告と日達の親密     さを示すため,日達を招いたクルーザー遊覧を計画し,そこに,弘信商事     の大谷常務と,日原の関係者である峯岸を同行させることにした。(以     上,甲110,乙31の3の1,135, 証人峯岸,証人浜中及び弁論の     全趣旨)    イ 原告は,昭和54年6月21日,日達(同月19日に北海道長万部での     葬儀等から戻ってきていた。),大谷常務及び富士神苑(日蓮正宗の墓地関     係会社)の須藤社長らを,葉山の墓園用地に案内し,「一基当たり,10     0万円位の高級な墓園を作る。」などと話していた。その後,原告らは,     葉山マリーナに向かい,原告,日達,須藤,峯岸及び数名のクルーが,原     告の友人である西崎義展が所有するクルーザーに乗船し,熱海に向かっ     た。       当日,相模湾は,特に悪天候ではなかったが,外海に近く波が高かった     こともあり,出港後しばらくして,日達が,いわゆる船酔いの症状を示し     た。そこで,須藤が日達と相談した結果,熱海行きは中止とし,近くの港     につけることとした。出港後1時間弱で,クルーザーが江の島に着くと,     日達は下船し,須藤が運転する車に乗っていった。       なお,日達は,乗船前,顔色が悪かったが,体調が悪いと述べたわけで     はなかった。(以上,乙135ないし137,証人峯岸及び弁論の全趣     旨)    ウ 昭和54年7月22日,日達が死亡した(当時77歳)。     その死因は,宗門の公式発表によれば,心筋梗塞とされ,日野原医師の     診断によれば,腹部解離性大動脈瘤による心不全とされた。(以上,甲9     8の1,乙28,123,139)      日野原医師の診断により日達の死因とされた腹部解離性大動脈瘤は,急     激な血圧の変動等を与えるストレス等が,特に脆くなった血管に悪影響を     与え得るものである(証人木村及び弁論の全趣旨)。    エ なお,日達は,昭和53年3月ころから,体調不良を訴え,同年4月後     半ころからは,床に伏すようになっていた。そのころ,原告が,日達に日     野原医師を紹介したところ,往診した日野原医師は,「心臓が相当悪くな     っています。原因は,動脈硬化で,いつ発作が起きてもおかしくない状態     です。また,動脈が破れるおそれもあります。すぐ入院して,徹底的な検     査と治療を行う必要があります。心臓病といってもおそれることはない。     きちんと治療し,節制すれば,元気で活動しながら長生きでもできま     す。」と述べ,原告もこれを把握していた。(以上,乙139)    オ 株式会社イチビル(弘信商事の関係会社)の,株式会社東海総業(シー     ホースの金融部門)に対する与信枠は,当初1億3000万円だったの     が,昭和54年7月15日には,4億円に増額された(乙26,27,2     19)。    カ また,原告は,日達の本葬の際,行列の先頭を,先端に錫の付いた金棒     をシャンシャンと鳴らして,額の汗を拭きながら,いかにも辛そうに歩い     ていたが,その翌日,浜中に対し,「なに,大したことじゃないよ。銀行     関係者を僕が葬式に呼んでおいたからね。あの連中の前でシャン,シャ     ン,シャン,シャンという行列に僕が池田さんと並んで歩んでいるのを見     たら,あいつらはいくらでも金を貸してくれるんだよ,だからあのシャ     ン,シャンという金棒の先から札が降ってくると思えば,どうってことな     いさ。あれぐらい歩くことなんか。」と述べていた(甲110,乙31の     3の3,証人浜中)。  (5)原告と和久田及び桂子との不倫関係等について      ア 原告は,昭和56年2月14日に恐喝及び恐喝未遂で起訴され,同年7     月6日に保釈された後,定職に就かず,執筆活動や講演活動等で収入を得     る一方,同年暮れころから,恐喝事件の裁判費用や生活費を,正信会から     のカンパに頼っていた。原告は,昭和58年5月ころ以降は,正信会と断     絶し,執筆料や講演料等の収入も途絶えたため,大分県竹田市で伝法寺の     住職を務める浜中ら,個人的に親しい僧侶らからのカンパに頼らざるを得     なくなっていた。      原告は,昭和49年ころ,宗門内の反宗門・被告学会団体である妙信講     への対応の被告学会側担当者として,宗門側担当者の浜中と知り合い親し     くなり,その後正信会に属した浜中とは,反宗門・被告学会の同志の関係     にあった。(以上,甲34,110,146,乙31の4の2,52,5     5,69,71,123,181,198,証人浜中及び弁論の全趣旨)    イ 和久田との不倫関係等      和久田は,正信会の信者で,大分県竹田市内のスナックを経営していた     が,原告は,昭和58年1月ころ,浜中から,和久田を紹介された。     原告は,同年4月ころ,和久田が上京した際,和久田に夫がいることを     知りながら,和久田と男女関係に及び,その後,恐喝事件の実刑確定によ     り東京拘置所に収容される平成3年初めころまで,和久田との不倫関係を     継続した(なお,原告自身は,昭和55年4月に離婚している。)。      そして,原告は,その間,和久田に対し,「お金は必ず返すからね。そ     のぐらいはいずれすぐ作れるよ。」,「老後は2人で楽しく暮らそうね。」,     「今度まとまった金が入る。」,「2倍,3倍にして返す。」などと述べなが     ら,和久田に金を無心し,和久田が原告との関係を絶とうとすると,「こ     れまで2人で丹精こめて育てた木にやっと花が咲こうとしているのに,自     分の手で切り倒そうとするのか。」,「僕を信じることだ。「走れメロス」を     読め。」などと述べて関係の継続を求め,さらに金を無心するなどした。     そして,原告は,和久田から,昭和58年後半から昭和61年初めころま     で,毎月,20万円から70万円,少なくとも合計2000万円のカンパ     を受けた。      また,原告は,昭和60年3月26日に,恐喝事件の第1審で懲役3年     の実刑判決を受けたが,その保釈保証金の積み増しが必要であるとして,     和久田から,500万円を借りるなどした。(以上,甲35,42,5     3,乙1,55,58,68ないし70及び弁論の全趣旨)    ウ 桂子との不倫関係等      原告の手帳には,昭和58年暮れころから,「ケイ子・熊本」,「Ki 羽     田東急ホテル」等の記載があった。      一方,浜中の妻の桂子は,昭和59年ころから,不自然な言い訳で伝法     寺を留守にすることが多くなり,浜中との夫婦関係を拒否するようになっ     た。また,桂子は,昭和62年春ころ,免許証入れの中に,原告と桂子の     部分だけを切り抜いた写真を入れていた。さらに,桂子は,昭和61年1     月10日に12万円,昭和62年10月12日から同年11月17日まで     の間に合計35万円を,浜中に無断で,伝法寺の会計から原告に送金して     いた。      浜中は,昭和63年7月ころ,桂子から離婚を求められ,桂子と原告と     の不倫関係を疑い,原告に電話をして問うと,原告は,「和道さん,あん     た,そんないい加減なことを言うと,僕は名誉毀損であんたを訴えるから     ね。」,「同志を疑ったらおしまいですよ。和道さんと僕の仲じゃないです     か。僕がそんなことをすると思いますか。」などと述べた。      結局,浜中と桂子は,同年8月,協議離婚した。(以上,甲35,13     3,乙53,54,56,57,172,181,証人浜中)    エ 昭和59年暮れころ,原告が熊本で桂子と密会していると直感した和久     田が熊本空港に向かうと,そこに原告が現れた。和久田は,逃げる原告の     後を追い,電車で熊本駅から八代駅に行き,駅前の喫茶店において、原告     に桂子との関係を追及したところ,原告は,「俺が友達の女房を寝取るよ     うな泥棒猫みたいなことをすると思うか。」などと述べた。その後,和久     田が,球麿川の土手で,原告と桂子の関係を浜中に話す旨述べると,原告     は,「友達の奥さんとできることは,世間でもよくあることだ。」,「僕と君     と奥さんの3人でよく話し合おう。住職には絶対言うな。」と述べた。(以     上,甲35,乙171)    オ 原告は,平成5年4月27日の仮釈放後,和久田との交際を断ち,和久     田の貸金返還請求に応じず,遅くとも同年9月ころには桂子宅に頻繁に出     入りするようになり,平成8年2月,桂子と婚姻した(甲35,128,     129,乙65,72ないし75,77ないし80,97,98)。    カ その後,和久田らと原告の間で,以下の訴訟が係属した。    (ア)和久田の原告に対する貸金返還請求訴訟(大分訴訟)       和久田が,原告に対し,昭和60年8月に1000万円を貸し付けた      などとして,その貸金残金550万円の返還を求めた事案である。       大分地方裁判所(同庁平成8年(ワ)第751号)においては,和久田の      上申書(甲35)等を根拠に,平成10年6月3日,和久田の請求を認      容する旨の判決が言い渡された(甲33)。和久田の上申書(甲35)      には,原告が昭和58年ころに知り合った麻雀店経営者の竹本志郎(以      下「竹本」という。)は,昭和60年ころ,銀座のクラブ等の女性への      金融を計画し,その資金を求めており,また,金子信幸(以下「金子」      という。)に対する賭け麻雀の勝ち分を回収する必要があり,他方,和      久田も,資金を有利に運用したいと考えていたこと,そこで,原告は,      和久田に対し,1000万円の都合を求め,「1000万円用意できな      かったら縁を切る。後釜を探さなくてはならない。」旨述べたこと,桂      子を恋敵と考えていた和久田は,昭和60年8月,最終的に,1000      万円を拠出したこと等が記載されていた。       しかし,福岡高等裁判所(同庁平成10年(ネ)第561号)は,竹本の      証人尋問を行った上,平成11年11月18日,原判決を取り消し,和      久田の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。同裁判所は,1000万      円の貸金請求については,竹本を借主とし,金子を連帯保証人とする公      正証書(甲36の5)があること等から,借主は原告ではなく竹本であ      り(竹本は和久田から交付を受けた1000万円のうち,800万円      を金子に転貸することとしたが,実際には,麻雀の貸金と相殺するなど      して,金子には260万円を交付した。),その余の貸金請求は,和久田      から原告にカンパとして贈与されたものである旨認定した(甲42)。       最高裁判所(同庁平成12年(オ)第250号等)は,平成12年6月9      日,和久田の上告棄却・不受理を決定した(甲44)。    (イ)和久田の原告及び竹本に対する損害賠償請求訴訟       和久田が,大分訴訟において竹本が偽証し,原告がこれを指示した旨      主張し,原告及び竹本に対し,不法行為に基づき,連帯して,590万      円の損害賠償を求めた事案である。        宇都宮地方裁判所(同庁平成13年(ワ)第169号)は,平成15年5      月29日,和久田の請求を棄却し(甲45),東京高等裁判所(同庁平      成15年(ネ)第3413号)は,平成16年5月11日,和久田の控訴を      棄却し(甲51),最高裁判所(同庁平成16年(オ)第1261号等)      は,同年11月18日,和久田の上告棄却・不受理を決定した(甲5      2)。    (ウ)和久田の原告に対する貸金返還請求訴訟       和久田が,原告に対し,昭和60年3月25日に貸し付けた505万      円の貸金残金308万円の返還を求めた事案である。       横浜地方裁判所(同庁平成15年(ワ)第3973号)は,平成16年1      0月27日,上記505万円のうち200万円は原告が弁済し,うち3      00万円は弁済が免除され,うち5万円は原告に対するカンパの趣旨で      交付されたものである旨認定して,和久田の請求を棄却し(甲53),      東京高等裁判所(同庁平成16年(ネ)第5923号)は,平成17年7月      14日,和久田の控訴を棄却した(甲54)。    (エ)和久田の夫の原告に対する損害賠償請求訴訟(不貞訴訟)       和久田の夫が,原告と和久田の不倫関係により精神的苦痛を被ったと      主張して,原告に対し,500万円の損害賠償を求めた事案である。     大分地方裁判所(同庁平成12年(ワ)第174号)は,平成13年10     月26日,原告と和久田の不倫関係を認定し,300万円の損害を認め     て一部認容し(乙68),福岡高等裁判所(同庁平成13年(ネ)第111     3号等)は,平成14年9月19日,原告の控訴及び和久田の夫の附帯     控訴をいずれも棄却し,た(乙70)。      原告は,同訴訟の本人尋問において,和久田と不倫関係にあった当     時,20代のモデルや,短大生と交際していたことを認めていた(乙6     7)。  (6)麻雀賭博等について    ア 原告は,昭和56年7月6日に保釈された後,定職に就かず,同年暮れ     ころから,正信会やその僧侶及び信者並びに和久田らからカンパを受け,     生活費や裁判費用を賄っていた。原告は,賭け麻雀に明け暮れていたが,     原告が常連客として麻雀をしていた店は,一般の学生や会社員向けの店で     はなく,マンションやビルの一室で営業する「秘密麻雀クラブ」といわれ     る類の店で,そこで行われていた賭け麻雀のレートも,1000点300     円から1000円などと高レートで,警察の摘発対象となるものであっ     た。(以上,甲35,110,乙31の4の2,58,64,181,2     10の1・2,証人浜中及び弁論の全趣旨)    イ 原告は,昭和61年3月29日,麻雀賭博の被疑事実で,警視庁に通常     逮捕されたが,翌日釈放され,その後,起訴はされなかった。      原告が逮捕されたことは,同日付け朝日新聞夕刊(乙89)や,FOC     US同年4月11日号(甲149, 乙90)等で報道された。      また,原告は,同年4月発行の週刊誌(週刊文春同月17日号,週刊新     潮同月10日号,週刊朝日同月18日号)において,麻雀賭博をして逮捕     されたこと自体は自認していた。(以上,甲29,30,乙91ないし9     3)  (7)原告と「考える会」の活動等について    ア 原告と日顕及び自民党との連携等      原告は,平成3年2月25日以降,恐喝罪等による懲役刑に服していた     が,平成5年4月27日,仮釈放された。      そして,原告は,日顕に対し,同年5月ころ,被告学会攻撃を進言する     書簡(乙32)を送り,また,同年7月1日ころ,原告が週刊文春昭和5     5年11月20日号(甲120の1ないし3)において公表した,日顕の     血脈相承を否定する旨の手記を訂正する用意があるが,そのためには,日     顕の密接な支援が必要であるなどと記した書簡(乙33)を送った。      一方,自民党は,平成5年7月18日の衆議院議員選挙において,獲得     議席数が過半数を割って野党となり,細川連立政権が発足した。原告は,     かかる政治状況を利用した被告学会攻撃を計画し,自民党と接触し,被告     学会に対する共闘関係を結んだ。      そして,原告は,日顕に対し,同年10月11日ころ,原告と自民党が     連携しながら被告学会の破壊工作を進めているなどと記した書簡(乙3     4)を送り,また,同年11月中下旬ころ,「自民党は,党として,党の     会計から費用を出して,我々を支援するといっています。今回は,学会を     倒すか武装解除まで,攻撃をゆるめないということで,固い約束をとりつ     けながら進めています。」などと記した書簡(乙35)を送り,さらに,     平成6年9月下旬ないし10月上旬ころ,自民党幹部と打ち合わせをした     結果,自民党首脳も,被告学会を徹底して叩かない限り,次の選挙での勝     利が厳しいとの指摘を素直に受け入れているなどと記した書簡(乙36)     を送った。      原告は,同年12月,宗門の信徒に復帰し,平成7年2月16日付け日     蓮正宗の機関紙「慧妙」(甲117の3)に,上記血脈相承を否定する旨     の手記が大きな誤りであった旨の記事を寄稿した。      この間,自民党は,平成6年6月に与党に復帰したが,平成7年7月2     3日の参議院議員選挙では,比例代表区の得票数が新進党を下回り,野党     転落の危機感を強めていた。(以上,乙30,32ないし36,123,     182,198,211,212及び弁論の全趣旨)    イ 平成6年10月15日,「考える会」が発足し,平成7年10月ころか     ら平成8年10月ころまでにかけて,以下の見出しを掲げ,被告学会,被     告池田及び新進党等を誹謗中傷する内容の「考える会」のビラが,日本全     国に配布された(乙37ないし42)。    (ア)第1号ビラ(平成7年10月発行)(乙37)       「オウムより恐ろしい!!新進党の皮をかぶった創価学会」    (イ)第2号ビラ(平成7年10月発行)(乙38)       「―東村山市―朝木明代市議怪死の経緯と創価学会の関わり!?」    (ウ)第3号ビラ(平成7年12月発行)(乙39)     「オウムよりこわい!新進党を支配する創価学会の不気味な野望」    (エ)第4号ビラ(平成8年4月発行)(乙40)       「オウムより恐ろしい!新進党=創価学会による政教−致の独裁政権       構想」    (オ)第5号ビラ(平成8年9月ないし10月発行)(乙41)       「オウム麻原被告も顔負けなんと!!強姦で訴えられた新進党陰の支       配者・池田大作氏」    (カ)第6号ビラ(平成8年9月ないし10月発行)(乙42)       「オウムより狡猾 新進党=創価学会の目くらましにだまされるな」    ウ 「考える会」は,対外的には内藤が代表世話人とされていたが,内藤     は,被告学会批判活動に賛同して代表名義を貸していただけで,「考える     会」の実質的な運営者は原告であった。      原告は,佐貫に対し,「考える会」の事務方を依頼し,その事務所を,     「被害者の会」の事務所内に設置するように依頼した。      「被害者の会」は,被告学会の脱会者及び関係者により,平成6年12     月に結成された団体であり,佐貫が事務局員として,会の運営や,機関     紙「自由の砦」の編集及び発行事務等を担当していた。また,同会のメン     バー数人が,「考える会」の事務を手伝うこともあった。(以上,甲11     1,乙50の1・2,223の1・2,証人佐貫,原告本人及び弁論の全     趣旨)    エ 原告は,調査及び資料収集を佐貫とした上,ビラ原稿を執筆し,印刷業     者をホクシンカンテックに選定し,主なビラの売却先である自民党,「被     害者の会」及び妙観講(日蓮正宗の信徒団体)に対し,ビラの配布を依頼     した(乙50の1・2,123,223の1・2,224,原告本人及び     弁論の全趣旨)。        オ 「考える会」のビラは,日本全国に約5500万部ないし6000万部     配布され,妙観講は,うち400万部を配布した。また,少なくともビラ     の半数は自民党が購入し,自民党は,所属の国会議員,都道府県議会議     員,政令指定都市議会議員及び友好団体に対してビラの購入を啓蒙し,平     成7年内だけで,約1000万部を購入した。      「考える会」のビラは,1枚2円20銭ないし30銭で作成され,一般     的に,売値は1枚2円50銭,後に1枚3円とされ,代金は振込送金又は     現金支払の方法で支払われ,現金支払の場合,会計担当の佐貫が金額を記     載して作成した領収証を相手方に交付していた。また,ビラの印刷業者で     あるホクシンカンテックに対する印刷代は,「考える会」名義で振込送金     されていた。      一方,自民党との関係では,売値は1枚10円とされ,代金はすべて現     金で支払われ,毎回,原告が,1人で又は佐貫若しくはホクシンカンテッ     クの大越社長と共に自民党本部において,少なくとも6回以上,自民党     総務局長の白川代議士から現金を受領していたが(原告は,1度に300     0万円を受領したことがあった。),その際,領収証は作成されなかった。     佐貫は,「考える会」の経理を担当し,収支に関するメモを控えるのみ     で,総勘定元帳や現金出納帳は作成していなかった。      なお,原告は,大越社長から,300万円のリベートを受領したことも     あった。(以上,甲116,乙43ないし48,150,222,223     の1・2,228,証人佐貫,原告本人及び弁論の全趣旨)    カ 平成8年10月20日の衆議院議員選挙において,新進党が156議席     を獲得する一方,自民党は239議席を獲得し,政作与党の座を維持した     (公知の事実)。    キ 佐貫は,「考える会」の第6号ビラが発行された後,「考える会」の平成     7年10月から平成8年12月までの売上諸経費明細書(甲116)を,     一般的な売値を基に作成し,同月30日,これを内藤に送付した。      上記明細書によれば,値引前の売上は1億4873万4502円,同仕     入は1億3945万8204円,値引後の総収益は963万9067円,     経費は960万4468円で,残金は3万4599円とされている。      また,佐貫は,平成9年1月10日,内藤の訴訟代理人である加毛修弁     護士に,「考える会」の事務処理−切が終了したことを報告した。(以上,     甲114ないし116,証人佐貫)    ク 平成8年暮れから平成9年初めにかけて,国会議員及びマスコミ関係者     に対し,「民主政治を考える会有志一同」名義で,「絶縁宣言」と題する書     面(乙49)が配布された。      「絶縁宣言」には,「原告が実質的に運営していた「考える会」が,合     計6回,約1億枚発行したビラにつき,1枚の原価は1円50銭で,売値     は3円であるが,原告は,差益を会に報告しておらず,特に,自民党に売     却されたビラについては,自民党総務局長白川勝彦から,販売代金及び配     布代金として,数億円を現金で受領していたが,そこから原告がいくら抜     こうが,誰も分からない仕組みになっていた。」旨の記載がされていた。    ケ 平成9年2月22日,浜中が内藤に電話をした際,内藤は(ア)「考える     会」には代表名義を貸しただけであること,(イ)内藤が,原告に対し,ビラ     に関して,「俺の名前でこんな文書,俺いつ出していいっちゅった。」と叱     りつけたことがあったこと,(ウ)原告が,自民党からのビラ代金から何億円     かをせしめて,その分配をめぐり何人かと喧嘩していること,(エ)内藤が,     白川代議士に対し,原告に渡した金額を追及したところ,「表にできない     のが裏金だから。」と言われ,「もう勝手にしろ,バカヤロー。」と述べた     こと,等を語っていた(乙50の1・2)。      浜中は,平成11年11月13日,上記内藤との会話を録音したテープ     を,マスコミ関係者に送付して,公表した(乙51)。      なお,内藤は,同年7月8日に死亡していた(弁論の全趣旨)。  (8)本件書籍の発行及び本件連載(1),(2)の掲載に至る経緯等    ア 原告による被告学会に対する批判的言論等    (ア)原告は,宗門問題の渦中,昭和52年7月ころから,マスコミに対      し,被告学会関連の情報を提供するようになり,昭和53年1月ころか      ら,活動家僧侶に対し,被告学会の批判活動を扇動するようになった。       また,原告は,昭和54年10月ころ,被告学会の大量の機密資料      を,内藤や活動家僧侶に交付し,上記機密資料を基にした記事が週刊誌      等に掲載されると,今後も被告学会に不利益な情報をマスコミに提供す      るなどと述べて,被告学会を恐喝するに至った。(以上,前記1(1))    (イ)原告は,昭和55年6月5日に被告学会から恐喝罪で告訴されてから      平成3年2月25日に東京拘置所に収容されるまでの間,週刊誌等に,      少なくとも90回,被告学会及び被告池田等に批判的な手記等を寄稿す      るなどした(乙123,178及び弁論の全趣旨)。    (ウ)原告は,平成5年4月27日に仮釈放されると,同年10月以降,被      告学会批判を再開し,週刊誌等に少なくとも約60回,日蓮正宗の機関      紙「慧妙」に少なくとも約100回,その他「被害者の会」の機関紙      「自由の砦」等に,被告学会及び被告池田らに批判的な手記等を寄稿す      るなどした。また,原告は,本件連載(1)が開始された平成14年1月1      6日までに被告学会及び被告池田らに批判的な書籍を少なくとも10冊      発行し,本件連載(2)が開始された平成16年9月15日までに同旨の書      籍を3冊発行し,その後も被告学会及び被告池田らの批判を続けた。そ      の内容は,(a)被告学会が政教分離に違反し,日本の支配を狙っていると      するもの,(b)被告学会が日蓮正宗を支配するために画策してきたとする      もの,(c)被告学会が組織的に様々な反社会的事件を起こしてきたとする      もの, (d)被告学会がオウム真理教と同様の犯罪集団であるかの印象を与      えようとするもの, (e)被告池田がレイプ犯であるとするものなど,極め      て多岐にわたっていた。(以上,甲93の1ないし19,96の1ない      し4,105,106,212,乙178ないし180,210の1・      2及び弁論の全趣旨)         その他,原告は,平成7年10月ころから平成8年10月ころまでに      かけて発行された「考える会」のビラ原稿を執筆した(前記(7)エ)。       さらに,原告は,本人尋問においても,今後も被告学会批判を続けて      いく旨供述した(原告本人)。          (エ)原告は,上記のとおり被告学会に対する批判的言論を繰り返す中で,      以下の著述をしていた。      a 原告は,被告池田が宮本邸盗聴事件に関与していたという,証拠       (乙10,11,13ないし16,183,184)に照らして容易       に真実とは認め難い主張をしていた(弁論の全趣旨)。      b 原告は,クルーザー遊覧について,週刊文春昭和55年10月23       日号(乙138)において,「五十三年春,日達上人は,創価学会と       のトラブルによる過労から,持病の心臓病が悪化して苦しんでおられ       た。池田氏はそれを承知の上で,日達上人に中国訪問旅行に同行する       よう強要し続けた。」,「それ以前から,池田氏は上人の体力の衰えを       よく知っていて,北条浩氏や辻武寿氏らに対しても,「猊下とどれだ       け話した?三十分?だめだ,どれだけ長く食い下るかが勝負だ。オレ       は少なくとも二時間はやる」と檄を飛ばしていた。そばについていた       僧侶によると,日達上人は池田氏と話した後は,疲労のため,いつも       グッタリされていたということである。」,「葉山のゴルフ場を見学し       (中略),船で江の島にわたり,それから熱海へまわられた。大いに       楽しまれたようであり,また,一年間の治療と節制で,健康も相当回       復されていることも証明された。」などと著述していた。      c 原告は,和久田が大分訴訟を提起した後,平成9年7月16日付け       「慧妙」(乙179)において,「昨年の総選挙終了直後から,創価学       会の,私に対する個人攻撃がエスカレートしてきました。」,「突然,       今回の訴訟(中略)という手段に出られ,創価学会サイドとの連係し       た動きが始まったのです。」などと著述していた。また,大分訴訟の       控訴審で和久田の請求が棄却された後,原告は,平成11年12月1       6日付け「慧妙」(乙180)において,「浜中夫妻が昭和62(ママ)年に離       婚し」,「平成8年4月(ママ),原告が浜中住職と別れた妻桂子と再婚した」       という外形的事実を認めつつ,「創価学会の手先となった浜中和道氏       は,私を誣告(ぶこく)し,さらに中傷のために信者の女性と共謀し       て訴訟を起こしたのです。しかし,告訴ならびに訴訟での敗訴で,そ       の企ては失敗し,“邪悪な陰謀”の全貌が明らかになりました。」など       と著述していた。      d 原告は,麻雀による賭博の被疑事実で逮捕されたことについて,平       成13年4月30日発行の著書「「月刊ペン事件」埋もれていた真       実」(甲105)において,「ついに,何でもないマージャン遊びを,    公明党議員と会員の作り話で“賭博罪”にデッチ上げられ,現行犯       でもないのに,二ヵ月近くたって逮捕状が出されて逮捕されてしまっ       た。」などと著述していた。      e 原告は,「絶縁宣言」(乙49)について,平成9年7月16曰付け       「慧妙」(乙179)において,「昨年の総選挙終了直後から,創価学       会の,私に対する個人攻撃がエスカレートしてきました。」,「まず       「民主政治を考える会」のパンフレットに関して,私が自民党から大       金をもらったとか,印刷屋からリベートをもらったとか,何の根拠も       ないデマを書き散らした怪文書が出され,それを「中外日報」が全面       引用して報道しました。」,「そもそも,何の根拠もない怪文書を流       し,それを取り上げて,あたかも事実であるかのようなデマ宣言をす       るのは,創価学会お得意の謀略戦術です。」などと著述し,また,平       成10年2月発行の著書「池田大作日本経済乗っ取りの野望(一)」(甲       96の1)において,「ごていねいに,自作自演の怪文書つきであ       る。」などと著述していた。      f 原告は,ボサシタの土地について,昭和56年12月15日発行の       著書「闇の帝王,池田大作をあばく」において,「学会側が(中略)       「山崎が土地ころがしをやって3億円もうけた」などとデマ宣言をや       っている」などと著述していた(弁論の全趣旨)。    イ 被告学会側による原告に対する批判的言論等    (ア)一方,被告学会側は,原告による被告学会批判に対し,亡野崎が,昭      和56年1月,「謀略 山崎弁護士の黒い手口」と題する書籍(甲205      の1ないし4)を発行し,サンデー毎日に,昭和57年11月から昭和      58年2月まで,「虚構の崩壊」と題する連載記事(全16回)を寄稿      し,これに加筆して,同年3月,「創価学会の真実 崩壊した山崎,隈部      らの策略」と題する書籍(乙18)を発行した。    (イ)被告学会が発行する平成14年1月16日付け「創価新報」から,亡      野崎の執筆により,本件連載(1)(全16回)が掲載された。亡野崎は,      本件連載(1)のうち,第1回から第8回連載分を抜粋・加筆し,本件書籍      を執筆し,平成14年6月1日,これが発行された(甲1,2の2,3      の2,4の2,5の2,6の2,7の3,乙123)。       本件連載(1)は,亡野崎が,木村からの依頼を受け,木村との打ち合わ      せを基に執筆したものであるが,木村は,下書や加筆をしたこともあっ      た(乙123)。        (ウ)平成16年9月15日付け「創価新報」から,被告学会の文芸部青年      会議の執筆により,本件連載(2) (全9回)。が掲載された(甲14の2,      15の2,乙123)。       本件連載(2)は,文芸部青年会議が企画して,「創価新報」へ掲載を依      頼したものであり,木村が,「創価新報」側の担当者として,記事内容      の検討や資料収集等に全面的に協力した(乙123)。    (エ)また,原告と被告学会らとの間に,本訴と同種の訴訟事件が複数係属      していることからすると(横浜地方裁判所小田原支部平成14年(ワ)第6      09号損害賠償等請求事件等),被告学会関係者が,本件書籍の発行及      び本件連載(1),(2)の掲載までに,原告を批判する内容の書籍や記事等を      複数発行ないし掲載してきたことが推認され,また,原告を批判する内      容の「現代宗教研究」(甲204)や,「中外日報」(甲37の1ないし      20,38,乙29の1ないし11)についても,被告学会関係者が関      与したことが窺われる。このように,原告と被告学会との間において      は,長期間にわたり,様々なテーマについて激烈・熾烈な表現による言      論の応酬が繰り広げられてきた(弁論の全趣旨)。    (オ)なお,平成15年5月7日付け「創価新報」から,亡野崎の執筆によ      り,「断末魔迎えた山崎正友 無惨なり!<デマとペテンの詐欺人生>」      と題する連載記事が,同年9月17日まで,少なくとも10回掲載され      た(甲8の2,9の2,10の2,11の2,12の2,13の2)。       また,平成14年7月3日付け「創価新報」7面(甲7の2)には,      「山崎正友のウソの片棒担いできた宗門機関紙「慧妙」の責任は重      大!」との見出し記事が,平成16年10月6日付け「創価新報」9面      (甲14の2)には,「創価学会報道にみる情報操作2 第1部言論の      詐欺師・山崎正友」との見出し記事等が掲載された。 2 争点(1)(本件各記載が原告の名誉を毀損するか)について  (1)ある表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうか    は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきである(最高裁昭    和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号    1059頁)。     そして,当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に    関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは,    当該表現は,上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相    当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民    集51巻8号3804頁)。また,上記のような証拠等による証明になじま    ない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議などは,意見ないし論評    の表明に属するというべきである(最高裁平成15年(受)第1793号,第1    794号同16年7月15第一小法廷判決・民集58巻5号1615    頁)。     以上を本件各記載についてみると,以下のとおりである。  (2)本件記載@(宮本邸盗聴事件に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載@は,「原告は,昭和45年7月,弁護士としての特異な能力     及び才能を被告学会内に誇示し,存在感を見せつけるために,当時の被告     学会の首脳の誰も発想すらしなかった宮本邸の盗聴行為を,対共産党の情     報収集と称して,後輩の学生を使って,被告学会に独断で実行した。」と     の事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性    (ア)上記本件記載@が摘示する事実は,一般の読者をして,原告が,犯罪      行為に該当し得る盗聴行為を,独断で実行したとの印象を抱かせるもの      であり,それ自体は,原告の社会的評価を低下させるものということが      できる。    (イ)しかしながら,前記1(2)で認定したとおり,原告は,盗聴事件訴訟に      おいて,原告が電話盗聴を計画し,廣野及び竹岡に指示して宮本邸の電      話線に盗聴器を設置させ,盗聴したことを争っておらず,そのことは,      同訴訟の第1審判決(甲22)及び控訴審判決(甲23)でも明らかに      されている。          また,前記1(2)で認定したとおり,原告は,昭和55年以降,内藤や      「赤旗」の記者に宮本邸盗聴事件に関する情報をリークし,これを基に      した記事が週刊誌等に掲載され,さらに,原告自身,証拠上明らかなだ      けで,本件書籍が発行された平成14年6月1日までに,宮本邸盗聴事      件に関し,週刊誌等に記事を約20回寄稿し,3冊の書籍を発行し,機      関紙に19回の連載記事を寄稿するなどし,その中で,宮本邸盗聴事件      の総指揮者が,原告であったことを自認していたものである。       そうすると,原告が宮本邸盗聴事件を総指揮して実行させた事実は,      本件書籍が発行された当時,既に公然化し,上記事実に係る原告の社会      的評価は既に低下しており,かつ,原告は,同事実に係る自己の社会的      評価に関する法的利益を,自ら放棄していたものというべきである。       (略)      原告が宮本邸盗聴事件を総指揮したものである以上,被告学会の幹      部が同計画を事前に承認していたか否かによって,宮本邸盗聴事件に関      する原告の社会的評価が低下する程度に,格別の差があるということは      できない。       したがって,本件記載@によって,改めて原告の社会的評価が低下し      たということはできない。    (ウ)よって,本件記載@は,原告の社会的評価を低下させるものというこ      とはできない。   (3)本件記載A(クル−ザー遊覧に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載Aは,「墓園事業による金儲けを計画した原告は,葉山の墓園     用地視察を兼ねて,遊び友達のクルーザーに,体調を著しく悪くしていた     日達を,銀行関係者と乗船させた。日達は,強風でクルーザーが揺れたた     め,体調を悪くし,急遽入院した。その後1か月も経たないうちに,日達     は死亡した。原告の阿漕な金儲けが,日達の寿命を縮めた。」との事実を     摘示するものである。    イ 名誉毀損性      上記本件記載Aが摘示する事実は,一般の読者をして,原告が,金儲け     のために,体調を著しく悪くしていた日達をクルーザーに乗船させ,その     結果,日達の体調が悪化し,日達の寿命が縮まったとの印象を抱かせるも     のであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。  (4)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載B,Cは,一体となって,「原告は,一晩で100万円単位が     動く麻雀賭博を,月に二十数回行い,正信会から得た支援金等を,賭け麻     雀の賭け金に費消し,昭和61年3月,警視庁築地署に,麻雀賭博の被疑     事実で逮捕された。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性    (ア)上記本件記載B,Cが摘示する事実は,一般の読者をして,原告が,      高レートの賭け麻雀に明け暮れ,支援金等を賭け麻雀の賭け金に費消      し,麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたとの印象を抱かせるものであるか      ら,原告の社会的評価を低下させるものである。    (イ)原告の主張について        原告は,本件記載B,Cが摘示する事実は,一般の読者をして,原告      が賭博罪で処罰されたとの印象を抱かせるものである旨主張する。       しかしながら,本件記載B,Cは,単に原告が逮捕された事実を摘示      するにとどまり,その後原告が賭博罪で起訴された事実や,有罪判決を      受けたとの事実を摘示してはいないから,上記本件記載B,Cが摘示す      る事実をもって,一般の読者をして,原告が賭博罪で処罰されたとの印      象を抱かせるとまでいうことはできない。       したがって,原告の上記主張を採用することはできない。  (5)本件記載DないしF(不倫及び麻雀賭博に関する記載)について    ア 摘示事実等             (ア)本件記載Dは,以下の事実の摘示等をするものである。      a 「原告は,不倫関係にあったWから,言葉巧みに大金を騙し取っ       た。」との事実を摘示するものである。      b 「原告は,Wと不倫関係にあったと同時期に,同志である浜中の妻       とも不倫関係にあった。」との事実を摘示し,これを前提とした,「鬼       畜も同然の所業である。」との意見ないし論評を表明するものであ       る。      c 「原告は,Wが,原告と浜中の妻との不倫関係に嫉妬していること       を利用し,Wに対し,「1000万円を貸さなかったら後釜を探す。」       と述べて,金を無心した。」との事実を摘示し,これを前提とした,       「原告は,女心を手玉に取り,金をせしめ取る,卑しいペテン師であ       る。」との意見ないし論評を表明するものである。    (イ)本件記載Eは,以下の事実の摘示等をするものである。      a 「原告は,浜中の妻と不倫関係を続け,その結果,浜中夫婦は離婚       した。「俺が友人の女房を寝取るような泥棒猫みたいなことをすると       思うか。」と述べていた原告は,平成8年,浜中の妻と再婚した。」と       の事実を摘示し,これを前提とした,「原告は,友達の妻を寝取る呆       れた泥棒猫である。」との意見ないし論評を表明するものである。      b 「原告は,20年間,被告学会と戦う格好をする裏で,裁判費用及       び闘争資金として正信会から得た支援金や女性から騙し取った金で賭       け麻雀をし続け,親友の妻を寝取った。」との事実を摘示し,これを       前提とした,「原告は,正信会を食い尽くす寄生虫で,友人及び同志       の信頼を裏切り,ますます表を歩けない裏の「どぶネズミ」の闇生活       者に堕した。」との意見ないし論評を表明するものである。    (ウ)本件記載Fは,「原告は,Wから強引にせしめ取った1000万円      を,賭け麻雀の清算代に費消した。」との事実及び「原告は,被告学会      と戦う格好をしながら,裁判費用及び闘争資金として正信会やWから得      た支援金を,麻雀の賭け金に使っていた。」との事実を摘示し,これを      前提とした,「原告は,人間失格の最低の卑劣野郎である。」との意見な      いし論評を表明するものである。    イ 名誉毀損性    (ア)上記本件記載Dが摘示する事実は,見出しと相まって,一般の読者を      して,原告が女性と不倫をし,不倫相手に,言葉巧みに大金を供与させ      たとの印象を抱かせ(前記ア(ア)a部分),また,同時に,原告が,同志      である浜中の妻とも不倫関係にあったとの印象を抱かせるものである      (同b部分)から,原告の社会的評価を低下させるものである。       また,上記本件記載Dが表明する意見ないし論評は,原告の行為が鬼      畜も同然の所業であり(同b部分),原告が,女心を手玉に取り,金を      せしめ取る,卑しいペテン師であるとするものである(同c部分)か      ら,原告の社会的評価を低下させるものである。    (イ)上記本件記載Eが摘示する事実は,見出しと相まって,一般の読者を      して,原告が,浜中の妻と不倫関係を続けた結果,浜中夫婦は離婚した      との印象を抱かせ(前記ア(イ) a ,c部分),また,原告が,被告学会と      の裁判費用及び闘争資金として正信会から得た支援金や,女性に供与さ      せた金で賭け麻雀をし続け,'親友の妻を寝取ったとの印象を抱かせるも      のである(同b部分)から,原告の社会的評価を低下させるものであ      る。       また,上記本件記載Eが表明する意見ないし論評は,原告が,友達の      妻を寝取る呆れた泥棒猫であるとし(同a部分),また,原告が,正信      会を食い尽くす寄生虫であり,友人及び同士の信頼を裏切り,ますます      表を歩けない裏の「どぶネズミ」の闇生活者に堕したとするものである      (同b部分)から,原告の社会的評価を低下させるものである。    (ウ)上記本件記載Fが摘示する事実は,見出しと相まって,一般の読者を      して,原告が,被告学会との裁判費用及び闘争資金として正信会から得      た支援金や,不倫相手の女性に供与させた1000万円を,麻雀の賭け      金や清算金に費消したとの印象を抱かせるものであるから,原告の社会      的評価を低下させるものである。       また,上記本件記載Fが表明する意見ないし論評は,原告が,人間失      格の最低の卑劣野郎であるとするものであるから,原告の社会的評価を      低下させるものである。  (6)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)につ    いて    ア 摘示事実                       本件記載Gは,「原告が実質的に運営していた「考える会」が発行した     6000万部ないし1億部のビラにつき,1枚の原価は1円50銭で,売     値は3円であるが,原告は,差益を会に報告しておらず,特に,自民党に     売却されたビラについては,自民党総務局長の白川代議士から,販売代金,     及び配布代金として,数億円を現金で受領していたが,そこから原告がい     くら抜こうが,誰も分からない仕組みになっており,原告が,ビラ発行で     金儲けをしていた。」との事実を摘示するものである。    イ 名誉毀損性      上記本件記載Gが摘示する事実は,見出しと相まって,一般の読者をし     て,原告が,「考える会」のビラ発行をめぐり,多額の不正な金員を取得     したとの印象を抱かせるものであるから,原告の社会的評価を低下させる     ものである。  (7)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 摘示事実      本件記載Hは,以下の事実を摘示するものである。    (ア)「宗教を金儲けの手段としか捉えていなかった原告は,昭和47年こ      ろ,被告学会の顧問活動を通じ,静岡県富士宮市近郊に,大石寺所有に      係る19万坪の遊休地があることを知り,同土地上にゴルフ場を建設す      ることを計画し,昭和49年末,同市の有力事業家で市議会議員のH氏      と組み,ダミー会社を設立して,同土地を購入した。その後,原告は,      ゴルフ場開発許可が下りなかったため,同土地を墓園用地にしようと計      画してこれを転売し,5000万円のマージンを取得した。」との事実    (イ)「原告は,被告学会の顧問弁護士という立場を悪用し,H氏に対し,      墓園建設事業への参入を取り計らうと約束して,H氏から,4億円ない      し5億円を手にした。」との事実    イ 名誉毀損性      上記本件記載Hが摘示する事実は,見出しと相まって,一般の読者をし     て,原告が,顧問弁護士としての活動を通じて知った遊休地を利用した金     儲けを計画し,ダミ一会社を設立して同土地を購入したが,計画が頓挫し     たため,最終的に同土地を転売し,5000万円の差益を得たとの印象を     抱かせ(前記ア(ア)部分),また,原告が,顧問先である被告学会の墓園事     業に関し,業者に便宜を供与し,4億円ないし5億円のリベートを得たと     の印象を抱かせるものである(同(イ)部分)から,原告の社会的評価を低下     させるものである。 3 争点(2) (真実性又は相当性の法理に基づく違法性又は責任阻却の成否)につ  いて  (1)真実性又は相当性の抗弁の前提となる法理    事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事    実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示され    た事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,    上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において    上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故    意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23    日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25    号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁)。     一方,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあ    っては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら    公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実    が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に    及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は    違法性を欠くものというべきであり,仮に上記証明がないときにも,行為者    において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれ    ば,その故意又は過失は否定される(最高裁昭和60年(オ)第1274号平成    元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁,前掲最高    裁平成9年9月9日第三小法廷判決)。     以上を前提に,以下,名誉毀損性が否定される本件記載@を除く本件記載    AないしHについて,真実性又は相当性の抗弁を検討する。  (2)本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)に関する真実性又は相当性に    ついて         ア 公共性及び公益目的      前記1(8)で認定した事実によれば,我が国有数の宗教法人である被告学     会と,その元顧問弁護士・幹部である原告との間において,長年にわた     り,相互に相手方に対する批判的言論の応酬が繰り広げられてきたという     ことができる。      そして,本件記載A(クルーザー遊覧に関する記載)が摘示する事実     は,原告と被告学会ないし日蓮正宗との関係という社会的に注目されてき     た諸問題に係るもので,また,上記言論の応酬の,過程においても取り上げ     られてきたものといえることからすれば,公共の利害に関する事実に係     り,公益を図る目的で掲載されたものということができる。    イ 本件記載Aが摘示する事実の重要な部分は[原告が,金儲けのため,     体調を著しく悪くしていた日達をクルーザーに乗船させ,その結果,日達     の体調が悪化し,日達の寿命が縮まったこと」ということができる。    ウ 真実性        (ア)前記1(4)のとおり,(a)原告は,昭和54年6月当時,シーホースが多      額の負債を抱えていた一方,富士桜墓園に絡むリベート等で利益を得て      いたことから,再度,葉山の土地を利用した墓園事業を計画したこと,      (b)原告は,日達を招いたクルーザー遊覧を行い,弘信商事の大谷常務      と,日原の関係者である峯岸を同行させたこと,(c)クルーザー遊覧の直      後に,株式会社イチビル(弘信商事の関係会社)の株式会社東海総業      (シーホースの金融部門)に対する与信枠が1億3000万円から4億      円に増額されたこと,(d)原告は,浜中に対し,日達の本葬の際の原告の      態度が,金儲けのためであったと述べていたことが認められる。       これらの事実を総合すれば,クルーザー遊覧の目的は,原告の金儲け      のためであったことが推認される。    (イ)また,前記1(4)のとおり, (a)日達の死因は,宗門の公式発表によれ      ば,心筋梗塞であるとされ,日野原医師の診断によれば,腹部解離性大      動脈瘤による心不全であるとされたこと,(b)腹部解離性大動脈瘤は,急      激な血圧の変動等を与えるストレス等が,特に脆くなった血管に悪影響      を与え得るものであること,(c)日達は,昭和53年3月ころから体調不      良を訴え,日野原医師の診断によれば,日達の心臓は動脈硬化で相当悪      くなっており,いつ発作が起きてもおかしくない状態で,動脈が破れる      おそれもあり,原告もこれを把握していたこと,(d)クルーザー遊覧の前      に顔色を悪くしていた日達が,クルーザー遊覧により船酔いの症状を示      し,その約1か月後に死亡したことが認められる。       これらの事実を総合すれば,クルーザー遊覧が,体調不良であった日      達の病気の悪化を促進させ,日達の寿命に悪影響を及ぼしたことが推認      できる。    (ウ)以上によれば,本件記載Aが摘示する事実の重要な部分は,真実であ      ると認められる。    (エ)原告の主張について       原告は,日達がクルーザーから下船後間もなく船酔いから回復し,翌日      から,通常どおり法務に従事し,昭和54年7月初旬の定期診察において      も,何ら異常が認められなかった旨主張する。       この点,日達が,一旦は体調を持ち直し,法主の職務を行ったことは被      告らも争うものではないが,昭和53年に日達が上記(イ)のように診断され      ていたことからすれば,昭和54年7月当時,日達の体調に何ら異常が      認められなかったとは考え難い。そして,クルーザー遊覧が日達の寿命      に悪影響を及ぼしたと推認されることは上記(イ)判示のとおりである。       したがって,原告の上記主張を採用することはできない。  (3)本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載)に関する真実性又は相当性につ    いて    ア 公共性及び公益目的      本件記載B,C(麻雀賭博に関する記載)が摘示する事実は,原告と被     告学会,日蓮正宗ないし正信会との関係という社会的に注目されてきた諸     問題に係るもので,また,前記言論の応酬の過程においても取り上げられ     てきたものといえることからすれば,本件記載Aと同様に,公共の利害に     関する事実に係り,公益を図る目的で掲載されたものということができ     る。    イ 本件記載B,Cが摘示する事実の重要な部分は,「原告が,高レートの     賭け麻雀に明け暮れ,支援金等を賭け麻雀の賭け金に費消し,麻雀賭博の     被疑事実で逮捕されたこと」ということができる。     ウ 真実性    (ア)原告が,昭和61年3月29日,麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたこ      とは,当事者間に争いがない。    (イ)また,前記1(6)のとおり,(a)原告は,昭和56年7月6日に保釈され      た後,定職に就かず,同年暮れころから,正信会や和久田からカンパを      受けて生活費や裁判費用を賄っていたこと, (b)原告は,賭け麻雀に明け      暮れていたが,原告が常連客として麻雀をしていた店は,一般の学生や      会社員向けの店ではなく,マンションやビルの一室で営業する「秘密麻      雀クラブ」といわれる類の店で,そこで行われていた賭け麻雀のレート      も,1000点300円から1000円などと高レートで,警察の摘発      対象となるものであったことが認められる。       これらの事実によれば,原告が,高レートの賭け麻雀に明け暮れ,支      援金等を賭け麻雀の賭け金に費消したもめと認められる。    (ウ)以上によれば,本件記載B,Cが摘示する事実の重要な部分は,真実      と認められる。    (エ)原告の主張について       原告は,支援金を麻雀の賭け金に費消したことを否認し,その理由と      して,原告は昭和56年ころからは麻雀を止め,麻雀を再開したのは,      (正信会からの支援が途絶えた)昭和58年以降である旨主張する。       しかしながら,原告は,その著書「平成獄中見聞録」(乙210の1      ・2)において,「雀ゴロ生活をし,生活費とサウナ代が稼げればよ      し,負けてスッカラカンになったら,バスの始発時間までコマ劇場前の      花壇で寝た。」,「心優しい友人達が見るに見かねてカンパをしてくれる      ようになり」などと著述しており,正信会からのカンパが始まった昭和      56年暮れころより前から麻雀をしていたことを認めている。       また,浜中は,昭和57年春ころに,原告に麻雀店に連れられて行っ      た様子を詳細に供述しており(甲110,乙31の4の2,181,証      人浜中),その信用性を疑う事情もない。       したがって,原告の上記主張を採用することはできない。  (4)本件記載DないしF(不倫及び麻雀賭博に関する記載)に関する真実性又    は相当性について    ア 公共性及び公益目的      本件記載DないしFが摘示する事実及び表明する意見ないし論評は,原     告の私生活上の行状に関するものではあるが,我が国有数の宗教法人であ     る被告学会の元顧問弁護士で,被告学会に対し,長年にわたり批判的言論     を繰り返してきたという原告の地位及び後記キ(カ)に判示した事情に照らせ     ば,なお,公共の利害に関する事実に係り,公益を図る目的で掲載された     ものということができる。    イ 本件記載DないしFが摘示する事実及び表明する意見ないし論評が前提     としている事実の重要な部分は,以下のとおりということができる。    (ア)「原告が,和久田と不倫をし,和久田をして,言葉巧みに大金を供与      させたこと」    (イ)「原告が,和久田と不倫関係にあると同時に,同志で親友でもある浜      中の妻(桂子を指すことに争いはない。)とも不倫関係にあり,原告      が,浜中の妻と不倫を続けた結果,浜中夫婦は離婚し,原告が,平成8      年,浜中の妻と再婚したこと」    (ウ)「原告が,被告学会との裁判費用及び闘争資金として正信会から得た      支援金や,和久田に供与させた金員を,麻雀の賭け金や清算金に費消し      たこと」    ウ 前記イ(ア)部分の真実性    (ア)原告が,昭和58年4月ころから平成3年初めころまで,当時夫のい      た和久田と不倫関係にあったことは,当事者間に争いがない。    (イ)そして,前記1(5)で認定したとおり,原告は,和久田に対し,「お金      は必ず返すからね。そのぐらいはいずれすぐ作れるよ。」,「老後は2人      で楽しく暮らそうね。」,「今度まとまった金が入る。」,「2倍,3倍にし      て返す。」などと述べながら,和久田に金を無心し,和久田が原告との      関係を絶とうとすると,「これまで2人で丹精こめて育てた木にやっと      花が咲こうとしているのに,自分の手で切り倒そうとするのか。」,「僕      を信じることだ。「走れメロス」を読め。」などと述べて関係の継続を求      め,さらに金を無心するなどして,和久田から,昭和58年後半から昭      和61年初めころまで,毎月,20万円から70万円,少なくとも合計      2000万円のカンパを受けていたほか,昭和60年3月に保釈保証金      の積み増しの準備として500万円を借りるなどしたものである。    (ウ)以上によれば,前記イ(ア)部分は,真実と認められる。    (エ)原告の主張について      a 原告は,和久田が原告に対し,「夫との関係は既に破綻している。」       旨述べて関係を求めたものであり,原告に不倫との認識はなかった旨       主張する。                        〉        しかしながら,原告と和久田との関係が始まった当時から,和久田       と夫との婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる証拠はない。        そして,和久田の夫が原告に対して和久田との不倫を理由に損害賠       償を請求した不貞訴訟の判決においても,原告の不法行為責任が肯定       されたことは,前記1(5)で認定したとおりである。      b 原告は,和久田をして,言葉巧みに大金を供与させたことを否認       し,その理由として,大分訴訟における和久田の上申書等が信用性に       欠け,そのことは大分訴訟の控訴審判決(甲42)においても指摘さ       れている旨主張する。        しかしながら,上記判決は,借主が原告であることに関する和久田       の陳述には,客観的証拠による裏付がない旨指摘するにとどまり,和       久田が原告にカンパをした経緯及び状況に係る陳述に関する信用性に       ついては言及していない。そして,上記状況に関する陳述は,事実と       して具体的かつ詳細に述べられており,信用性を疑う事情はない。      c したがって,原告の上記各主張を採用することはできない。    エ 前記イ(イ)部分の真実性    ヽ    (ア)前記1(5)のとおり, (a)原告の手帳に,昭和58年暮れころから,「ケ      イ子・熊本」等の記載があったこと, (b)昭和59年ころから,桂子が不      自然な言い訳で伝法寺を留守にすることか多くなったこと, (c)昭和59      年暮れころ,和久田が,原告に桂子との関係を追及した後,原告と桂子      の関係を浜中に話す旨述べると,原告は,「友達の奥さんとできること      は,世間でもよくあることだ。」などと述べたこと,(d)昭和62年春こ      ろ,桂子の免許証入れの中に,原告と桂子の部分だけを切り抜いた写真      が入っていたこと,(e)桂子が,昭和61年1月から昭和62年11月ま      での間に,浜中に無断で,伝法寺の会計から原告に送金していたこと,      (f)浜中は,昭和63年7月ころ,桂子から離婚を求められ,同年8月,      協議離婚したこと,(g)原告は,平成5年4月27日の仮釈放後,遅くと      も同年9月ころには桂子宅に頻繁に出入りするようになり,平成8年2      月,桂子と婚姻したことが認められる。       これらの事実を総合すれば,原告は遅くとも昭和59年暮れころま      でには,当時浜中の妻であった桂子とも不倫関係となり,その後も桂子      との関係を継続したものと推認することができる。    (イ)そして,前記1(5)認定のとおり,その後,浜中は,昭和63年7月こ      ろ,桂子から離婚を求められ,同年8月,協議離婚し,原告は,平成8      年2月,桂子と婚姻したものである。    (ウ)以上によれば,前記イ(イ)部分は,真実と認められる。    (エ)原告の主張について       原告は,桂子と関係を持ったのは,仮釈放後,すなわち桂子が浜中と      離婚した後である旨主張する。                        しかしながら,前記1(5)エで認定したとおり,原告は,昭和59年暮      れころ,和久田に対して,桂子と不倫関係にあることを自ら認めていた      ものである。原告は,上記事実を否認するが,その否認理由は過去の訴      訟を含めて幾重にも変遷し,証拠(乙171,214,215,22      7)に照らし,到底信用することができない。       したがって,原告の上記主張を採用することはできない。    オ 前記イ(ウ)部分の真実性    (ア)前記1(5),(6)のとおり,(a)原告は,昭和56年7月6日に保釈された      後,定職に就かず,同年暮れころから,恐喝事件の裁判費用や生活費      を,正信会からのカンパに頼っていたが,昭和58年5月ころ以降は,      正信会と断絶し,反宗門・被告学会の同志の関係にあった浜中ら,個人      的に親しい僧侶らからのカンパに頼らざるを得なくなっていたこと, (b)      原告は,不倫相手である和久田から,昭和58年後半から昭和61年初      めころまで,毎月,20万円から70万円,少なくとも合計2000万      円のカンパを受けていたほか,昭和60年3月に保釈保証金の積み増し      の準備として500万円を借りたこと, (c)原告は,そのころ,賭け麻雀      を行い,その賭け金に費消していたことが認められる。       これらの事実を総合すれば,前記イ(ウ)部分,は真実と認められる。    カ 以上によれば,本件記載DないしFが摘示する事実及び表明する意見な     いし論評の前提としている事実の重要な部分は,真実と認められる。    キ 本件記載DないしFが表明する意見ないし論評が,その域を逸脱するも     のであるか否か    (ア)前記のとおり,本件記載DないしFが表明する意見ないし論評が前提      とする事実の重要な部分は,真実と認められるところ,以下,上記意見      ないし論評が,その域を逸脱するものであるか否かについて検討する。       ある意見ないし論評が,その域を逸脱するものであるか否かについて      は,表現自体の相当性のほか,当該意見ないし論評の必要性の有無を総      合して判断すべきである。そして,上記必要性の有無については,相手      方による過去の言動等,当該意見ないし論評が表明されるに至った経緯      を考慮して判断すべきである。        ’    (イ)本件記載DないしFが表明する意見ないし論評には,原告について,      「鬼畜も同然の所行」,「卑しいペテン師」(以上,本件記載D),「呆れ      た“泥棒猫”」,「正信会を食い尽くす寄生虫」,「裏の“どぶネズミ”の      闇生活者」(以上,本件記載E),「人間失格の最低の卑劣野郎」(本件記      載F)と表するなど,その見出しと相まって,原告に対することさらに      下品で侮辱的な言辞によるものを含むものであり,表現自体は相当なも      のとはいい難い。    (ウ)他方,前記1(8)で認定した事実によれば,原告と被告学会との間にお      いては,長年にわたり,相互に相手方に対する批判的言論の応酬が繰り      広げられてきたものといえるところ,上記言論の応酬は,原告が,昭和      52年7月ころから,マスコミに対し,被告学会関連の情報を提供する      ようになったことに端を発したものということができる。    (エ)また,前記1(8)アで認定したとおり,原告は(a)被告学会が政教分離      に違反し,日本の支配を狙っているとするもの,(b)被告学会が日蓮正宗      を支配するために画策してきたとするもの, (c)被告学会が組織的に様々      な反社会的事件を起こしてきたとするもの,(d)被告学会がオウム真理教      と同様の犯罪集団であるかの印象を与えようとするもの,(e)被告池田が      レイプ犯であるとするものなど,極めて多岐にわたる内容において,被      告学会及び被告池田らに対する批判を繰り返してきた。       そして,前記1(7)エで認定したとおり,原告は,平成7年10月ころ      から平成8年10月ころまでにかけて日本全国に配布された,被告学      会,被告池田及び新進党等を誹謗中傷する内容の「考える会」のビラ原      稿を作成したものであるが,その内容は,各号の見出し(第1号ビラ      「オウムより恐ろしい!!新進党の皮をかぶった創価学会」,第2号ビラ      「―東村山市―朝木明代市議怪死の経緯と創価学会の関わり!?」,第3      号ビラ「オウムよりこわい!新進党を支配する創価学会の不気味な野      望」,第4号ビラ「オウムより恐ろしい!新進党=創価学会による政教      一致の独裁政権構想」,第5号ビラ「オウム麻原被告も顔負け なんと!!      強姦で訴えられた新進党陰の支配者・池田大作氏」,第6号ビラ「オウ      ムより狡猾新進党=創価学会の目くらましにだまされるな」)にみられ      るように,前記(イ)の本件記載DないしFの表現に勝るとも劣らず,被告      学会及び被告池田らに対することさらに下品で侮辱的な言辞によるもの      を含むものである。    (オ)さらに,前記1(8)ア(エ)で認定したとおり,原告は,本件記載Dないし      Fと関連する事実関係について,次のような著述をしていた。       すなわち,原告は,和久田が大分訴訟を提起した後,平成9年7月1      6日付け「慧妙」(乙179)において,「昨年の総選挙終了直後から,      創価学会の,私に対する個人攻撃がエスカレー卜してきました。」,「突      然,今回の訴訟(中略)という手段に出られ。創価学会サイドとの連携      した動きが始まったのです。」などと著述し,また,大分訴訟の控訴審      で和久田の請求が棄却された後,平成11年12月16日付け「慧妙」      (乙180)において,「創価学会の手先となった浜中和道氏は,私を      誣告(ぶこく)し,さらに中傷のために信者の女性と共謀して訴訟を起      こしたのです。しかし,告訴ならびに訴訟での敗訴で,その企ては失敗      し,“邪悪な陰謀”の全貌が明らかになりました。」などと著述していた      ものである。       しかしながら,その内容は,少なくとも本件の証拠上,真実とは認め      難いものがあり,このことは,原告によるその他の著述についてもいえ      ることである。    (カ)かかる原告の被告学会に対する批判的言論の経緯を考慮すれば,被告      らが,原告が被告学会の謀略であると喧伝する事実について真相を究明      することが,原告の喧伝に対抗するために必要であり,また,原告の行      動特性等を明らかにすることが,原告の実態や,内部告発者としての不      適格性を明らかにするために有効かつ適切であるとの観点から,本件      記載DないしFを記述した旨主張することは,首肯し得るものであ      り,意見ないし論評の必要性を肯定することができる。    (キ)以上を総合すれば,本件記載DないしFが表明する意見ないし論評      は,その表現自体に行き過ぎた,穏当を欠くものを含むとの評価を免れ      ないが,その前提とする事実の重要な部分は真実である上,原告による      前記のような過去の言動等,本件記載DないしFに至った経緯に照ら      し,意見ないし論評の必要性が肯定されるから,当該意見ないし論評と      しての域を逸脱するものとはいえない。  (5)本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)に関    する真実性又は相当性について           ア 公共性及び公益目的      本件記載G(「考える会」のビラ発行による闇金疑惑に関する記載)が     摘示する事実は,原告と被告学会,日蓮正宗ないし自民党との関係という     社会的に注目されてきた諸問題に係るもので,また,前記言論の応酬の過     程においても取り上げられてきたものといえることからすれば,本件記載     Aと同様に,公共の利害に関する事実に係り,公益を図る目的で掲載され     たものということができる。    イ 本件記載Gが摘示する事実の重要な部分は,「原告が,「考える会」のビ     ラ発行をめぐり,多額の不正な金員を取得したこと」ということができ     る。    ウ 真実性    (ア)前記1(7)のとおり,以下の事実が認められる。      a 「考える会」は,対外的には内藤が代表世話人とされていたが,内       藤は,被告学会批判活動に賛同して代表名義を貸していただけで,実       質的な運営者は原告であった。      b 「考える会」のビラは,日本全国に約5500万部ないし6000       万部配布され,妙観講は,うち400万部を配布した。また,少なく       ともビラの半数は自民党が購入し,自民党は,所属の国会議員,都道       府県議会議員,政令指定都市議会議員及び友好団体に対してビラの購       入を啓蒙し,平成7年内だけで,約1000万部を購入した。      c 「考える会」のビラは,1枚2円20銭ないし30銭で作成され,       一般的に,売値は1枚2円50銭,後に1枚3円とされ,代金は振込       送金又は現金支払の方法で支払われ,現金支払の場合,会計担当の佐       貫が金額を記載して作成した領収証を相手方に交付していた。また,       ホクシンカンテックに対する印刷代は,「考える会」名義で振込送金       されていた。                                  d 一方,自民党との関係では,売値は1枚10円とされ,代金はすべ       て現金で支払われ,毎回,原告が,1人で又は佐貫若しくは大越社長       と共に,自民党本部において,少なくとも6回以上,自民党総務局長       の白川代議士から現金で受領していたが(原告は,1度に3000万       円を受領したことがあった。),その際,領収証は作成されなかった。      e 佐貫が作成した,「考える会」の売上諸経費明細書(甲116)に       よれば,値引前の売上は1億4873万4502円,同仕入は1億3       945万8204円,値引後の総収益は963万9067円,経費は       960万4468円で,残金は3万4599円とされている。      f 内藤は,平成9年2月22日,浜中から電話を受けた際,原告が,       自民党からのビラ代金から何億円かをせしめて,その分配をめぐり何       人かと喧嘩していること,内藤が,白川代議士に対し,原告に渡した       金額を追及したところ,「表にできないのが裏金だから。」と言われ,       「もう勝手にしろ,バカヤロー。」と述べたこと等を語っていた。    (イ)以上の認定事実を前提に検討する。      a 「考える会」のビラは,約5500万部ないし6000万部配布さ       れ,うち,少なくとも半数を自民党が購入し,その売値は1枚10円       であったことからすれば,「考える会」は,自民党からだけで,少な       くとも2億7500万円(10 円 ×5500万部×1/2)の売上を       得ていたことになる。このことは,原告が,自民党から少なくとも6       回以上現金を受領し,そのうち,1度に3000万円を受領したこと       があったことに照らし,計算上矛盾するものではない。        他方,値引前の売上を1億4873万4502円とする売上諸経費       明細書(甲116)は,一般的なビラの売値(1枚2円50銭ないし       3円)を基に作成されたものである。        したがって,自民党からの売上につき,少なくとも1億9250万       円の簿外売上が生じていることになる(2億7500万円−(3円×       2750万部))。                 b そして,(a)「考える会」の実質的な運営者は原告であったこと,(b)       自民党からのビラ代金は,すべて原告が現金で受領していること,(c)       内藤によれば,原告が,ビラ代金の分配をめぐり何人かと喧嘩してい       たことからすれば,原告が,上記簿外売上を利得したと推認すること       ができる。    (ウ)以上によれば,本件記載Gが摘示する事実の重要な部分は,真実と認      められる。                (エ)原告の主張について      a 原告は,「考える会」は内藤が発案し,内藤が名実共に運営者であ       った旨主張する。        しかしながら,前記1(7)ケで認定したとおり,内藤は, (a)「考える       会」には代表名義を貸しただけであること, (b)内藤が,原告に対し,       ビラに関して,「俺の名前でこんな文書,俺いつ出していいっちゅっ       た。」と叱りつけたことがあったことを述べている。また,前記1(7)       エ,オで認定したとおり,原告は,調査及び資料収集を佐貫とした       上,ビラ原稿を執筆し,印刷会社をホクシンカンテックに選定し,主       なビラの売却先である自民党,「被害者の会」及び妙観講に対してビ       ラの配布を依頼し,自民党にビラ代金を受領しに行っており,「考え       る会」において主導的な役割を果たしていた。        そうすると,「考える会」の実質的運営者は,原告であったことが       認められる。      b 原告は,ビラの売値は,自民党についても1枚2円50銭ないし3       円で,「考える会」の収支は売上諸経費明細書(甲116)のとおり       であり,原告に金員が渡ることはあり得ない旨主張する。        しかしながら,自民党との関係では,ビラの売値が1枚10円とさ       れていたこと,売上諸経費明細書以外の簿外売上が生じていたこと       は,前記(イ)aに判示したとおりである。        また,原告は,ビラの売値は1枚2円50銭ないし3円で,自民党       には700万部売却した旨主張しながら,本人尋問においては,自民       党から総額1億円を受領した旨,自らの主張に係る計算と矛盾する供       述をし,売値についても,1枚3円ないし3円50銭であった旨供述       して上記主張を変遷させ,実際の販売部数や受領金額といった重要な       事実について,具体的数字を明らかにせず,不明瞭な供述に終始し       た。かかる供述態様は,原告が,「考える会」のビラ発行をめぐり,       多額の不正な金員を取得したことを,より強く窺わせる事情に当たる       というべきである。      c したがって,原告の上記各主張を採用することはできない。  (6)本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載)について    ア 公共性及び公益目的      本件記載H(墓園事業に絡む裏金取得に関する記載が摘示する事実     は,原告と被告学会ないし日蓮正宗との関係という社会的に注目されてき     た諸問題に係るもので,また,前記言論の応酬の過程においても取り上げ     られてきたものといえることからすれば,本件記載Aと同様に,公共の利     害に関する事実に係り,公益を図る目的で掲載されたものということがで     きる。    イ 本件記載Hが摘示する事実の重要な部分は,以下のとおりということが     できる。      (ア)「原告が,被告学会の顧問活動を通じて知った遊休地(ボサシタの土      地を指すことに争いはない。)を利用した金儲けを計画し,ダミー会社      (山下商事を指すことに争いはない。)を設立して同土地を購入し,転      売により,5000万円の差益を得たこと」    (イ)「原告が,顧問先である被告学会の墓園事業(富士桜墓園を指すこと      に争いはない。)に係る業者に便宜を供与し,4億円ないし5億円のリ      ベートを得たこと」    ウ 前記イ(ア)部分の真実性              (ア)前記1(3)アないしウのとおり,以下の事実が認められる。      a 原告は,被告学会の顧問活動を通じ,遊休地であったボサシクの土       地を知り,ゴルフ場の経営計画を立て,原告が実質的経営者を務める       山下商事を設立し,同社が,昭和50年6月16日,大石寺から,ボ       サシタの土地を,1億6000万円で購入した。       b ところが,同年8月18日,静岡県知事が,富士宮市を含む県東部       地区でのゴルフ場開発に関する審査を数年間行わないことを発表し,       これにより,ボサシタの土地のゴルフ場開発は凍結された。      c そこで,原告は,ボサシタの土地を利用した墓園事業を計画すると       ともに,山下商事が,同年12月12日,ボサシタの土地を日原観光       に2億1000万円で売却した。    (イ)上記認定事実によれば,原告が実質的経営者を務める山下商事は,ボ      サシタの土地につき, 5000万円の売買差益を取得したことになる。      したがって,前記イ(ア)部分は,真実と認められる。    (ウ)原告の主張について       原告は,上記売買差益のうち2000万円は大石寺に寄付され,うち      2500万円は設計者に,うち500万円は平井工業に支払われた旨主      張する。                 しかしながら,上記主張を認めるに足る客観的証拠は何ら存在しない      ばかりか,原告は,恐喝事件裁判当時,上記5000万円の売買差益は      日原が山下商事のために立替えていた5000万円と相殺勘定した旨,      上記主張と矛盾する主張をしていたものであって(乙119),原告の      上記主張は採用するに値しないというべきである。    エ 前記イ(イ)部分の真実性    (ア)前記1(3)ウないしオのとおり,以下の事実が認められる。          a 富士桜墓園計画は,原告を中心として立案推進され,昭和50年1       1月15日,富士宮市への開発事前協議申請手続が執られた。      b 一方,原告は,休眠会社であるシーホースを復活させ,同社による       ユアーズグループの管理を構想し,昭和51年11月上旬ころ,日原       に対し,ユアーズグループヘの資金援助を依頼し,日原造園から,同       月15日から昭和52年4月2日までの間,13回にわたり,合計1       億5450万円の融資を受けた,        また,原告は,同月上旬ころ,日原に対し,シーホースヘの資金援       助を依頼し,日原から,同月11日から昭和55年2月21日までの       間,現金貸付,債務保証及び融通手形振出等の方法により,38回に       わたり,合計12億7300万円の資金援助を受けた。        日原は,総工費が200億円近くに達すると予想された墓園工事       を,日原造園が有利な条件で請け負いたいと考え,同計画の中心的人       物であると思われた原告と一層親密な関係を持つことで,原告が好意       ある取計いをしてくれることを期待し,上記資金援助等をした。      c 日原造園は,原告の取計いにより,墓園本体工事の下請(代金約4       6億8800万円),造園工事(代金約68億円)及び墓所工事(代       金約58億7900万円)を請け負うこととなり,また,被告学会と       日原の間で,植木売買及び管理契約(代金7億9600万円)も締結       された。                   d その後も,前記bのとおり,日原から,シーホースに対する資金援       助が続けられたものであるが,上記12億7300万円の資金援助の       中には,富士桜墓園建設工事受注のリベートである5億4000万円       が含まれており,原告は,そのうち4億5000万円を受領した。    (イ)上記認定事実によれば,前記イ(イ)部分は,真実と認められる。    (ウ)原告の主張について       原告は,日原によるシーホーに対する12億7300万円の資金援      助以外に,日原から,富士桜墓園建設工事受注のリベートとして,4億      5000万円を受領したことはない旨主張する。       しかしながら,証拠(乙23ないし25,112の1ないし3,11      3)によれば,「山崎先生に対する手数料明細」と題する書面(乙11      2の1)に記載された4億5000万円がリベートであり,これが上記      12億7300万円の資金援助の中に含まれていたことは明らかであ      る。       したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 4 名誉毀損に関する小括   (1)本件記載@は,原告の名誉を毀損するものとはいえない。  (2)本件記載AないしC,G,Hは,原告の名誉を毀損するものといえるが,    上記各記載が摘示する事実は,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その    目的が専ら公益を図ることにあり,その重要な部分は真実と認められるか    ら,その違法性が阻却される。   (3)本件記載DないしFは,原告の名誉を毀損するものといえるが,上記各記    載が摘示する事実及び表明する意見ないし論評は,公共の利害に関する事実    に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあり,その前提としている    事実の重要な部分は真実と認められ,また,意見ないし論評部分は,その域    を逸脱したものでないから,その違法性が阻却される。  (4)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,名誉毀損に関す    る原告の請求は理由がない。 5 争点(4) (本件記載C,Eが原告のプライバシーを侵害するか)について  (1)原告は,原告の15年以上前の逮捕歴を公表する本件記載Cと,原告と桂    子の婚姻及び婚姻前の関係という原告の私生活を公表する本件記載Eは,原    告のプライバシーを侵害する旨主張する。     いわゆるプライバシーの権利は,個人の人格的な利益として権利性が認め    られるところ,ある事実ないし情報がプライバシーに属する事実ないし情報    として保護に値するものであるか否かは,一般人の感受性を基準に判断した    場合に,当該私人の立場に立ったならば公開を欲しないであろう事柄であっ    て,一般人に知られていないものが基準となるというべきである。      そして,プライバシーに属する事実ないし情報の内容及び公表の態様を考    慮した上,当該事実ないし情報を公表されない法的利益とこれを公表する理    由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合にいプライバシー侵害とし    て,不法行為が成立するというべきである(最高裁平成元年(オ)第1649号    同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁,最高裁平成12    年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号22    9頁参照)。  (2)本件記載Cについて    ア プライバシー該当性                         本件記載Cは,原告が,昭和61年3月,警視庁築地署に,麻雀賭博の     被疑事実で逮捕されたとの事実を公表するものである。       一般的には,過去の逮捕歴は,一般人の感受性を基準に判断した場合,     公開を欲しない事柄に当たるということができる。しかしながら,前記1     (6)イで認定したとおり,原告が麻雀による賭博の被疑事実で逮捕された事     実は,当時の新聞や週刊誌で報道されており,原告も,同年4月発行の複     数の週刊誌において,麻雀賭博をして逮捕されたこと自体は自認していた     ものである。また,前記1(8)ア(エ)で認定したとおり,原告は,本件書籍発     行の約1年前に,平成13年4月30日発行の著書「「月刊ペン事件」埋     もれていた真実」(甲105)において,「ついに,何でもないマージャン     遊びを,公明党議員と会員の作り話で,“賭博罪”にデッチ上げられ,現     行犯でもないのに,ニカ月近くたって逮捕状が出されて逮捕されてしまっ     た。」などと著述し,麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたことを自ら公表し     たものである。      そうすると,原告が麻雀賭博の被疑事実で逮捕されたとの事実は,原告     の立場に立ったならば,公開を欲しないであろう事柄に当たるとはいえな     いし,本件書籍が発行された平成14年6月1日当時において,一般人に     知られていない事実に当たるともいえない。      したがって,上記事実は,原告のプライバシーに属するということはで     きない。    イ よって,本件記載Cにおいて上記事実を公表することは,プライバシー     侵害として,不法行為が成立するものではない。  (3)本件記載E(不倫に関する記載)について    ア プライバシー該当性      本件記載Eは,原告が浜中の妻である桂子と不倫関係を続けた結果,浜     中夫妻が離婚し,その後,原告は,平成8年,桂子と再婚したとの事実を     公表するものである。      そして,一般人の感受性を基準に判断した場合,婚姻前の妻と不倫関係     にあったという事実は,公開を欲しない事柄に当たるということができ     る。そして,上記事実は,本件記載Eが掲載された平成14年3月6日当     時において,一般人に知られていない事実に当たるということができる。      したがって,上記事実は,原告のプライバシーに属する。    イ 不法行為の成否    (ア)本件記載Eは,婚姻前の妻と不倫関係にあったという原告のプライバ      シーに属する事実を,被告学会が発行する機関紙「創価新報」に公表し      たものである。    (イ)前記3(4)キ(ウ)に判示したとおり,原告と被告学会との間において長年      にわたり繰り広げられてきた言論の応酬は,その発端が,原告にあると      いうことができる。また,前記3(4)キ(オ)に判示したとおり,原告の被告      学会に対する批判的言論の中には,少なくとも本件の証拠上,真実とは      認め難いものがある。       ところで,原告が桂子と婚姻した平成8年2月以降本件連載(1)が開始      される平成14年1月までに,原告を当事者とする大分訴訟(前記1(5)      カ(ア)参照)が係属しており,同訴訟資料中には,原告と桂子が不倫関係      にあったことを内容とする関係者の陳述書(乙56ないし58)が提出      されている。これに対し,前記1(8)アで認定したとおり,原告も,平成      9年7月16日付け「慧妙」(乙179)に,大分訴訟自体が被告学会      と連係した,原告に対する個人攻撃キャンペーンである旨の記事を投稿      し,また,平成11年12月16日付け「慧妙」(乙180)には「浜      中夫妻が昭和62(ママ)年に離婚し」,「平成8年4(ママ)月,原告が浜中住職と別れ      た妻桂子と再婚した」という外形的事実を認めつつ,浜中の「創価学会      の手先となった浜中和道氏は,私を誣告し,さらに中傷のために信者の      女性と共謀して訴訟を起こした」などと反論する記事を投稿している。       そうすると,被告学会ないし執筆者である亡野崎において,これ以上      原告に欺かれないよう社会に警鐘を鳴らすために,新たに入手した資料      に基づいて,原告の実態や,その根底にある行動特性を明らかにする必      要があるとの被告らの主張にも,相当の理由があるということができ      る。    (ウ)一方,前記1(5)で認定したとおり,原告は,不貞訴訟において,和久      田と不倫関係にあった当時に,「20代のモデルの女性」と「短大生」      とも男女関係にあった旨供述するなど(乙67), 同時期に複数の女性      と関係を有していたことを公表している。       上記事実は,女性に対するモラルという点で本件記載Eに係る事実と      共通している。    (エ)上記各事情を総合考慮すると,本件記載Eに係る事実を公表されない      ことに関する原告の法的利益が,上記事実を公表する理由に優越すると      いうことはできない。       よって,本件記載Eに係る事実を公表することは,プライバシー侵害      として,不法行為が成立するものではない。  (4)小括         以上のとおり,本件記載C,Eは,原告のプライバシーを侵害するものと    はいえない。    第5 結論    以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の本訴請求は   理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法6   1条を適用して,主文のとおり判決する    東京地方裁判所民事第32部           裁判長裁判官 高  部  眞規子              裁判官 安  田  大二郎              裁判官 吉  村  弘 樹